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42.ポンコツ現る

明けましておめでとうございます。

本年もどうか宜しくお願い致します。

42.ポンコツ現る



学生にとって何よりも待ち遠しいもの、それが夏季休暇。今日は学園も終業式を執り行っている。俺として助かるのは学園長の話が無駄に長くない点だな。夏真っ盛りの中で長話を聞いているのは苦痛だ。


「如月さんは夏休みどうするの?」


「バイト三昧ですね」


終業式が終わって現在のクラスの中では夏休みをどうやって過ごすかで盛り上がっているな。


「それも学生らしいのかな?」


「そういう相羽さんはどうするのですか?」


「目一杯遊ぶよ。海に行くのは外せないね」


元気がいいことで。俺の予定なんてバイトして、図書館で勉強する位かな。部屋にいたらエアコンの電気代が馬鹿に出来ないからな。なるべく外で過ごそうとは思っている。


「如月さんも行かない?」


「水着持っていませんから」


初期装備に水着は含まれていなかった。琴音が泳げないのは家族も知っていることだからな。それに夏休みではちょっと行きたい場所もあるから予定が合うかどうか分からないんだよ。


「じゃあ後で水着を買いに行こうよ」


「予定が合えば」


社交辞令は言っておこう。自分で水着を選ぶような勇気はない。だけど他人から勧められたものを買うのも気が引ける。総じて買う気がないのだ。


「それでは私はバイト先で打ち合わせをしないといけないので」


夏休み中のシフトについて店長に相談しないといけないからな。毎日バイトはさせて貰えないだろう。むしろ学生ならもっと遊べと突っ込まれそうだな。


「それでは良い夏休みを」


「如月さんもね~」


クラスメイト達や知り合いに挨拶を交わして学園を後にする。佐伯先生だけは花火大会の事に関することを念押ししてきたが忘れる訳がない。隣人も加わっているのだから。


「店長。シフトについて相談なんですが」


「その前に琴音にお客さんだ」


「私にですか?」


誰だろう。学園の人に関してはあまり知られていないけど、学園外の人だとして予測がつかない。俺の交友関係なんてかなり狭いからな。


「あの、どちら様ですか?」


店長から聞いた人は琴音の記憶にも全くない人物だった。分かるのは男性であること、ある程度の年齢に達していること。琴音の父位の年齢だろうか。


「君が如月琴音か?」


「はい、そうですが」


俺の事を平気で呼ぶ人なんだからそれなりの地位にいる人だろう。むしろ普通の人だったら全く分からないんだが。


「私は文月重吾という。小鳥が世話になっている」


あぁ、小鳥の父親かな。渋いおっさんだとばかり思っていたけど。


「どうやってこの場所を?」


「調べればすぐに分かることだ」


確かにな。別に隠しているわけでもないから、誰でも探ればすぐに分かるか。だけど十二本家の、それも小鳥の父親が俺に何の用だろう。


「娘からは君の事をよく聞いている。それはもう学園で君と何を話したのか一から十まで」


そこまでかよ。何で小鳥にそこまで好かれたのか俺は全然分からないんだが。それにしてもそれと父親がやってくるのとどう繋がるんだ。


「最初は娘が君と知り合ったと知って、心臓が張り裂けそうだった」


出会った時はまだ俺が変わった当初だったからな。だから琴音が変わったという話も出回っていなかったのだろう。親からしたら不安にもなるか。


「私の可愛い可愛い小鳥が如月に傷つけられるのではないかと」


そんなこと一切していないから安心しろ。そしてこの人がどんな人物なのか段々と理解して来た。うん、面倒臭い。


「小鳥には親切にして貰っているので害を与えるようなことはしません」


「当たり前だ。私の娘が人様に失礼なことをするはずがない」


文月の欠陥が見えてきたな。今まで子供まで影響を受けていた人にしか会っていなかったが、どうやら文月は大人のみが発症するパターンみたいだな。


「君の事を調べてどうやら当初の人物像から掛け離れた存在であると知って安堵したものだ」


そりゃどうも。


「だが君の事を話す小鳥があまりにも嬉しそうで私は大変心苦しい。いや、あの笑顔が見れるだけでも十分なのだが」


「話が全く進まないので結論をどうぞ」


このままだと娘自慢だけで時間が経過しそうだから、さっさと進めよう。


「君にとって小鳥はどのような存在かね?」


「大切な友達です」


それ以外はない。小鳥が敵に回ることはないだろうし、俺から小鳥へ危害を加えるようなこともしない。大体あの小動物のようなマスコットを虐めるとか良心が痛むぞ。


「娘の事が好きで好きで堪らないという訳ではないのだな?」


「無いです」


即答しておこう。あんたは俺をどの方向に向かわせたいんだよ。連帯的に小鳥もそっちの方に進むことになるんだぞ。あぁ、それを心配しているのか。


「本当だな?」


「本当です」


「本当に本当なんだな?」


「くどいです」


「くどいとは何だ! 私は娘の将来を真剣に考えているんだぞ!」


いきなり激昂するなよ。あれだとずっと確認し続けて終わりが見えなくなる。


「それに父親である貴方が娘の交友関係に口を出していると小鳥が知ったらどう思うでしょうね」


「き、君は私を脅す気か!?」


すいません、バイトの時間がどんどん削られているのでさっさと去ってくれないかな。重要な話じゃないということだけは理解した。


「私は娘の為ならどんなことでもする覚悟があるのだ!」


「あぁ、はいはい」


こういう大人に小鳥もなると思うと将来が不安に思うよ、俺も。まともな十二本家が真面目にいないな。


「覚悟があるのなら私が今、小鳥に連絡を取っても構わないですよね?」


「すまない。勘弁して貰えないだろうか」


即断で俺に頭を下げるなよ。覚悟は何処に行ったのか。


「追加の注文は如何致しましょう?」


「そうだな。珈琲を頼む。それと確認なのだが君が社交界に戻ってくる気はあるか?」


「無いです」


「そうか。娘が残念がっていてな。社交界でも君と一緒に居たいと!」


「カップを握り潰さないでください」


力入れ過ぎて手がプルプルと震えているぞ。備品壊されても弁償はしてくれるだろうが、こっちの気分は悪いからな。


「それにしてもよく私の情報をシャットアウトしていましたね」


琴音が社交界で暴言を吐くなど日常茶飯事だったはず。だけど小鳥はそんなことすらあまり知らなかった。確かに名前を言った時は怯えられたがその位だった。だから俺の事を疑いもしていない。


「娘の教育に悪いことは一切伝わらないようにしている。むしろ全て私が判断してフィルターを掛けている」


それは正確な情報すらも伝わっていないのではないだろうか。過保護だなぁ。


「やり過ぎると嫌われますよ」


「娘が私を嫌いになることなどあり得ない! ないよな?」


何で断言した後に聞いてくるんだよ。不安に思っていることがあるということは、小鳥に何かしら言われた経緯があるということだろう。もう手遅れだな。


「では直接聞いてみましょうか?」


「止めてくれ!」


スマホをチラリと見せると途端に慌てたぞ。もう、この人の扱い方が分かったわ。十二本家のお偉いさんだとは全くと言っていいほど思えない。


「元々貴方は何をしに来たのですか?」


「娘が気になる存在を私が確認しない訳にはいかないだろ。私が認めなれば排除する気もあった」


「私は貴方と同じ十二本家の人間ですよ」


「それに何の問題がある! 娘の為なら私は何だってするぞ!」


親バカもここまでくると重症だな。いや、重病か。多分だが誰かしらのストッパー的な存在がいるのだろう。妻か、または親か。そうでもないと暴走し続けるだろ、この人。


「それでは問題です。貴方が問題行動を起こすと家庭はどうなるでしょう。そして小鳥の将来はどうなるのでしょう」


「ぬぐ」


「そのことをよく考えて行動することを推奨します。娘の事を本当に心配しているのであれば」


自分一人の自己満足で行動して、被害が本人だけに来るのであれば何の問題もない。だけどこの人が問題を起こせば連帯責任で家族にも被害が行くのは確定的だ。如月家みたいになるのは誰だって望んでいないだろ。


「貴方、もう十分でしょう。お付き合いする方として小鳥に相応しい人物ではないでしょうか」


「えっと、小鳥のお母さんですか?」


「そうです。お初にお目に掛かりますね、如月琴音さん」


まさか父親の後ろの席に母親が座っているとは思わなかったよ。何で他人のように振舞っていたんだ。あぁ、熱くなっている父親と一緒に見られたくなかったのか。


「まさかご両親揃ってやってくるとは思いませんでした」


「このポンコツを止める役目の人が必要ですから」


妻にポンコツ呼ばわりされる旦那ってどうなんだよ。そして旦那も何も言わない辺り、言われ慣れているんだろう。


「私の娘とお付き合いしてくれてありがとうございます。あの子はあれで人見知りですから」


いえ、全然そんなことないと思うのだが。子犬のように擦り寄ってくるタイプだと思うよ。実際今がそんな状態だから。


「あまりにも家で貴女の話をするものだから夫が嫉妬してしまって」


「如月の話ばかりで私の心臓は張り裂けそうだった。ただ娘の話と私達の知っている如月で齟齬があり過ぎてな」


確かにその頃の話だとそう思われても仕方ないか。それから情報を集めたのなら去年との格差は浮き彫りになるしな。


「今まではお父さんと私に接してくれていたのに最近では避けられているような気がするのだ」


「実際避けていますから。如月さんはどうしてそうなったのか分かりますよね?」


「ウザいと思ったんじゃないですか?」


妻の方がザックリと旦那をぶった切っているので俺も遠慮せずに斬っておこう。屍は誰かが拾ってくれるだろ。


「そ、そんなことを可愛い可愛い小鳥が考えている訳ないじゃないか」


滅茶苦茶動揺している時点で説得力も何もあったもんじゃないぞ。その後ろで優雅に紅茶を飲んでいる奥さんも異様だな。普通、正体をばらしたら旦那の前に移動するものじゃないのか。


「というか本当に何をしに来たんですか?」


「貴女を見に来ただけですよ。それは本当です。ポンコツは何か考えがあったのかもしれないけど」


「いえ、何も考えていないと思いますよ」


誘拐とか、二度と小鳥に会せないとか物騒な考えは持っていそうだけどな。だけどそれについては先程釘を刺しておいた。娘のことを考えて行動するのであれば、その考えで行動したらどうなるのかは理解しているだろう。


「あっ、紅茶とケーキのセットいいかしら?」


「承りました。少々お待ちください」


注文してくれるのならいいか。旦那は下向いてブツブツと何か言っているが気にしない方向で行こう。話しかけたら巻き込まれるのは分かっているからな。


「結局、何だったんだ?」


「さぁ? それでシフトなんですけど定休日入れて三日間の休みでどうですか?」


「そこら辺にしておくか。予定とかはないのか?」


「ちょっと街から出る予定は立てましたが他には特に」


「友達と何処かに行く予定とかはないのか?」


「あるにはありますけどまだ先ですから」


花火大会もイベントだからな。決してボッチで寂しい夏休みを送るわけではないと断言しておこう。メインはバイトであるのに変わりはないが。


「しかし琴音関係の人物って変わった人が多いな」


「それは否定しておきます。別に私が引き寄せているわけではないですよ」


変人ばかり集める特異性って何だよ。でも否定しておいて何だけど納得できてしまう。十二本家の人は基本的に欠陥品だし、それ以外でも変態が居たりと。


「うん、気にしないでおこう」


考えれば考えるほどドツボに嵌りそうだからな。琴音の所為なのか、俺の所為なのかは判断付かないが両方の可能性だってある。


「こちらが注文のお品になります」


「ありがとう。今度、私達の家に遊びに来てくれないかしら。娘も喜ぶから」


「私は断じて反対だ! 夏休みは私が小鳥の相手をするんだ!」


「はいはい。ポンコツは黙っていましょうねぇ」


おい、後ろから首を絞めるなよ。片手で首を絞める握力にも驚きだが、旦那の顔がどんどん青くなっているのに全く気にしない奥さんが怖いわ。


「そろそろ離さないと不味いですよ」


「大丈夫よ。慣れているから」


うちの母親もこれ位に父を扱えるのであれば何の苦労もないんだけどな。うん、無理な話か。

何事もなく年が越せると思った時期がありました。

ですがあまりにも地味ネタなのでダイジェストでお送りいたします。

30日、たこ焼き食べて口内火傷。何を食べても痛かったです。1コンボ。

31日、豪華な晩御飯で一番最初に自身の舌を思いっきり噛む。血の味しかしません。ついでに2コンボ。

1日、起きたら足、脇腹、腕と三か所同時に吊って悶絶。三重苦です。これで3コンボ。

今年は小技で攻めてくるかと思いました。地味過ぎて扱いに困るんですけどね!

むしろ年を跨いでまで攻勢が続くなんて想定外です。

年が明けても筆者は平常運行みたいです。勘弁して欲しいです。

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