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83.暴走状態突入

次回予告詐欺となります。

取り敢えず二次会本番突入です。


さて大勢で飯を食っている状態で一番忙しいのは誰か。それは調理担当をしている人材である。つまり俺。飲み物が無くなった、お替りが欲しいという声に応えないといけないからな。


「琴音の料理は相変らず美味しいね」


「葉月はいいわね、何回も食べれて。私なんてこれが初めてなのよ」


「上司としての特権だよ」


意外と好評で良かった。市販のルーで如何に美味しく作れるのか香織に相談していて助かったな。俺が最初に食べたあのカレーは本当に美味しかった。それから確認したのだが香織の料理の腕は俺以上。彼女にも将来の夢があるのだ。


「琴音さん、お替りお願いします!」


「いいけど、本当に大丈夫なのか?」


三杯目のお替りなのだが小鳥のその身体の何処に入っていくんだよと全員が突っ込みたい心境だ。俺や綾先輩の印象よりも、今日だけで小鳥の印象が変わり過ぎのような気がする。


「こうやって見ると如月先輩は皆のお母さんといった立ち位置か」


「おい、水無月。ぶっ飛ばすぞ」


何で話が飛躍しているんだよ。ただ飯を作って出しただけじゃないか。それに上級生組も何か分かるみたいな顔をするな。お前らは俺よりも年齢が上だろう。


「私は断然お姉さんを押します!」


「小鳥もややこしくするな!」


「私も小鳥先輩に賛成で」


「凛もかよ!?」


ストッパーが役に立っていないとかどうなっているんだよ。あれか、俺の判断基準も本性を出す前の状態だったから見誤ったとか。もうちょっと慎重に考えるべきことだったかも。


「私の心労がマッハで溜まる」


「予想していたことじゃないか。僕はそれも含めて琴音が了承してくれたものだとばかり」


「あの時の私の考えを今すぐにでも変えてやりたい気持ち」


学園長の件で色々と溜まっていて、当時はノリに任せてしまったんだよ。何だかんだとそのテンションを引き摺っていたのだが、本番を迎えて正気に戻った。長月、早く来てくれ。俺も暴走枠に収まりたい。


「さてご飯も食べたことだし、何をやろうか」


「私は片付けがあるから暫く離脱する」


食ったものがカレーだから片付けを後回しにすると面倒なんだよ。しかしあれだけの量を用意したというのに全部食い尽くされるとは思ってなかったな。というか小鳥が食い過ぎだ。


「琴音ー、誰か来たみたいだよー」


「一人しかいないだろ」


残り一人のメンバーを忘れているのだろうか、綾先輩は。こんな魑魅魍魎が集まる部屋にやってくるのなんて同じような奴しかいないだろ。つまり生贄がやっと来たという事だ。


「何処の合コンに参加するつもりで来たんだよ」


やってきた長月の恰好を見て俺の第一声がこれである。何でそんなきっちりとした恰好をしているんだよ。確かに女性が多めだが、これは二次会で騒ぐのが目的の場だというのに。


「如月は俺の母に何を言ったんだ。やたら張り切って俺の事をコーディネートしたのだが」


「私は長月の母と会ってすらいない。私の母と会っていたからその影響だろう」


多分だが俺の自慢話でもしたんだろうな。同じ境遇の母であり、その娘が改心したとか何かしらの影響を求めたのだろうか。あとは息子の事を宜しくお願いしますとか。断固お断りする。


「あっ、お疲れ様です。これで全員集合したのでお迎えは終わりです」


「何というか疲れた。主に十二本家の本性を垣間見たせいで」


「俺もだ。まさかエレベーターを使わずに階段を全力ダッシュするとは思わなかった」


そりゃ疲れるな。それでも俺と一緒に早朝トレーニングしているだけあって体力に余裕はありそうだ。疲れているのは本当に精神的なものだな。これからもっと疲れてもらうのだけど。


「琴音、もうやらかさないでね」


「拒否。ではばいばい」


長月を部屋の中に引き摺り入れてドアを閉める。何か外からドアを叩く音が聞こえるけど、知らない振りだな。だって俺が気を付けたとしても他の面子がやらかすから。


「最後の一人来たぞー」


「「あはははは!」」


上級生二人が長月の姿を見て滅茶苦茶笑っている。明らかに場違いな恰好をしているという点では同意しておくのだが。霜月姉妹の恰好だって明らかにおかしいだろ。長月だって腹立つ前に唖然としてるぞ。


「如月、あれは誰だ?」


「信じられないかもしれないけど、綾先輩」


指先震えているぞ。信じられないのは分かるが現実を見てくれ。床をバンバンと叩きながら大爆笑しているのは紛れもなく学園で清楚なイメージのある人だから。本性を見たらそんなイメージ大崩壊だ。


「やっほー。来るのが遅いと思ったけど、それが理由なんだね」


「十二本家の長男が合コンに行くとか見てみたいかな。僕はやらないけど」


偉いスキャンダルになるなと思ったが、合コンではなくても似たようなものに参加した身としては何も言えないな。あれは誰にもばれていないと思いたい。学園長が口を滑らせていない限り。


「それじゃ私は食器の片付けが途中だから抜けさせてもらう」


「おい、この混沌に俺一人を残すつもりか!?」


いや、俺を頼られても困るんだけど。大体お前はそんなキャラじゃないだろ。俺に頼るとかお前のプライドはどうなったんだよ。それよりも母親に追加で何か言われたのかな。


「さてちゃっちゃと片付けますか」


邪魔はされないと思うが、何かが飛び火してくる可能性もあるからな。行動予測が出来ない連中が多過ぎる。そして誰一人として手伝うとは言ってくれない。小鳥も綾先輩に捕まっているからな。


「琴音ちゃん。私達は先に失礼するわね」


「未成年ばかりの所に俺達がお邪魔するのもあれだからな。妹達の元気な姿を見れただけで満足だ」


確かに学生の中に大人が混じるのはちょっとやり辛いものがある。お互いにな。気を遣ってくれたのはいいのだが、これからどうするのだろうか。でもそれを俺が考えるのは野暮だな。


「それではまた明日」


さてこれで本当の意味で俺達だけになったのだが、何をやるのか。葉月先輩が多数のゲームを持って来たからそれを使って遊ぶのが定番か。罰ゲームは何にしようかな。


「これよりゲームを行う!」


「片付け終わってみたら始まるとか何これ」


葉月先輩に突っ込んでも意味はないな。食器の片付けを終えてエプロンを外してリビングに戻ったらトランプを弄っている葉月先輩を確認。そうしたら先程の台詞である。


「それで何をやるんだ?」


「人数が多いからどうしようか。ババ抜き?」


そこで疑問形を挟まないで欲しい。えーと、総勢何名だったか。七人でババ抜きとか暫く終わらないが、暇潰しとしては有りか。全員が納得すればいいのだが。


「罰ゲーム何にしようかなぁ。こういうのは琴音に任せよう」


元から反対するような人物がいないことに気付いた。全員が楽しめればそれでいいや状態だからな。そして罰ゲームの内容を俺にぶん投げとかいいのかよ、綾先輩。自分が当たる可能性だってあるのに。


「それじゃ適当に輪を作ろうか」


葉月先輩の言葉に従って全員が動き、配置を確認して俺は理解した。他の面子が気づいているかは分からないが、意図を水無月や凛辺りは勘づいたかな。


「それじゃ配るよー」


確認のために葉月先輩と綾先輩の目を見ると、ニヤリと笑いやがった。ならば俺もそれに協力しようじゃないか。ババ抜きで協力体制を築いたら狙われた人物は確実にアウトだな。


「一抜け」


先に抜けたのは凛。次に水無月、そして小鳥。残りはワザと残った上級生たち二人。残された俺と長月。嫌な予感がした。これは俺も獲物に含まれている可能性があると。


「琴音の番だよ」


取り敢えず、信用は出来ないけど今まで通りにやってみよう。罰ゲーム考える人が罰ゲームを受けるとかあんまりな展開は流石にないと思う。本末転倒だろ、それは。


「残り一枚。やっと抜けれた」


単純に運が悪かったのだろうか。分かったことはやっぱりこれが出来レースだということ。意図を理解している者が抜けられる。長月は理解していないという事だ。


「最後に残ったのは僕と君か」


「おかしい。こんなはずでは」


いや、最初から決まっていたことだから。目の前に集中し過ぎて背後が疎かだぞ、長月。情報が相手に筒抜けなのがまだ分かっていない様子で。意図を理解していたのに最後まで残っていた俺はちょっと疑心暗鬼になっていたな。


「はい、終了。罰ゲームは長月君に決定」


「負けた……」


予定調和。さて何にしようかな。やり過ぎるようなことは止めておこう。二次会は始まったばかりで不和が生まれるようなことはやらない。あとは面白くないとな。


「じゃあコンビニダッシュにしよう」


俺の発言に上級生二人は面白そうに、他の面子はあまり理解している様に見えないな。説明する必要はあるのかね、これは。言葉通りなのに。


「皆が欲しいものを買ってくるだけ。だけどそれじゃ面白くないから全力ダッシュで行ってくるように」


「俺がパシリか」


「それじゃ全員、欲しいものを言ってくれ。長月は紙に控える事」


「じゃあ紅茶でお願いします」


「ポテチで」


「うーん、唐揚げかな」


小鳥、凛、水無月は普通に頼んでいるな。それはそれでいいのだが、こういうのはもうちょっと工夫しないと。


「私はいい感じの飲み物かな」


「僕は面白そうな食べ物で」


「恥ずかしそうな読み物で!」


何をすればいいのか理解している連中の無茶ぶりがこれである。俺や葉月先輩はまだ可愛い方だ。一番質の悪いので綾先輩なんだが。まぁ俺達の年齢で十八禁関連は手を出せないから。


「ぐ、具体的に指示してくれないか」


「長月の感性に任せるということ。それじゃスタートの合図は私が出すから」


幾らなんでもいきなり出ていくのは問題がある。ちゃんと知らせるところには教えておかないと。さて、どっちに連絡するべきか。最近は晶さんばかりだから今回は恭介さんにしよう。


『おい、これ。何の連絡だよ』


「只今より罰ゲームを敢行します。護衛担当の方々は準備をお願いします」


あくまで連絡だけだから会話する気ゼロ。ある程度必要なことは喋るが、何を言われようと聞く気はない。


「選手は長月。内容はコンビニダッシュ。私がスタートの合図しますので人選はお任せします」


『ちょっと待て! ヤバい、こいつ聞く耳持ってない。主任!』


慌てているな。不測の事態発生なのだから仕方ない。その発生源が何を言っていると言われそうだが、イベントなのだから。二次会参加者は主に俺達だが、護衛の人達も参加していることにしよう。


「それではカウント始めます。五、四」


『えっ、俺!? 他の面子は!?』


「三、二、一。GO!」


「『ちくしょうー!!』」


外と内で同じセリフが聞こえてきたな。しかし真面目に走って行ったけど、護衛の人達は追いついて行けるのだろうか。長月も例に漏れずハイスペックだから。中身はあれだが。


「しかし長月先輩も可哀そうだな。明らかにターゲットにされて。俺じゃなくて良かったけど」


「綾姉、琴音先輩、葉月先輩が組んだら誰も勝てない」


「どういうことですか?」


小鳥だけが理解できていないようだからそろそろネタばらしするか。打ち合わせの無い即興の物だったけど、流石は長月。疑問に思わずに引っ掛かってくれた。


「単純に視線でカードを指定しただけ。俺達三人は。ついでに最後は長月の後ろにいた綾先輩が視線でカードを教えていた」


「イカサマでは?」


「れっきとしたイカサマだから真似しないように。ばれたら喧嘩に発展する場合もある」


ちなみに前世ではイカサマした新八を全員でフルボッコにしたことがある。あれは悲惨な出来事だった。罰ゲームの内容も酷いものだったはず。全員で全力で回避しようとした結果だったんだよな。


「次はイカサマ無しで。流石に二回目になると長月だって気付くだろ」


「えぇー、僕としては彼ならずっと気付かずに操り人形のままだと思ったのに」


「俺も同意する。被害担当は長月先輩だけでいい」


先輩を当然のように売っていくスタイルだな。だけど罰ゲームが一人に集中するのはこっちとしても面白くない。こういうのは色々と回してこそが醍醐味なのだから。


「そう言えば琴音の部屋からコンビニまでどれ位掛かりそう?」


「歩いて五分位だから、買うものに悩まなければすぐに戻ってくると思う」


綾先輩に答えておくが、根が真面目な長月が悩まない訳がないと思う。小鳥や後輩達は品物を指定しているから特に考える必要はないが、問題は俺達三人だ。


「先輩達は抽象的に頼んでいたけど、あれでいいの?」


「何を買ってくるかは本人次第だからネタに走り易い。私なら誰も食べない飲まないようなものを買ってくる」


「だよねぇ。私の頼んだ本は何になるか。安直にエロだったら引くけど」


「僕は激辛系統でもいいかな。もちろん食べるのは買ってきた人だけど」


場を楽しんでいる俺達三人に流石の小鳥や後輩達も苦笑いだ。だけど俺のは意外と当たりだった場合もある。発掘するような楽しみ方だが、地雷が多過ぎて困る。だけど綾先輩のだけは俺も悩むな。


「それじゃ彼が戻ってくるまでに次のゲームでも考えておこう。遊ぶものは色々とあるからさ」


「あり過ぎて悩むんだよ。うーん、ボードゲームにするか。すごろくとか人生ゲームとか」


最初から飛ばしている様に見えるのだが、多分まだまだ序の口だな。俺や先輩は常にかっ飛ばしている状態だが、後輩達がまだ馴染んでいない。というか本当にストッパーがいないのだが、大丈夫なのだろうか。




そこまで暴走しなかったかなと思います。

想定よりも書いてみたら穏便な感じになりましたからね。

しかしゲーム一回で一話使い切ったのは予定外でした。

次の被害者は誰にしようかな~。

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