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記念閑話:if成人式後の飲み会-前編-

累計PV1,000万到達記念の閑話になります。

ついでに庶民、二年目に突入です。


成人式が終わってそのまま買い物。スーツでの出席だったから特に違和感もなかった。あまり会っていなかった級友達とも再会して意外と楽しかった。俺としては二回目の成人式だったのだが。


「鍋でいいか」


うーん、何鍋にしようかな。海鮮鍋となると人数的に準備するものが多くなってしまうから、肉鍋にするか。面子があれだが、高級な肉なんて買う余裕はない。スーツ買った所為で金欠に近づいたし。


「おっ、成人式終わったのかい?」


「えぇ、先程。これから私の部屋で酒盛りする予定なのでその準備です」


先に成人している葉月先輩、綾先輩。今回成人した俺と小鳥、長月による酒飲みをやるのだが大丈夫だろうか。以前の馬鹿騒ぎに比べれば人数は減るのだが、酒が入った時の反応が分からない。


「葱に白菜、椎茸、それにこれとあれと」


「おぉー、今夜は鍋かい。酒に合うな」


「なるべく自制するように心掛けるつもりですけど、どうなることやら」


「初めての酒なら多少羽目を外すくらいが丁度いいだろ。ほら、おまけも入れておいたから」


「いつもありがとうございます」


多少の羽目を外した程度でもあいつ等だと何をやらかすのか想像できない怖さがある。性格変わったらどうしよう。冷静な葉月先輩が絡み酒だったら、綾先輩が更に絡んできたら面倒だな。


「さてとあとは」


「琴音ちゃん、琴音ちゃん」


「お婆さん。どうかしましたか?」


次は肉屋だなと思った所で和菓子屋のお婆さんから呼び止められた。以前に仕事を手伝ったことから仲も大分進展したのだが、どうにも孫だと思われているような気がする。


「成人祝いにこれ、どうぞ」


「わぁ、おはぎですか。ありがとうございます」


「琴音ちゃんにはお世話になったこともあるのだから少しくらいね。お爺さんもあれから好調で」


「腰を壊すとは思いませんでしたからね、あの時は。臨時の売り子は面白かったので良かったのですが、取材は勘弁でした」


だからこそ手伝う羽目になったんだけど。商店街の取材がある日にぎっくり腰で開店すら危ぶまれたから、丁度通りかかった俺が手伝ったのだ。いつもサービスして貰っていたこともあるから。


「それじゃ有り難く頂きますね」


「また来て頂戴ね」


この商店街にも長らく世話になっているな。サービスして貰っていることが多いが、俺も巻き込まれていたとはいえ協力することもあった。不本意なものがあったけどな。


「さて買うもの買ったし帰りますか」


肉屋の店主は相変らず何も言わなかったが、俺の恰好についてサムズアップしたな。別にスーツ着て、コート羽織っているだけなのに。殆ど学生時代と変わらない格好だぞ。あっ、豆腐買うの忘れていた。


「ちょっと戻るか」


手抜きして文句言われるのは作る側として腹が立つからな。しかし今回の持ち込みであいつ等は何を持ってくるのだろうか。十中八九、酒がメインになるだろうが変なものはないだろうか。


「予定だと十八時からだから結構余裕はあるんだよな」


部屋に戻ってきて着替えて、これからの準備に勤しむ。コップにワイングラス。徳利と盃まで用意できたのは静流さんのおかげだな。代償は大きかったが。


「しかしこの部屋に集まるのも何回目だろうか」


結構な頻度で誰かしらがやってきているからな。学園時代はもちろん、大学生になってからもいつもの面子に加え、更に厄介な連中まで集まりだしている。そして今回から酒が飲めるようになり、更に悪い予感がする。


「結構貰いものが増えたよな」


最初は初期装備だけで何もない部屋だったのに、人が訪ねてくるようになってから変なものも増え始めた。誕生日にどでかい熊のぬいぐるみを持って来たのは誰だっただろうか。


「はいはーいと」


時間的にはまだ早いのだが誰が来たのかは分かったな。今回は十二本家の連中に加えて、一般人代表も呼んでいる。琴音となってから一番付き合いの長い人物だから誘っておかないとな。


「はい、これ。お母さんとお父さんからの差し入れ」


「ご苦労様、香織。別に気を遣わなくても良かったのに」


「私の分も含まれていると思うから。飲み会に何も持って来ないのもあれだしね」


一般人代表の香織である。部屋にあげて、持って来たものを確認してみたのだがどちらが用意したのか一発で分かったな。料理が沙織さんで、ウィスキーが店長だな。


「店長も何を考えているんだよ。飲むの初めてなのにウィスキーとか」


「思うんだけど、琴音ってお酒に詳しいわよね」


そりゃ前世で飲んでいたからな。酒が入って、今の連中といる時以上に馬鹿騒ぎしていた記憶はある。おかげであの街での俺達の評判は問題児扱いだったのだが。よく警察の世話にならなかったと思うよ。


「それより何で私を誘ったのよ? 十二本家との繋がりなんて私には必要ないのに」


「沙織さんと一緒にお店で働くんだろ。なら私がいる限りそういった人物が必ずやってくるから慣れてもらう為に」


俺が言っていることは方便だ。本音は生贄。あの面子に酒が入って前の俺のような惨状を作り出した時用の防波堤。慣れて貰うのは本音でもあるのだが。俺の将来も殆ど決まっているし。


「うちの店も有名になっちゃったね。琴音のおかげだけど、大物率が跳ね上がっていて緊張するわよ」


琴音の母に、小鳥とその両親。葉月先輩に綾先輩。他の十二本家の連中もやってくるし、芸能人までやってくるようになった。雑誌の取材も来たのだったか。


「十二本家も緊張する必要がないことを知って貰うのが目的だ」


「嘘だね」


流石に付き合いが長いから分かってしまうか。香織は現在料理の勉強中。それが終わったら沙織さんの元で修行する予定。俺も大学を卒業したら本格的に働く予定ではある。


「将来は琴音と二人三脚で切り盛りしないといけないから頑張らないと」


「私も経営学はサッパリだったから。店長からも色々と学ばないといけないことが多いな」


喫茶店で本格的に働くことを決めた。母と双子にはすでに話しているのだが、父にはまだだ。いつかは話さないといけないのだが、反対される可能性もある。その時は殴り合いしてでも認めさせてやる。


「それにしても十二本家が集まるんだから料理も豪華だと思ったんだけど、そうでもないのね」


「私の金銭面知っているだろ。飲み会で破産なんてしたくない」


十二本家基準で材料を用意したらあっという間にお金が無くなってしまう。大体何回もやっているが市販品でもあいつ等は文句を言わない。明らかにヤバいもの以外は不味いとすら言わないからな。


「やっぱりイメージって偏るものなのね」


「基本的に私と同じようなイメージでいいと思うけど」


「それは無い」


真顔で即答しなくてもいいのに。性格とかは確かに全員違うが、厄介な個性持ちという点では一致していると思う。俺なんてまだ個性としては軽いもののはず。周りが濃すぎるんだよ。


何だかんだと香織と思い出話に花を咲かせているとそろそろ他の面子がやってくる時間が迫ってきた。今回も外には護衛の人達が沢山いるが、今回の現場指揮は何と晶さん。出世したと思うか、厄介ごとを回されたのかは判断に迷う。


「最初に来るの誰だと思う?」


「葉月先輩じゃない。理由は特にないけど」


これもイメージなのだろう。俺の本命は綾先輩だな。あの人の暴走ぷりは何年経っても相変らずであり、酒が入った時のパワーアップが未知数だ。他の面子も似たようなものだが。


「連打する人ってあの人しかいないわよね」


「毎回これなんだよな」


怒涛のチャイム連打はすでに個性まる出しのあの人だな。綾先輩自身、何回も喫茶店に顔を出しているから香織の前でも素を出している。俺に慣れている香織ですら面喰っていたな。


「五月蠅いから止めろって毎回言っているよな」


「お約束は毎回やってこそのお約束じゃない」


この人が何を言っているのか理解できないな。相変らず人の迷惑をあまり考えてくれない人だよ。初回と違い妹の凛がいないから両手にビニール袋持っているが結構重そうだな。


「今回は何を持って来たんだ?」


「焼酎と缶チューハイを色々と。重いからさっさとあげてくれない」


この部屋で綾先輩が酒を飲んだことはないのだが、外ではすでに飲み始めている筈。あまり度数がキツイものは入っていないな。あまり強い方じゃないのだろうか。


「お酒の失敗って怖いよね」


「何をしたんだよ、あんたは」


「ちょっと話せないわ。薫巻き込んでやらかしたとだけ言っておくわ」


「「あー、あの日ね」」


俺と香織でハモってしまった。いつだったか喫茶店に現れた木下先輩が青い顔してやって来た時がある。その時のリクエストが二日酔いに効くものと言っていたな。あとは大変疲れた顔もしていたから間違いない。


「先輩も特に話さなかったけど、何か後悔していたように見えたわね」


「私は綾先輩に巻き込まれたというのは予想できたけど、内容まではな。碌でもないことは確かだけど」


「あれは語れないわ。私の為にも、薫の為にも」


マジで何をやらかしたんだよ。仮にも十二本家の人間なのだから男性関係ではないと思うのだが、周りを巻き込みまくってやらかしたような気はする。この人の騒ぎは小さなことでも、大きくなり易いからな。


「次が来たか」


「もちろん僕だけどね」


玄関を開けてみると黒服を従えた葉月先輩が立っていた。いつも通り、サングラスをした黒服さん達はお疲れのようで。しかし段ボールで持ち込みとか、この人の量は相変らず多いな。


「何をこんなに持って来たんだよ」


「ワインに日本酒。あとはネタとしてウォッカ」


「絶対に封を空けないからな」


「スピリタスじゃないから安心してよ」


「あんな危険物を持ってくるな!」


扱いに困るものはいらない。ウォッカというだけでも手を触れようと思わないのに。何か料理に使えるだろうか。下手したら発火するから怖くて使いたくない。あとで調べるか。


「やっぱり綾が一番乗りか。こういう時の行動力は流石の僕でも敵わないね」


「あっはっは、敬え、敬え」


「馬鹿だね」


「「うん」」


目的が定まった時の綾先輩の行動力は確かに見習うべきものはあるだろう。やり過ぎている自覚がないのは駄目な所だが。もうちょっと周りに目を向けてくれると助かる。


「酷い言われようなことで」


「私に無茶なお願いしないでくれると助かるんだけど。何であいつ等に会いたいとか言い出すんだよ」


「そりゃ現役の人達に話を聞いてみたいじゃない」


おかげで俺は厄介な交換条件を提示されたんだからな。ベースを弾けることがバレていたから一緒に演奏しようとか。別に演奏する位なら良かったのだが、レコーディングに呼ぶのは止めて欲しい。


「琴音が参加した楽曲も聞いたよ。私よりも先にメジャーデビューしやがって」


「誰の所為だと思っている。騙されて演奏させられ、それが録音されてたなんて私だって思わなかったぞ」


後で公開していいですかと唯さんから連絡が来て度肝抜かれたわ。嫌ですと答えようとしたら馬鹿共に先を越されて、交換条件はこれだったと後出しで言いやがって。名前とか顔とか全部隠した状態でOK出したけどな。


「一時期大騒ぎになったわね。ニュースでも取り上げられて。幻の五人目が現れたとか。それ見て頭抱えている琴音を見て、私は察したけど」


「後で全員ぶん殴ってやったけどな」


その際に発生した大喧嘩は色んな人の記憶に残ったな。俺が十二本家の人間だろうと容赦なかったあいつ等はマジで昔と変わっていなかった。最後に立っていたのは俺だったけど。


「次の人が来たみたいだね。誰だと思う?」


「小鳥一択だろ。長月が一番最後なのはいつものことじゃないか」


服装が凝っていたのは最初だけであれから長月の服装は普段着のようなラフなもの。それでも何かしらの用事があるのか一番最後なんだよな。小鳥は下手したら綾先輩をも抜きかねない勢いはある。


「お邪魔します!」


「お邪魔する」


予想外だったのは二人一緒に来たことだな。長月の両手が塞がっていて、小鳥が片方に荷物を持っていることから長月が一つ持ってあげているのか。俺の時は手を貸そうとしないのに、この扱いの違いは何だろう。


「それじゃこれで全員集合だな。香織、手伝って」


「鍋だったよね。腕の振るいようもないわ」


入れる順番さえ間違えなければ悲惨な事にもならないだろ。それにこの人数だと減りも早いから途中からは順番も関係なくなる。俺と香織が鍋奉行役だな。


「それじゃ成人、おめでとう。乾杯!」


「「「「乾杯!」」」」


初の酒が入る馬鹿騒ぎ。この後にどんな展開になるのかは誰にも予想できない。ただ碌でもない状況に突入するのだけは誰もが予感しているだろうな。


前話の後書きはタイミング的に被っただけです。

ネタを挟まないと死んじゃう病は発症しておりません。

そして一話で終わらせようと考えていた閑話ですが、予想外に長くなりそうです。

閑話なので出来上がり次第、投稿する予定です。

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