表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/237

63.学園祭の企画

間に合いました。

今年一年ありがとうございました。


テストの結果についてはちょっと順位が落ちた。皆頑張っているなぁと思いながら、何が駄目だったのか後で調べてみた。安定の凡ミス連発だったのにちょっと凹んだ。


「やっぱり喫茶店で確定ですか」


「元からそのつもりだったから変更するのもね。何より即戦力がいるじゃない」


晴海よ、それは俺の事か。確かに喫茶店でバイトはしているが、私一人で全部回している訳じゃないぞ。店長の協力がないと俺だってテンパるんだから。


「それで内容は? 普通の喫茶店ですか? それと出すお菓子とかどうするつもりですか?」


「そこは現役の人の意見を参考にしようかと。コスプレしたい?」


「ノーです」


誰が好き好んでコスプレなんてするか。ニヤニヤとしているクラスメイト達を見ていると俺が着て恥ずかしがるのを期待しているのだろう。コスプレさせられるなら俺は裏方に回るぞ。


「やっぱり出すものはケーキとかが妥当かな?」


「うーん、時間と味を考えると駄目ですね」


「どうして?」


「大体誰が作るんですか? お客さんに振舞うとなるとそれなり以上のものを出さないと失礼ですよ」


「あぁー、買うとか?」


「予算を考えてください。一体何ホール買わないといけないと思っているのですか」


作るといっても本格的なものを作れる人はいないだろう。そうなると見栄えも悪いものが出来る可能性だって高い。それを売るという考えは私にはない。出来上がったものを買うとなっても、それを売れば必然的に単価も高くなる。


「要するに全面的に却下です」


「早速暗礁に乗り上げるとは」


そもそもその企画ですと、生徒会で駄目出しされることは確定する。だって面白みがないじゃないか。それにコスプレと言っても何を着させるつもりだったんだよ。普通に考えてメイドか。


「では出し物から考えましょう。ケーキはなし。簡単に作れるものとしてクッキーやカップケーキなんかを押します」


「なるほど、なるほど」


メモを取っているという事は俺の意見をそのまま採用する気かよ。それに晴海だけでなく、他の人達も考えている辺り、何かアレンジできないか参考にしているのだろう。意欲があるねぇ。


「あとは飲み物ですね。珈琲と紅茶は確定としてどうやって淹れるかです」


「インスタントは流石に不味いよね?」


「当たり前です。ただ物をどうやって準備するかについてですが」


店長に相談してみようかな。予備品があったはずだけど、壊した時のことも考えておかないと。学園側で保証してくれるとは思うけど、後で詳しく聞いておかないといけないな。


「店長に相談してみますが期待しないでください」


「許可貰ったら教えてね。運ぶくらいは手伝うからさ」


「そもそも誰が淹れるんですか? 私もあまり上手い方ではありませんよ」


偶に学園長から貰った豆を挽いたりしていますが、失敗した時のガッカリ感が凄い。だって物自体が高級品なのに、一般品以下になり下がるんだぞ。流石に凹むわ。


「それは誰か得意そうな人に任せるよ。流石に全部を琴音に任せっきりは駄目だから」


「別に私が頑張って裏方を回せばいいと思いますが」


「前面に出すからよろしく」


接客は俺かよ。絶対にこいつ等、俺に何かを着せるつもりだな。それを直前まで明かさないとか、そんな感じだろう。物凄く悪意を感じるが、絶対に着させた後の俺の反応を楽しみにしているだろ。


「もし喫茶店の抽選に負けたらどうするつもりなんですか?」


同じ出し物が多過ぎた場合は会長によるくじ引きで決まるらしい。それか企画としてOKなものから許可が出るだったかな。無理があるものはそもそも抽選さえされないから。


「抽選前に採用されることに賭けるのよ。でも結構難しいよね。面白くしようとすると予算は増えるし」


予算が一定額を超えると自動的に弾かれるからな。だから結構難しい議題でもある。俺はあまり参加する気はない。だって明らかに俺を弄る為に案を立案されている気がするから。


「そんなに私を弄って楽しいですか?」


「メッチャ楽しい!」


いい笑顔でサムズアップすんな! 周りも同意するんじゃない!



「よし、許可しよう」


「会長。内容位確認してください」


放課後に生徒会室で俺のクラスが何をするのかを話したらあっさりと許可しやがったよ、この会長は。中身については一切説明していないというのに。


「琴音が弄られるだけで僕としては面白くていいんだよ」


「あはは、正直者ですね」


「あだだだ!」


ムカついたからアイアンクローをお見舞しておいた。周りからの視線が冷たいが、それは俺に対してではなく会長に対してだと思いたい。段々俺も会長に対して遠慮が無くなって来たよな。


「琴音さんがアドバイザーであれば無茶苦茶な内容ではないと思いますから、私も賛同しますよ」


「無茶苦茶なってどんな内容ですか、木下先輩」


「こういう内容です」


うん、これはあかんな。見せて貰った企画書には教室の内装を大幅に改良して豪華に。執事服にきっちりとした侍女服による接待。出し物も専用のパティシエを雇ってと書かれているが馬鹿じゃないかと。


「予算幾らになるんでしょうね」


「ざっと見て百万は超えるね」


学生がやる学園祭とは思えない額だ。しかも一教室分でこれである。流石にこれは許可されることは無いだろう。何処の馬鹿がこんなものを立案したんだろう。


「問題はあるけど、それをクリアする企画もあるんだよね」


次に会長から見せて貰った企画書にはゴーカートと書かれている。うちの学園に自動車部なんてあったんだ。まだ年齢に到達していないから免許ないのに何をやっているんだ。


「立案者が霜月先輩という時点で不安しかないのですが」


「企画書以上の事をするのが彼女だからね。それで薫。これは採用しても大丈夫な内容かい?」


「問題はないかと。無茶なことをしようとするなら私が全力で阻止します。悪乗りが加速した場合は諦めてください」


それは仕方ない。あの人のノリを止めるのは厳しいというより基本的に無理だからな。当日はそこに近づかないでおこう。絶対に巻き込まれそうだから。


「場所の問題も、この学園ですとクリアできますね」


広い場所なんて幾らでもあるからな、此処は。無駄に広いから。そもそもゴーカートが普通ので終わるとも思えないのだが。変なエンジン積んだりしないよな。


「それじゃ琴音のクラスの中身を聞こうか」


話した内容を伝えたら難しい顔をしてらっしゃる。特に特筆すべき点はないからね。面白さで言えばほぼないともいえる。


「メイド服は定番過ぎてちょっとなぁ」


「何を考えているんですか」


許可とかではなく、コスプレの内容について考えていたのかよ。だから俺はコスプレしたくないと言っているのに。ただ学園祭のおそろしい所は俺一人が反対しても多数決で押し切られること。


「琴音以外、皆仮装するのにやらないとは言わないよね?」


大変いい笑顔である。中身を知らない女性だったらコロリと逝きそうなほどだ。俺からすると大変ムカつく笑顔なんだけど。殴りたいが言っていることは正論なので手の出しようがない。


「私としては私服姿でいいと思います。現在の琴音さんは注目の的ですから」


「僕の楽しみを奪うとは。何か考えがあるのかな? 副会長」


予想外の所から援護が飛んできて、会長が若干不機嫌になっておられる。だがそんなのは関係ない。俺は全力で木下先輩を応援するぞ。


「簡単な事です。琴音さんの私服姿はどのようなものか興味のある人達が多いということです」


「私の私服なんて珍しくもないと思いますけど」


「それは見たことがある人達です。大半の人達は見たことがないでしょう」


よく考えてみると私服姿を見せているのは友人だけだな。それ以外の人達は喫茶店である位だし。まぁあそこの制服も私服と大差ないんだけど。エプロンしているだけだから。


「何より十二本家の方の私服って興味ありませんか?」


「あれ、僕は?」


「会長はいいんです」


他人の私服姿に興味ねぇ。俺としてはあまり関心を持たないかな。着こなしている人や、あまりにもあれな人だったら興味も持つけど。相手が俺だぞ。


「期待されている所、すみません。私の私服は以前に聞いた通りですよ」


「お洒落をしましょう」


「無理です」


即答で断っておく。そもそもやろうにもお洒落するような服を持っていない。だから嫌とかじゃなくて無理なんだよ。それともあれか、学園祭の為に服を買えとか言わないよな。


「ほら、だったら何かしらのコスプレの方がいいじゃないか」


「本人も嫌がっていますから。でしたら私服をこちらで用意する。いえ、見繕ってあげるというのも捨てがたいです」


すみません、それはコスプレさせられるのとどう違うのだろうか。大体それを決めるのはうちのクラスであって、生徒会ではないはずなんだけど。それをこの二人は分かっているのだろうか。


「まぁいいや。仕事しよ」


企画書の提出初日だというのに結構な数が来ているからな。俺が見る範囲で採用できるものと不採用のものを分けていく。最終的な判断は会長が行うから、一次選考みたいなものだ。


「中華喫茶なんてどうかな?」


「出し物がクッキーとかなのに、ミスマッチすぎます」


俺にチャイナドレスを着させるつもりかよ。そもそも何処から用意するのかが謎なんだが。また演劇部から借りてくる気だろうか。クラス分あるのかよ。


「ドレスとかはどうですか?」


「それは私服の範疇に含まれません。そもそも働き辛いです」


あんたらはまだその話をしているのかよ。大体ドレスが私服とか普通に考えてないだろ。すみません、よく考えたら琴音の私服がそれだった。


「私だけのコーディネートですと偏りがありそうですから、他の方も誘ってみましょうか」


「止めてください。それが知られると大変面倒になる人がいるので」


護衛する人が晶さんなら何の問題もない。だけど瑞樹さんが担当の日だけは止めてほしい。絶対に護衛を忘れて接触して来るから。いなくても行きたくない。だってどちらにせよ、着せ替え人形にされるのが分かる。


「というか仕事してください」


「仕方ないなぁ」


「致し方ありませんね」


何で俺が悪いみたいな返事の仕方をするかな!? 明らかに俺が被害者だよな!



試作を書いている場合じゃないと書き上がってから思いました。

本当にギリギリでしたから。

それでは皆様、良いお年を。

来年こそは平穏無事な生活を祈ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ