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73.準備の雑談

遅くなり申し訳ありません。

今回は投稿時間を変更してお送りいたします。

次話は一時間後を予定しています。


美咲の父親が運転する車で移動しているのだが、香織が大変なことになっている。気持ちは俺も分かるが、こればかりは慣れるしかない。だって今から別の車を用意するのも大変だから。


「あ、あのさ。私こんな車に乗るの初めてなんだけど」


「そうだろうな。あんまり緊張しなくていいぞ。別に何かあっても責任取る必要はないから」


香織がベンツに乗り慣れていたらそれは何か嫌だな。でも新鮮な反応を見れた気がする。俺だって多少は緊張しているけど。琴音の感覚が残っているからそこまでじゃないけど。


「三郎さんも久しぶり。元気にしていた?」


「私は大丈夫です。お嬢様もお変わりなく。いえ。随分とお変わりになられたようで」


見た目もそうだけど、中身は完全に別物だからな。


「三郎さんも以前は大変ご迷惑をお掛けしました。今はまぁこんな状態だから以前と違和感あるだろうけどよろしく」


「妻と娘から聞き及んでおります。聞いた当初は半信半疑でしたが、奥様のご様子から本当なのだと確信しました」


以前の琴音を知っていたのなら誰でも信じられないだろうな。琴音の家は目撃者が多いからそこから信じられる可能性が上がるだろう。


「奥様方も雰囲気が随分と変わりましたし、琴葉様も達葉様もお嬢様のお話をよくするようになりました」


「琴音、随分と周りに影響を与えているのね」


「それは私も予想外。うちの家族は元があれだから」


元々が駄目な方向に向かっていたから。あのまま成長していたらどうなっていたのやら。いや、双子については多分大丈夫だっただろうけど。琴音がそのままだったら問題しか生まれないな。


「琴音の家は色々と大変なのね」


「変わらない人もいるから。あの人に関してはどうにもならないだろうな」


「そうでございますな。御当主様はあのままでしょう」


家族どころか使用人たちの意見すら一緒になる位にどうしようもない。俺の変化で影響を与える位なら祖父母が何とかしていただろうし。もうお手上げだ。


「何か琴音の父親と会うのが怖いんだけど」


「大丈夫。会わせる気は微塵もないから。その前に私が会ったら殴る可能性高くて母さんが気を遣っている」


グーで殴ると思う。険悪な雰囲気になり易いから母も俺との遭遇は避けている。俺も会いたくないから父の予定はちゃんと調べている筈。


「琴音、男前すぎ」


「うーん、敵認定すると行動が一直線になり易いというか何というか」


一番の敵である婆と遭遇したら声を掛ける前に殴ると思う。一度も話したことは無いし、顔しか知らないが義母さん曰く会えば分かるそうだ。


四人で話しているとあっという間に目的地に着いたな。派手さはない店舗だけど、風格はあるんだよな。


「それでは私は終わり次第、迎えに参ります」


「よろしく。それじゃ美咲、香織。入るよ」


何か店舗を見ている香織が固まっているんだが。ショーウィンドウに飾られているドレスを見ているが値段なんて乗っている筈もない。あれはあくまで飾り用のものだから。


「此処って世界的に有名なお店だって雑誌で見たことあるんだけど」


「へぇ、そうなんだ。私が何か買う時は大体ここだったと思うけど」


「左様ですね。そんな有名なお店にこれでもかと駄目出しをしておられましたね」


デザインが駄目だとか、これが気に入らないとか、殆ど琴音の感性の話だからどうにもならない。何か文句を言わないと収まりが悪いらしいのだが。その気持ちは理解できないな。


「あの頃は盛大に迷惑を掛けていたなぁ。反省はちゃんとしているよ」


「以前のお嬢様は感性がポンコツなのにそれが正しいと思い込んでおりましたから」


今でもそこら辺はポンコツで間違いない。自分一人じゃ変なものを買いそうだと思っているから誰かしらと一緒になるようにしている。


「中は変わっていな」


「「「ようこそ、お越しになられました!」」」


喧しいわ! そして忘れていた。こんな対応にするように言ったのは琴音だったな。従業員全員から挨拶されると流石に五月蠅いと思うわ。


「店長さん、お久しぶりです。それと他のお客さんもいるので対応してくれるのは一人で構いませんよ」


「は、はぁ」


凄い拍子抜けしたような顔をしているな。いつも偉そうにしている人物が普通になったんだからそんな感じにもなるかな。そして他のお客さんも慣れたものだな。


「対応させていただきます、喜代です。本日は宜しくお願いします」


「お願いするのは私の方なんですけどね」


ドレスの選び方は他の人に一任する。俺は選び方を知らないし、変なものを選んで引かれてもしょうがない。


「美咲、久しぶり。その人が噂の人なのよね」


「その通り。今では私の自慢のご主人様です」


「その割には全然敬っていない気がする」


ご主人様と言っても何だろう。犬に餌を与える方の主人なような気がするんだけど。それにしても喜代さんは美咲の知り合いなのだろうか。


「喜代さんは美咲の知り合いなのですか?」


「高校時代の学友です。中々に変化にとんだ人物だったので高校では有名人でしたね、美咲は」


あれか、太ったり、痩せたり、また太って痩せて、果ては表情無くしたとかか。確かにそれだけ変化していたら有名にもなるか。ほぼ変人枠だけど。


「それで本日はどのようなものを」


「パーティーで着るドレスをお願いします。あまり目立つような色合いのものはパスで」


以前みたいに赤とかピンクメインなのは勘弁で。俺の趣味と合わないし、今の琴音に合うとも考えられない。黒一色というのも選択肢としては一番楽なんだけど、多分拒否されるだろうな。


「それでしたら藍色などはいかがでしょうか」


「喜代さんはあまり私の顔色を窺いませんね」


琴音の事を知っている店員はまずは顔色を窺って話して、その色が本人の望んでいる色と合っているか更に顔色を窺うんだけど、喜代さんにはそれがない。


「喜代は最近ここに勤め始めたので以前のお嬢様を知りませんから」


「なるほど。それなら仕方ない」


以前の琴音を知らないなら他の店員の反応から察するしかないだろうけど、今の俺と以前の琴音と違い過ぎて他の店員たちは困惑気味。それで察しろというのが無理か。


「それに私は美咲から今のお客様について事前情報を仕入れておりますから」


「何を勝手に私の事を売っているんだよ」


「お嬢様の為です。私も断腸の思いだったのですよ」


「うん、それはない」


絶対にありえない。お菓子を与えると言われたら普通に俺の事を売りそうだからな。イメージの話だから実際は違うと思うけど。本人のイメージって本当に大事だな。


「あっ、香織。触れる時は私達か店員に断ってから。何かあった時大変だから」


「分かったー」


興味深そうに色々と見て回っているようだけど触れて汚したり、破いたりしたら弁償だからな。一着幾らするか教えた方がいいだろうか。喋ったら引くだろうけど。


「色に関してはお任せします。あとはあまり露出の多くないものがいいですね」


「それでは採寸を行いますのでこちらに」


「うん? サイズは美咲が知っているんじゃ?」


「今のお嬢様の体形は以前と変わられておりますので、新たに計測した方がよろしいかと」


食生活や運動も変わったからその所為かな。多少肉が落ちた印象はあるけど、他の部分はそんなに変わった気がしないんだけど。


「香織も何か着てみる?」


「いやいや、こんなに高そうなのは無理よ。値段については知りたくもないけど」


「別に試着はタダだから構わないはず。そうですよね、喜代さん」


「えぇ、構いません。それでしたら一緒に採寸を行いますので」


「ちょっと! 私も巻き込む気満々でしょ!?」


何を言う。最初からそのつもりで連れて来たんだけど。どうせ俺のドレス姿を撮って、知り合いに送るつもりだろうから道連れだ。


「此処に来た時点で諦めろ」


「わぁー、全然嬉しくない。こんなの着れるなら嬉しい筈なのに」


俺は着ること自体嬉しくない。似合う似合わない以前に着たくない。


「それでは上を脱いでください」


「えっ、ここまでするの?」


「色々と細かいからな。言っておくけど、オーダーメイドだともっと細かいぞ」


一から全部作らないといけないから詳細なデータが必要だと。今回は既存のものでサイズが近いものを選んでもらい、合わない場所を直す程度だろう。


「しかし琴音が恥ずかしがらないとは」


「これに関しては慣れているからな。何回やったか分からないほどに」


毎回オーダーメイドを指定していたから。俺としては既存のもので十分だと思っているのに、琴音は既存のものが嫌だと。かといって自分でデザインする訳じゃないから性質が悪い。


「採寸終わりました。琴音様は以前と随分お変わりになりましたね」


「そんなにですか?」


「えぇ、全体的に細くなった感じでしょうか。身長も少しだけですが伸びたようですね」


「琴音、まだ伸びる?」


うん、それは俺も予想外。コンマ単位で伸びているようだから微妙な差だな。細くなったのは贅肉が多少落ちたせいだろう。


「香織様は何色がお好きでしょうか?」


「琴音に合わせてもらって結構です」


諦めたな、香織。何事も諦めが肝心な時もある。でもドレスを選んだことがないから当然だろう。俺だって何をどう選んだらいいのか分からない。


「それでは琴音様にはこちらを。香織様にはこちらをお勧めします」


俺は藍色の、香織は明るい感じの緑のドレスか。両方に共通しているのは袖がないこと位か。リクエスト通り露出が多いものじゃないけどさ。問題はあるけどね。


「ロンググローブを見繕ってください」


「承りました」


いつもの腕時計を付けている訳にはいかないから。それに代わるアイテムとしてはこれが一番だろう。あとは必要ないかな。俺がアクセサリーを付けるのも何か違う気がするし。


「琴音、髪飾りなんかは付けないの?」


「ティアラとか変なものを選ばないで欲しい」


流石にドレスを着ていて一般的なゴムで髪を縛っているのは似合わないよな。本当に社交界用に全部一新させないといけないか。実費だったら破産どころか借金しないと無理だな。


「じゃあこんなのはどう?」


「うん、シンプルなのは好ましい」


宝石とかは特に付いていないけど、俺にとってはこういうのが好きなんだよ。髪を挟むタイプだけど自己主張も強くないから。流石香織、俺の好みを熟知している。


「何回も一緒に買い物に付き合っているんだから分かるわよ」


「冬服の時も宜しく」


買い物に一緒に行く頻度でいえば香織が一番多いかな。よく何も買わないで終わる場合もあるけど。楽しければ何でもOK。


「お二方、記念撮影をしますのでこちらを向いてください」


「美咲。あんたは何しに来たのかサッパリ分からないんだけど」


「大変楽でした」


そりゃコーディネートは喜代さんが一人でやっていたからな。あとは小物関係を香織が選んでくれた。本当に何もしていないのは美咲だけ。


「それより記念撮影は如何ですか? 今ならお二方のスマホでも撮影しますよ」


「それじゃお願い」


「私もー」


本当に何をしに来たのだろう。取り敢えず当日の準備はこんなものかな。あとはその日にならないと分からない。それと本当なら今日は実家に泊まる予定だったけど、父がいるという事で中止になった。家族戦争が勃発するからね。

何で自宅前で車中泊か漫画喫茶での宿泊を真剣に考えたのか。

家に帰ったら防犯完璧の我が家でした。ちなみに自宅の鍵は未所持。

田舎ですから深夜でも帰ってくると分かっていると鍵は開いているはずだったんですけどね。

一時の気の迷いで二階から侵入しようと考えましたけど断念しました。

二十七時間起きていますからあまり危険なことをする訳にもいきませんから。

この話を詳細に書くと長くなりますので割愛します。両親の世迷言も酷かった……

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