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85.二次会開いた代償

やっと中盤でしょうか。


長月が帰還した。予想よりも大分遅い帰りに全員が買ってきたものに興味津々だ。全く心配していなかったことに対して誰一人として何も思っていないだろう。


「それじゃ買い物チェックするか」


小鳥、凛、水無月の頼んだものは別段変わったものではないのですぐに渡した。問題となる俺達三人の品物に関しては別の袋へと分けているようなのでそちらは長月から直接取り出して貰おう。


「あっ、唐揚げは食べないので長月先輩にあげる」


「何で頼んだんだよ!?」


流石は水無月。平然と相手の心を折りにいくな。折角買ってきて貰ったものを即返品とか買ってきた本人として憤るのも分かる。だが飯食った後に唐揚げを食べるかと言われると今の俺もNOだ。


「それじゃまずは私のから」


「こんなんでいいんだろ」


出されたのは見た目的にも綺麗であり、覚えている限りでは値段も他の物よりも高かったはず。味の方も評判は良く確かに外れと言われるような飲み物ではない。


「三十点」


「何でだよ!?」


「面白みがないの一点だから。ゲテモノのような見た目で味が美味しいというギャップ狙いを私は望んでいたのに」


「そんなの分かるか!?」


そりゃ見た目が明らかに地雷のようなものを好き好んで買おうなんて思わないだろう。だけど新製品を逐一チェックするような人だっている。そういった人の情報は割と重要なのだ。


「それじゃ次は僕のを出してよ」


「これです」


出されたのはチョコチップス。まだこれを置いている店だったんだ。あまり立ち寄ることもないから何を置いているのか全然把握していないけど、誰か好きなお客さんでもいたのだろうか。


「二十点だね」


「これもかよ」


「流行りが過ぎ去った後に買ってきたのは多少なりとも評価は出来るけど、僕の思っていた面白いものとは違うね。買ってきた本人が食べて悶絶するようなものを望んでいたからさ」


「悪辣だな!?」


それは俺でもちょっと同情するようなものだな。返品もそうだが、何で買ってきた本人が地雷そうな食べ物を食べないといけないのか。そもそも罰ゲームの範疇から外れていることに長月は気付ているのかな。


「それじゃ大トリである私の品物を出して貰おうかな」


「これ」


疲れ切ったような表情で出してきたのは紙袋に入った書物。中身を確認した綾先輩が盛大に溜息を吐いている様子で思っていたのとは違うのが分かるな。


「五点」


「もう、いいや」


最低評価だけど遂に諦めたか。しかしここまで評価が低いのも気になるな。そう思ったら紙袋から取り出した書籍をいきなり床に叩き付けたよ。大分お冠のご様子で。


「私に喧嘩を売っているの!」


床に残った書籍を全員で覗き込んだらグラビアの巨乳特集だった。これには女性全員がドン引きである。グラビアを買ってくる可能性は確かに考えていたが何故にこれを選んだ。


「護衛の人からのお勧めだったんだ」


メールしとこう。恭介さん、ギルティと。何で仲良くなっているのかはさっぱり分からないが、明らかに連帯責任の義務は生まれるだろう。何かをする訳ではないが、勝手に被害妄想を持ってもらう事位はいいだろう。


「この中で巨乳なんて琴音しかいないじゃない」


「えっと、御免なさい。長月さんの事は異性として見れないので無理です」


「何で俺が告白したような展開になるんだよ! お前も妙な演技をするな!」


お約束じゃないか。巨乳が好みかどうかの問題はどうでもいいんだけど、長月と付き合うとか絶対にありえないな。家の事もあるし、それこそ以前まで犬猿の仲だったのだ。無理があり過ぎる。


「綾先輩だって別に胸が小さいわけじゃないだろ」


「そうだけど。琴音なんて腕組んで持ち上げているのは無意識のアピールかな」


癖であることは否定しないが、何気に重いんだよ。最初の頃なんて違和感が凄くて戸惑う事の方が大きかった。今だと慣れたけどさ。あと、綾先輩の目が怖い。


「そんなに凝視されても困るんだけど」


「思いっきり揉みたくなったのよ」


危険な思想は止めて頂こうか。ジリジリと間合いを詰めてくる綾先輩に俺も後退しつつハリセンを構える。それでも止まろうとしない所を見ると本気なのだろう。ならば俺も本気を出そう。追い出す方へ。


「綾姉、ストップ。それ以上進んだら叩かれるだけじゃ済まない。追い出されたら私にもとばっちりが来る可能性もある」


「凛は大丈夫。追い出すのはそこの危険人物だけだ」


「ならいいや」


「だけど姉の凶行は止めてくれよ」


匙を投げないでくれ。そこで踏み止まったら誰がこの暴走特急を止めてくれるんだよ。それでも追い出すという言葉に反応してか進行は止まった。


「後で覚えていろよ」


「本気で追い出すぞ」


「ごめんなさい。それだけは止めてくれないかな」


まだ中盤にも差し掛かっていないのに強制退出とかは嫌なのだろう。それでもどうせまた後で暴走するのだ。お約束というか天丼というか。


「話の流れ的に長月君に聞くけど、君の好みの女性ってどんな人だい?」


今のに流れなんてあるのだろうか。それを言ったら葉月先輩だって答えないとフェアじゃない気がするのだが。それに気づかないのが長月なのだが。


「俺の事を引っ張ってくれる人かな。常に厳しいという訳じゃなくて優しさもあって」


「うん、長月そこで止まれ。色々と流れ弾が来そうだ」


全員が俺の事を見始めている時点で察することが出来る。巨乳好きに加えて、性格的なものでも俺が対象になりつつあるようだ。その後の続きによって除外される可能性もあるが、現状の解決には繋がらない。


「長月君が琴音の事をちゃんと見れるようになったら楽しみだね」


「私としては遠慮したいのだが。絶対に付き合うことはないけどさ」


「絶対になんてあり得ないよ。僕としてはその現場を見れないのは残念かな」


来年にそうなること確定かよ。葉月先輩がこういう言い方する時って確定事項なんだよ。それでも俺が長月の事を異性として好きになることはあり得ない。本当に絶対だ。


「それじゃ気を取り直して第二回戦と行こうか」


「五十五点の長月に説明する必要はいるのか?」


「何だ、その不名誉な呼び方は。大体あれで満点を取れる奴なんていないだろ」


「三百点の上で三百六十点があるけど、流石にそこまで到達した人物はいないな」


満点で満足、その上は更に予想外な品物であること。満点を取ったのは歳三だったか。無口な癖してそういったボキャブラリーは豊富なんだよな。


「それじゃ二回戦開始!」


今回はお互いに協力なんてしないから誰が最下位になっても不思議じゃないと最初は思っていた。協力はしないが、たった一人をひたすらに攻撃してくるのは虐めだろう。


「無理!」


「だろうね」


終わってみれば圧倒的敗北。明らかに最下位が決まっている状態だというのに面白がって更に突き落としに掛かってくるのは何でだよと突っ込んだ。


「それで一位が綾先輩とか狙っていたとしか思えないんだが」


「実力で勝ち取ったのよ。それじゃお楽しみの罰ゲームとしよう」


「はいはい、潔く負けを認めるからそれを寄越せ」


下手に渋ったら綾先輩に強制的着替えを執行されそうだからな。動物パジャマをやけくそ気味に奪い取ると自室に移動する。まさかこれを進んで着ることになるとは。負けたから仕方ないと何とか自分を納得させよう。


「これでいいんだろ」


着替え終わって戻ってみたら全員が呆然とこっちを見ていた。いや、その反応は困るんだが。おちょくるか、囃し立てるとか何かしらの反応が欲しいんだけど。凄い恥ずかしい。


「エロい!」


「第一声がそれかよ!?」


綾先輩の言葉に思いっきり突っ込んでしまった。恥ずかしいのを我慢してきているのに何でそれがエロいに繋がるんだよ。助けを求めるように葉月先輩に顔を向けると困ったように顔を背けられた。えっ、その反応は何?


「琴音さん、琴音さん。私の事をギュッとしてください!」


「それ罰ゲームと関係ないよな!?」


小鳥のテンションがおかしな方向に向かっていないか。何でこの格好で小鳥の事を抱きしめないといけないんだよ。ジリジリと詰め寄ってきて、飛びついてきた小鳥を避けることが出来なかった。


「あぁー、幸せです~」


「こら、何処に顔を埋めているんだよ!」


流石の俺も赤面していると思う。胸に顔を埋めて頬ずりしている小鳥をどうすればいいのか分からず、周りを見てみると男性陣は顔を逸らして顔を赤くしている。その反応は本当に困るから止めて欲しい。


「シャッターチャンス!」


「撮るな!」


綾先輩がスマホを構え出したので何とか阻止しようとしたのだが、抱き付いている小鳥を引き剥がすことが出来ない。何でこの小さな体からそんな力を出せるんだよ。


「綾姉」


ストッパー役の凛が綾先輩の横に現れたことでやっと解放されると思った。誰だって希望を持つことは大事だよな、うん。


「画像データ、後で頂戴」


「それでこそ我が妹よ!」


そんな予感はしていたよ! この部屋の中にストッパー役なんて誰も居ないことはもう気付いている。最初の計画の時からすでに色々と破綻していたことに今気づいたさ。


「何だろう、何かもうどうでも良くなってきた」


もう仕方ないので頬ずりしている小鳥の頭を撫でることにした。何かゴロゴロと音がしそうなほど上機嫌な気はするが、暫くはこのままだろう。誰も止めてくれないから。


「葉月先輩。マジで進まないから何とかして」


「流石に女性陣全員を敵に回すのは僕には無理だよ。落ち着くまで待った方が賢明だと思うよ」


女性陣で暴走していない奴がいない状況。下手に止めに掛かれば次の標的に選ばれる可能性だってある。誰だって罰ゲームは回避したいよな。俺と長月の様子を見ていたら。


「それじゃ次はポーズを取ってもらおうか」


「それは罰ゲームと関係ないからやらない」


「ジャンケンポン!」


反射的に綾先輩のノリに乗ってしまった。俺がグーで綾先輩がパー。勝った瞬間の綾先輩の悪い笑顔は本当に忘れられそうにない。悪魔だよ、この人は。


「勝者権限発動。私の指示通りに動いてね」


「何で乗ったんだ、私は!」


やらなければ勝ちも負けも関係なかったはずなのに、反射的に出てしまった手が憎たらしい。しかし俺が勝った場合は何を要求できたのだろう。


「まずは小鳥ちゃんどいてくれないかな。それから琴音はまず四つん這いになって」


何故か素直にどいてくれた小鳥に疑問に思いつつ要求通りに動く。このパターンはあれか。俺に動物の真似をさせようとしているのだろうか。次の要求は鳴き声の再現とか。


「その状態で上の方を向いて」


言葉通りに上を向くと綾先輩、小鳥、凛がスマホを構えた状態でスタンバイしていた。待て、この状態の俺を撮るつもりかよ。幾らなんでもそれは駄目だろ。


「いいわ。屈辱にそして恥ずかしそうに涙を溜めつつある琴音とか。同性でもクルものがあるわね」


「レアすぎ。今じゃないと絶対に見れない」


「何かが出そう」


それは鼻血だと思うぞ、小鳥よ。俺もすっかり忘れていたが小鳥に抱き付かれて着崩れした状態。撮られた画像をこちらに向けられて確認してみると、結構あられもない恰好をしているな。


「削除、即刻削除を要求する!」


「「「永久保存決定!」」」


何でこんな時だけ息ピッタリになるんだよ。男性陣も興味深そうに見ているんじゃない。画像データなんて絶対に見せる訳にはいかないな。兎に角、衣服を整えないと。


「何か色々と汚された気がする」


「琴音、ドンマイ」


葉月先輩の言葉に肩が落ちた。もうこの二次会がどの方向に向かっているのサッパリ分からない。次の罰ゲームは無事に終わるのだろうか。

琴音罰ゲーム回でした。

さて、そろそろ記念閑話でも執筆しようと画策中です。

二次会編が終わる頃には到達していると思って計画を練っています。

馬鹿騒ぎ後の馬鹿騒ぎ。期待しないで待っていてください。

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