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79.決戦場の休憩所③


本格的に十二本家の休憩所と化してきた一角。明らかに聞かれたら不味い発言を連発しているが周囲に近寄ってくる人達がいないから大丈夫だろう。仮に聞かれていたら十二本家のイメージが崩れるな。


「ちょ、ちょっと休憩させてくれないだろうか」


「やっと来ましたか」


二次会参加メンバーのラストがやっとやってきたか。随分と来るのに時間が掛かったが、葛藤でもあったのだろう。主に俺の傍にやってくるのが。


「遅かったですね、長月先輩。そんなに如月先輩を認められませんか。肝の小さい人ですね」


先輩相手であろうとも容赦ないな、水無月。その意見には同意しておくが。いい加減、現実を見て欲しいものだ。


「五月蠅いぞ、水無月。俺だって少し位は認めている」


「へぇ、どんな所をですか?」


「……色々だ」


無茶するなよ。俺とほぼ接点がなかったんだから褒めるような部分すら出て来なかったんだろうに。


「これで学園のメンバーは全員集まったかな?」


「長月さんの弟さんがまだ見えていませんが」


「えっ、もういるよ」


いつの間に? 葉月先輩の視線の先には確かに見慣れない青年がいる。俺の視線に気づいたのか笑顔で手を振ってくれているが、本当にいつの間に来たんだよ。


「長月君もさっさと来ればよかったのに。僕達みたいな男性がこんな場所にいる限り絶対に同じような話をされるんだからさ」


「あれには僕も辟易しています。何でこの歳で結婚なんて考えないといけないのかと」


婚姻を勧められるということか。私の娘はこういうのでとか自慢されて、下手な話をすると言質取られて最悪な結果になるという名物。不慣れな誰かが犠牲になったこともあったな。


「流石に耐え切れなくなって逃げて来たということですか」


「逃げてはいない!」


「なら少々の休憩の後に戻って下さいね」


「それはちょっと考えさせてくれ」


「琴音が長月君を弄り始めたね」


そりゃ弄るさ。学園の中で散々邪魔されていたのだから意趣返しをしても問題ないだろう。確かに去年とかは迷惑を掛けていたがそれでも俺としてムカついている部分はある。


「しかし長月君も生徒会の人選は失敗したね。優秀な人材を集めたぽいけど、僕のいた頃ほどじゃないし」


「僕達みたいな十二本家に声を掛けた時点で失敗だと思いますね」


「十二本家が優秀なのは分かり切っていることじゃないか。それの何が失敗だというんだよ」


不貞腐れているような感じで水無月に詰め寄っているが、失敗しているのは確かなんだよな。その理由は何となく察することが出来る。


「メリットがないことですね」


「そうだよね。誘うにしても相手にも利がないとあんな面倒なことはやらないよ。一般生徒なら内申を取るけどさ」


「僕達にとっては内申なんて興味ありませんからね。学園の為に、全生徒の為にとか言われてもピンときませんからね」


そうだよな。十二本家という名前があれば就職なんて実家を継ぐだろうし、系列だって沢山ある。大学だってまともな成績を残していれば問題ない。


「メリットの提示は必要なことだからね。だから僕は十二本家を誘わないんだよね。提示できるものが無いからさ」


「私はどうなるんですか?」


「琴音はメリットの提示が簡単に出来そうだったからさ。主に学食の無料券とか」


確かにそれに釣られた部分はあるな。それに生徒会に所属していたおかげで随分とイメージが改善されたような気もする。その代償が葉月先輩のお守だったけど。


「うーん、メリットの提示ですか。小鳥と凛さんなら容易に想像できますけど」


「へぇ、言うじゃないか。なら如月の意見が合っているかどうか確認しようじゃないか」


いや、本当に簡単なことだから。交流があれば誰だって予想の付くことで、葉月先輩はすでに予想できている。水無月は凛については予測できているな。


「小鳥は私が生徒会に入れば一緒に参加しますよね?」


「はい!」


元気な事でよろしい。だから小鳥を誘いたかったらまずは俺を攻略しないといけない。長月が相手の時点で攻略不可能だけどな。だから小鳥も諦めるしかない。


「凛さんは綾先輩が暴走した時に手伝ってあげると確約してあげれば大丈夫だと思います」


「協力してくれるのであれば私も協力します。ギブアンドテイクです」


デメリットとして暴走した日は生徒会の仕事なんて出来ないけどな。当たり前だが事態の収拾でその日は潰れるはずだから。そもそも長月は綾先輩の本性を知っているのだろうか。


「霜月先輩が暴走することなんてないだろ」


予想通りの反応をありがとう。そりゃ勧誘に失敗するな。凛からの冷たい眼差しに気付いているだろうか。絶対に入らないだろう。


「でも如月みたいに特別枠で途中参加して貰えれば」


「無理だよ」


希望的観測を葉月先輩が即否定した。俺が例外的な存在であることを理解していないんだろうな。特別枠というのはある意味で庶務より下の立ち位置なのだ。そこに十二本家が収まるのは対外的に悪すぎる。


「僕が言うのもあれだけど、十二本家をあまり軽視しない方がいいよ」


「家が有名なだけで俺達が偉いわけじゃないだろう」


全員それは考えている。だけど他の、主に大人たちの考えは違うんだよ。そこら辺をきちんと理解していない時点で長月は色んな部分が足りないのだ。


「今期は副会長に期待しよう。頑張ってね、琴音」


「何回霧ヶ峰さんが泣き付いてくるのか考えたくないのですが」


生徒会の内情を知っている友達として盛大に頼ってくるだろう。迷惑だが頼られているので断るのも忍びない。それが分かっていて葉月先輩は俺に振ってきたのだろう。


「副会長に彼女を選んだのも失敗の一つだね」


「木下先輩みたいなのが理想的な形ですからね。遠慮なんてしていたらあの役職は無理です」


霧ヶ峰さんが悪いわけではない。十二本家のことを理解している分だけ強気に出れないのがちょっとな。そこら辺のフォローもしないといけないと考えると憂鬱になる。


「薫みたいな優秀な人材が簡単に手に入ると思わない方がいいよ。彼女を手に入れるために色々と骨を折ったんだからさ」


「いつから目を付けていたのですか?」


「綾と一緒に居る時点で目は付けていたね。ある事件で薫こそ副会長に相応しいと思ったのさ」


「あれはちょっとやり過ぎましたね。珍しく私も反省しましたし、薫にとって黒歴史になっていますから」


何をやらかしたんだよ、この人達は。葉月先輩が木下先輩を手に入れるために何をしたのか気になるが、それ以上に木下先輩の黒歴史が気になる。本人が汚点だと言っていたことだろうか。


「その話、聞いたことがないんですが」


「僕達がまだ一年生の話だからね。同級生達もあまり言いたくないと思っているんだよ。ばらしたら何をされるか分からないからさ」


口を滑らせた時点で粛清されるとかどれだけだよ。その所為で下級生たちに話が伝わってこないということか。だけど学園長に聞けば分かるとは思う。知った後の事を考えると聞けないけどな。


「先輩達のおかげで僕達の影が随分と薄くなって助かってます。僕達は特に何かをやらかしてはいませんからね」


「綾姉を追いかけるので手一杯で何も出来ません。でも確かに私達は何もしていませんね」


二学年では主に琴音が色々とやらかしているから何も言えないな。それに俺自身も生徒会の活動で大分有名になってしまっている。主に写真撮影で。


「でも二学年の先輩方は有名ですね。文月先輩は容姿で、長月先輩は自主的な活動で、如月先輩は色々とあり過ぎてあれですが」


凛の言葉で自分が下級生にどう評価されているから分からなくなったな。小鳥はマスコット的な立ち位置だろう。長月の自主的な活動というのは放課後の見回りだろうか。俺はその被害者なのだが。


「凛さんは私の事をどう思っていますか?」


「如月先輩が姉ならどれだけ心安らぐかと思っています」


「凛は渡しませんよ、琴音さん!」


何故そこで反応するんだよ、綾先輩。それとそのセリフを双子の前で言わないでくれることを願おう。あの二人が聞いたら殺意が出てくるかもしれない。


「取りませんよ、綾先輩」


「凛がいなくなったら誰が私の尻拭いをしてくれるのですか」


いや、お前がやれよ。と本音が漏れそうだったのをグッと堪えた。凛は拳を震わせているが、その後に一気に脱力した所を見るといつものことなのだろう。


「ファイト、凛さん」


「応援ありがとうございます、如月先輩」


もう応援することしか出来ないからな。負担を変わってあげようにも、俺だって綾先輩のお守は嫌だ。精神的な負担が大きすぎるから。


「むしろ如月先輩が綾姉の妹になるとか」


「凛さん落ち着いて。思考が迷走していますよ」


絶対になりたくない。見返りが何だったとしても一日たりともそんなのは御免だ。体験的なものであろうとも、絶対に綾先輩は俺の事を弄り倒すだろう。


「でもねぇねの嫁であるのなら私の妹と言っても過言じゃありませんよね」


「そのネタをまだ引っ張るつもりですか」


大分前に終わった話を掘り返さないで欲しい。長月に説明するのが面倒だから無視しておこう。説明した所で彼が理解できるとは思えないしな。


「よく考えると茜さんも自由奔放な方ですよね。だから静雄さんと合ったんでしょうけど」


「聞いた話では初めてあった時から意気投合していたらしいです。その日に我が家に連れてきた位ですから」


「行動力半端ないですね。流石は霜月家と言っておきましょうか」


「その日に家族と意気投合しました。私にとっては悪夢だと思いましたが」


唯一の常識人である凛にとってはそうだっただろうな。お祭り騒ぎになったのは簡単に想像できるな。そして凛の胃に多大なるダメージを与えたと。


「二次会大丈夫ですか?」


「如月先輩がいるので大丈夫だと思います。負担は二分の一になりますから」


「私を当てにされても困ります」


むしろ当てにしないで欲しい。そこは肉壁こと長月に期待しよう。多分だが役に立たないと思うけど。あれを活用できるように今の内に考えておかないと。


「そう言えば長月さんの弟さんは二次会に参加しないんですか?」


「如月の部屋というのが心配でな。今回は辞退させた」


「僕は楽しみにしていたんですけどね。兄がどうしても駄目だというので今回は残念ながら不参加という事で」


ふむ、それなら晶さんに報告する必要はないか。当日に参加者を増やしたらどんなことを言われるか分かったもんじゃないな。おじさんからも苦情が来そうだ。


「次回があればいいですね」


「その時は僕達も参加するよ。そんな面白そうなイベントを見逃すのは勿体ないからね」


「私も同意見です。凛も内緒にしないように」


そもそも次回があるかどうかなんて分からないだろ。今回は俺が招待されたからなし崩し的に決まったようなものだし。毎回俺の部屋でやるのもちょっとな。


「まさか今年中に開くとか言わないですよね?」


「やるなら大いに結構だけど、予定的に厳しいかな」


「私はいつでも予定を空けることは出来ます」


「綾姉、あまり無茶を言わないで」


どうやら今年の予定は殆ど埋まっているようだ。流石に俺だってあと二か月位しか今年がないのに企画したくもない。今回の騒ぎ次第では二度と企画しないぞ。

仕事の連絡が来たので連日投稿はこれで最後になるかもしれません。

取り敢えず、時間があれば書けるということがGWで分かりました。

時間が欲しいです。

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