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52.砂浜での恋バナ

水着回とは何だったんでしょうね。

52.砂浜での恋バナ



海に引き摺りこまれた後にパーカーを脱ぎに一度砂浜に戻った。重いし動き辛くなったからな。脱いだら男護衛達が歓声上げていたが無視である。お返しとばかりに香織に飛びついたりもした。昔の俺ならドロップキックだったな。


「そろそろ昼だな」


流石に時計は持って来ていないが、大分陽が高くなったと思ったから。遊んでいると時間を忘れるのはいつものことだ。


「何で皆、そんなに元気なの……」


「「運動部舐めんな」」


先に体力の限界で脱落していた宮古が苦言を零すが、確かに香織も晴海も学園では運動部に所属しているのだから帰宅部の宮古と体力が違うだろう。


「それに付いていける琴音は何なの……」


「早朝に走っているから」


護衛の人達が凄く嫌そうな顔をしたな。そんなに苦行だったのだろうか。確かに今の時期だと走った後は汗だくになるけど、それだけだし。慣れてしまえば結構楽しくないだろうか。


「逆に宮古は体力無さ過ぎ。私みたいに走ってみたら?」


「無理。絶対に三日坊主で終わると思う」


「俺達もそう思っていた時期があったよなぁ」


最初の琴音に対する印象だったらそう思っていても不思議じゃないだろう。だけど残念でした。すでに半年近く続いているからよ。


「ねぇ、琴音。そろそろ十分な体力も付いたんだからトレーニング辞めない?」


「止めたら体力が落ちる一方なので、止めません」


晶さんの要望はバッサリ断る。付けるのは時間掛かるけど、落ちる時はあっという間なんだよ。だから継続は力なり。そして項垂れる護衛の方々。これからも付き合ってもらうぞ。


「お昼どうする? やっぱり海の家に食べに行く?」


「いえ、自前で用意した」


晴海の誘いを断っておく。だって高いから。海の家で食べるのも風情があっていいんだけど、値段を考えると今回は手を出さない。その為にクーラーボックスを持って来ているのだ。


「私も琴音に頼んであるから」


用意したのはサンドイッチ。使用したパンは昨日喫茶店の残り物を頂いた物だから、香織の頼みも聞くさ。だけど四人分プラスご両親分の用意は流石に出来ない。だから二人分。


「だけどやっぱりフニャフニャになっているな」


クーラーボックスに入れているのだから当たり前なんだよな。暑いからヒンヤリしていていいけど、野菜もちょっと萎びている。色々と失敗だな。


「贅沢言っても仕方ないじゃない。それで晴海と宮古はどうする?」


「買いに行くしかないじゃない。ほら、宮古。いい加減、動け」


「うぃ~」


午前中で体力を使い果たして、午後からどうするんだろうな。日光浴なんてしていたら日焼け止め塗っていてもきつくないだろうか。チラッと主任さんに目配せを送ると頷いてくれた。こちらの意図を察してくれだろう。


「本当に気が利くとか何というか」


「何が?」


サンドイッチに齧り付きながら香織に返す。むぅ、やっぱり味は落ちるなぁ。


「まぁあり得そうなシチュエーションではあるけどさ」


「変なのに絡まられてイベントが台無しになるのも嫌だからな」


「私も晴海も宮古も恋愛にまだ興味はないからね。ナンパされても困るだけだし」


海と言えばお約束だな。それも女子しかいない状況だと尚更だろう。だから護衛の人達の中でも顔が怖い人を選別してこっそりと後ろを付いてもらうことにした。俺もそこまで頼んではいないのだが、主任さんの遊び心だろう。


「そう言えば琴音さん自身は恋愛に興味はないのですか?」


何でこの話に乗ってくるんだよ、主任さん。


「全くありません。むしろ出会う男性が残念過ぎている状況です」


まだ許せるとして会長位だろうか。他はマイナス要素が高すぎて付き合うのも遠慮したい状況だからな。学園長に関しては仕方なく相談に乗っているだけだし。


「そういう主任さんはどうなんですか?」


「私は既婚者です。旦那は専業主夫で、子供もすでに二人います」


勝ち組の人ですか。人生順風満帆で良いことで。爆ぜろとかそんなことは思わないさ。その分、ある二人によって苦労しているみたいだから。帳尻は合っているのだろう。


「主任さんは私に恋愛を勧めるのですか?」


「いや、無理でしょ」


そこで何故に香織が否定する。俺も無理だと思っているから何も言わないが。最近だと男なのか女なのか曖昧になりつつあるから、もしかしたらと考えることもある。だが出会うのが残念系ばかりでは話にならない。


「理由を聞いてもいいですか、香織さん」


「琴音が男性と付き合うビジョンが全く思いつかないからです」


そこで誰かと言わない辺り、変な想像をしてしまうのだが。女性となら俺が付き合うと思っているのか。幾らなんでもないだろうと思いたい。


「そう言えば木下先輩から私が夏休み明けに告白されるかもしれないと言われたな」


「受ける気ある?」


「全く無い」


来るのは構わないが最初から答えは決まっている。全員粉砕してやんよ。


「惨敗記録がどこまで伸びるか見物ね」


「そういう香織は何回断った?」


「数えていないけど、二桁にはいっていないと思う」


「断る理由は?」


「部活しているのに付き合うだけの時間が取れる訳がないじゃない。ただでさえ練習漬けだっていうのに」


意外とちゃんとした理由だった。本気で陸上に取り組んでいるのは知っている。そうでもないと朝に走って、休日にも部活にはいかないだろうな。うちの学園、そこら辺は自由参加だったはずだし。


「何だかんだ言って私達って男っ気がないわよね」


「いるじゃん、幼馴染の男がいる存在が」


俺の前の席にいる男がそれなんだけど。恋愛に発展するかは分からないけどな。幼馴染が確実に恋人へ変わるなんて物語の中だけの話だと思う。


「でもそれって本人達次第だよね」


「宮古が意識していないと全ては無駄と思うけどな」


幾ら邪推した所で本人達にその意識がない限り、そういった関係になることはないだろう。俺と勇実がそんなだったからな。周りから何を言われても関係が変わらなかったんだから。


「琴音に幼馴染とかっていなかったの?」


「いないな。居たら婚約者とかになっていたんじゃないか?」


父親至上主義の琴音が恋愛感情持つはずもないけどな。でも家的にはさっさと何処かに嫁ぐか、婿を入れたいと考えるだろう。だから幼少期から将来を見据えたりしている。


「ということは今も婚約者っていないんだよね?」


「居たら今の生活が出来ているとは思わないな」


「それもそうね」


一人暮らしじゃなくて婚約者の家にいるだろうな。そしてそのまま飼い殺し。お先真っ暗な未来しか見えない。考え方によっては衣食住が何もせずとも手に入るのだから極楽かもしれない。俺は嫌だけど。


「何で私達がいない間に恋バナとかしているのよ」


「何となく流れで。無事の帰還おめでとう」


「正直無事とは言い難かったけど。護衛の人達のおかげで大丈夫だったわ」


やっぱりナンパされたのか。多分声を掛けられてから手助けしてくれたのだろう。最初から横とかにいても威圧的だったりするからな。あの顔だし。


「話を戻すけど、そういうのって全員揃っている時にやるもんじゃない? ねぇ、宮古」


「そうだよね。私達だけ除け者とか酷いよ」


「そういうつもりじゃなかったんだけどな。話の流れで何故かこうなったんだし」


「それに恋バナらしくなかったよね。誰かの恋愛話しているわけでもなかったから」


どちらかといえば俺の事情について説明していたような気がする。現在好きな相手がいる訳でもないから話が発展することもない。いつもの雑談だよ。


「そういう晴海は良い相手いないのか?」


「居たら女のみで海なんかに来ないわよ。その相手自体も誘うから」


それもそうだよな。こちらに許可を取りつつ、可能だったら気になる男子の友達も誘うとか。そして広がる恋愛の輪。そんなお花畑思考じゃないけどな、俺も、彼女らも。


「うちの学園って玉の輿狙えるけど相手がねぇ」


「残念過ぎる?」


「それもそうだけど、それ以外にも理由があるのよ」


否定はしないんだな、晴海よ。俺も発言を撤回する気はないけど。事実だし。だけどそれ以外の理由って何だろう。お嬢様になるのが億劫とかだろうか。


「残念性格の持ち主を除くと草食動物みたいに逃げているのよ。肉食の女子から」


「それは男子も可哀そうだな」


一世一代の玉の輿チャンスだからな。女子が必死になるのも分かる。しかも相手が卒業するまでの間に関係を築かないといけないのだから時間も限られている。そりゃグイグイと押していくな。


「中には女性恐怖症に陥り掛けている男子もいるらしいわよ」


「不憫すぎる……」


何で学園生活送ろうとして女性が怖くなるんだよ。まさか教師からも何かしらされていないだろうな。流石に学園長辺りが気付いて手を打つとは思うけど。


「警戒心が強すぎて下手したら逃げられるのよ。こっちは用事があって伝えようとするだけで」


「多分、操の危機とか色々と危ない目にあったんだろう。全員がそういう訳でもないだろ?」


「確かにそうね。彼の場合が極端なのかも。中には全員に良い顔をする駄目な奴もいるけど」


「周囲から盛大に叩かれるだろうな」


「影でね。流石に御曹司相手に真正面から叩きにいくアホはあまりいないわ」


あまりと言う事は中にはいたんだろうな、そんなアホが。正義感やら嫉妬心で発言したとしても、その責任は自分自身で取らないといけない。相手が御曹司なら卒業後の就職先に圧力を掛ける場合だってあるのだから。まぁやる相手も大概アホだけど。


「それで女子に色々と言われて調子に乗った馬鹿は私に告白してきた」


「それは初耳なんだけど」


「私も」


「私も知らない。クラスの皆も知らないと思うよ」


あまりにも告白される人物が多過ぎて話すら上らなかったのだろうか。まぁその結果がどうなったのかは今を見れば一目瞭然だな。


「君も僕のハーレムに加わらないかいとか馬鹿丸出しだった」


「それは酷い」


それは告白と呼んでいいのだろうか。女性を侮辱しているとしか思えない発言だよな。


「殴らなかった私を褒めてほしい」


「いや、私なら思わず手が出ると思う」


隣の香織も頷いている。宮古は困った顔をしているが多分やらない派だろう。行動力の違いだな。晴海もよく我慢したよ、本当に。


「しかしそんな希少動物みたいなアホが学園にいたとは」


「琴音は結構過保護に扱われているから誰かが誘導していたんじゃない?」


否定はできないな。演劇部の件もあるから。主に手を回しているのは生徒会だけど。だけどそういったことを言われて手を出しても多分大丈夫だと思う。恐らく俺よりも母がキレる。


「何か夏休み明けにそいつから接触してきそうな気がする」


「私の分まで殴っておいて。琴音なら出来る!」


家柄とかを考えると手を出しても問題ないだろうな。また評判が下がる可能性は大いにあるけど。だけど相手の評判も悪いから最悪な結果にはならないだろう。


「機会があれば何かしらしてみる」


あっちから手を出して来たらの話だな。どうせ俺一人で人気のない場所にはいけないし。前回の件があるから。誰が付いてくるかは全く分からない。


「さてそろそろ海に入ろうか」


「えぇ~、もうちょっと休もうよ~」


晴海の提案に宮古が嫌がっているな。昼飯食って少し経ったくらいだから俺ももうちょっと休みたいのだが。また引き摺られるのも嫌だし、誘いに乗っておくか。


「諦めろ。私みたいに引き摺られていくぞ」


「そ、それは嫌だね」


俺も大分海に慣れてきたとはいえ、泳ぎはあまり上達していない。波に攫われるような事態にはならないようにしないと。そうなっても護衛の人達が駆けつけると思うが。ライフセーバーの資格持ってそうだし。


「目一杯遊ぶぞー!」


「「「おぉー!!」」」


「若い子は元気ねぇ」


急に年寄り臭いことを言わないで欲しいんだけど、主任さん。だけど俺は空気を読んで声には出さない。声に出した晶さんが大変な目に合う様子を眺めるだけだ。ご愁傷さま。


Nキーが凹んで戻らない!

絶賛「ん」を生産中です。いい加減にしてほしいです。

手が滑ってヘッドホンが口に直撃したりと踏んだり蹴ったりです。

一番困っているのが現在暖房が止まっていることです。

気温はすでに一桁。外は零下なので凄く冷えます。

エラーを出すと暫く再点火しない瀕死状態なので仕方ないのですけど。

でも頑張って書き上げましたよ!

寒い!

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