表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/237

04.お嬢様、捥ぎ取る為に奮闘する

あまりの読者様の多さに珈琲吹いて咽ました。

ナニガアッタンダ……

04.お嬢様、捥ぎ取る為に奮闘する



寝ると言った茜さんを見送ってのんびりと珈琲を飲みながら時間になってから部屋を出た。学園まで歩いて15分位掛かったから丁度いい運動といった感じだな。

そうだ、香織さんに連絡しておかないと。今学園に着きました。これから職員室に向かいます。とこれでいいだろう。練習中ならメールの方がいいだろ。

さてドアをノックして。


「失礼します」


やっぱりまだ春休みの最中だから職員の数も多くないな。適当に声を掛けるか。どうせ2学年の担任なんてまだ分からないからな。えっと、一番近い人は。


「あの、今よろしいでしょうか?」


「春休みに来るなんて何かあったのか?」


なーんか、見たことある男性教諭。とそういえば1学年の時の担任だな。あの時は大変ご迷惑をおかけしました。というか何でそんな人に声を掛けるかな俺も。明らかに面倒なことになるよな。

顔もいいし教え方も上手いので生徒達には人気ある人だけど。


「アルバイトの申請書を貰いたくて」


「そういうのは春休みが始まる前に許可をもらうものだろう」


「そうなんですが諸事情によりバイトをしないと生活が苦しくて」


「どんな事情だよ。あぁ、一応名前を教えてくれ。どうにも見覚えが無くてな」


「1学年で一緒だったのですが。如月琴音です」


「あぁ、如月な。確かに一緒だったな。……は?お前が如月?」


「はい、如月です」


ポカーンとした顔で見られている。まぁ信じられないよな。普通に見れば性格が180度変わったようなもんだし。だがこれで普通に見て貰えないのが琴音なのだ。

先生が険しい表情で睨んできたことから多分悪巧みしているんじゃないかと疑っているのだろう。


「別に何も企んでいません。本当に生活の為にアルバイトをしたいだけです」


「信じられないな。お前は良家のお嬢様だろ。バイトをする理由にならない。それとお前が去年何をしたのか思い出せ」


授業の妨害、気に入らない子への嫌がらせ、人気男子学生への迷惑な絡み。うん、本当に屑だな。あはは、信用される気がしねー。


「私自身の非は認めます。ですからその行いを悔い改めるために私は変わります」


「信じられる訳がないだろ」


「あぁ、やっぱりこうなっているか」


「あっ、香織さん」


救世主キタァー!流石に味方がいない状態だとこの場を切り抜けられる気がしない。というか何で申請書を貰いに来ただけでこんなことになっているのだろう。琴音は存在自体が迷惑なのだろうか。

そう考えると可哀そうだな。


「近藤先生。彼女が働く場所はうちの喫茶店なので大丈夫です。両親からの許可も貰っています」


「橘、本当にいいのか?よく考えるんだ。相手はあの如月だぞ」


本人を前にして近藤先生は堂々と言い切るな。俺としては何も言い返せないから成り行きに任せるしかないのだが。マジで頼みます、香織さん!


「すでに両親は雇う気満々です。ちなみに昨日一緒に晩御飯食べたんですが本当にあの如月かと思いました。ハッキリ言って別人です」


「まぁ今の状態を見たまんまで評価するとそう思えるが」


「それに如月さんは一人暮らしを開始して切実に色々と考えていますよ」


「はぁ!?如月が一人暮らしだと!?」


皆同じような反応するな。いや、俺も琴音が一人暮らし出来るかと聞かれたらNOと答えるな。あんな我儘お嬢様が一人暮らし開始したら一日として持たないぞ。


「先生、私に機会をください。真面目にアルバイトをしないと参考書とかに回すお金もないんです」


「何があったんだよ一体……。如月、お前が参考書とか言っても信用ないぞ」


「そんなのは知っています。ですが私の成績を先生なら知っていますよね」


「あぁ、知っている。あの調子でいったら近い内に留年するだろうな」


一応言っておくが琴音の頭が残念なのではない。行いが馬鹿なだけなのだ。まともに授業を受けずに、家でも勉強をしない。そんな状態でいい成績を出せるはずがない。

なのに悪いのは教えている教師だと不平不満を言っているのだから教師達からの信頼はない。


「アルバイトをして成績が低かったでは意味がありません。勉学も両立させますのでどうか宜しくお願いします」


「あの如月が頭を下げるとは。分かった、今回は申請書を出す。だがバイト先で問題起こしたら以後は禁止にするからな。橘も何かあったらすぐに言えよ」


「ありがとうございます近藤先生。それに香織さんもありがとうございます」


「別にあんたの為じゃないわよ。両親の為に仕方なく協力してやっているだけなんだから」


ツンデレが可愛い。若干頬を赤らめているから照れ隠しなのが丸分かりなのだ。お店に迷惑を掛けないようにはするけど迷惑を掛けてくる客については容赦する気はない。

前世で何故か男から尻を撫でられた時があったが、その時は反射的に蹴り飛ばしたな。誰からも叱られなかったから合意という事だろう。


「そういや一人暮らしということは住所変更とか必要だろ。こっちの変更届も書いて後日持ってこい」


「分かりました。あの申請書の親族同意欄は絶対条件ですか?」


「当たり前だろ。そこにサインと印鑑が無ければ許可は下りないぞ」


ヤバいな。仮にもお嬢様がバイトするなんてあの家族が許可するかな。でもあの金額で一人暮らしさせるのだからバイトするのも考えているだろう。そうでなければ仕送りの額が少ない。

ていうか二日連続で実家に連絡か。気が重いな。


「それも含めての社会勉強だと思え。むしろ家族から同意貰えない状態で問題起こしてみろ。誰が尻拭いするんだ」


「そうですね。まずは両親に相談してみます」


「何か言われたら父さんにでも言いなさい。相談位なら受けてくれるわよ」


「お前らって1学年で接点なかったよな。何で仲良くなってんだ?」


「同じ釜の飯を食った仲だからでしょうか。昨日のカレーは美味しかったです」


「……近藤先生。この顔見て同一人物だと思えますか?」


「……別人だな。本当に何があった」


何だよ、あの味を思い出して幸せそうな顔したら駄目かよ。お金が無いのだから食事に対する思いも強いんだぞ。それで前世は毒殺されたのだが。というかトラウマにならなかったのも不思議だな。

なっていたら食えずに飢え死にしていたかもしれないが。取り敢えず用事も終わったから学園から出るか。


「それでは香織さん、私は店長からサインを貰いに行きますので」


「両親の説得頑張りなさいよ。許可貰えなかったら私が何のために口添えしたのか分からないんだから」


「あはは、頑張ります」


「あと、私のことは香織でいいわよ。別に敬語使わなくてもいい」


「分かりました、香織。敬語はもうちょっと待ってください。まだ折り合いがついていないので。主に私の気持ちですけど」


思いっきり男性口調で喋ったら引かれるだろうなと思っている。こういうのはちゃんと信頼関係が出来上がってからじゃないとと考えていたら香織に睨まれた。

何故?


「私はあんたを信じようとしている。なのにあんたは私を信じられないの?」


それを言われると弱いな。まぁなるようにしかならないか。ここで下手に遠慮しても信頼度が下がるだけだろうし、後先考えていられる状態じゃないからな。


「分かった。私の負けだ。口調はこの通り乱暴になるがいいのか?」


「う、うん。いいけど何かあんたのイメージがどんどん崩れていくわね。逆に顔と合わせて凛々しく思えるわ」


「まぁ顔はいいからな。あと名前で呼んでくれ。ここまでやっていて他人行儀なのもどうかと思うぞ」


「分かったわよ、琴音。これでいいんでしょ!」


「そんなヤケクソに言わなくてもいいんだが。それじゃ私は店に行く」


「私はまだ部活があるから。ちゃんと手伝ってきなさいよ!」


「あいよー」


といってもまだ申請が受理されていないから正式には手伝えないんだがな。まぁ裏方で頑張っていればばれないだろう。調理師免許がないから客に飯は出せないが。

またせっせと皿洗いでもするか。




「香織、さっきの人と知り合い?」


「うん。うちの新しい従業員」


「へぇ、見ない顔ね。あぁいった美人なら噂にでもなっていそうなのに」


「……噂はあるんだけどね」


「何か言った?」


「ううん、何でもない。さぁ頑張るぞぉー」




さてお店に着いたはいいがお昼前だから結構混んでいた。今店長に話しかけても邪魔にしかならないからまた後で来ようかなと思ったら店長から裏に回れと視線で訴えられた。

制服姿なのにいいのだろうか。昨日、ばれなければいいだろとか言っていたからあまり気にしないのだろう。


「沙織さん、何か手伝うことありますか?」


「それじゃ皿洗い頼む。その恰好じゃ表に出れないでしょ」


ということでエプロン着けてせっせと皿洗い開始である。偶に出来上がった料理を店長に渡しながらひたすら皿を洗っていく。あれ、そういえばここまで手伝ってもバイト代ないんだよな。

まぁいいか。仕事に慣れるための研修だと思えばいいだろう。


「悪いな。正式採用前に手伝わせて」


「お昼食べさせて貰ったのでいいですよ。あっ、店長。これにサインお願いします」


「あいよ。しかし家族から許可取れるのか?」


「それは今から連絡してみます。それ次第ですね」


さて早速連絡してみますか。相変らず実家以外の連絡先が知らんから咲子さんにまずは話してみよう。それしか手が無いからな。


『如月家です。どちらさまでしょうか』


「連日のご連絡申し訳ありません。お母様は御在宅でしょうか?」


『まずは私がご用件をお伺い致します』


「そうですか。それでは用件ですが、アルバイトの許可を下さい」


『……貴女は誰ですか?』


ですよねー。頑張ること大嫌いのあの馬鹿お嬢様が進んで仕事しようとは考えないだろうな。違和感というレベルではなく別人と考えるのが普通だろうなぁ。それだけイメージが悪いのだが。

しかしここで頑張らねばバイトが出来ない。


「今まで大変ご迷惑をお掛けしていた如月琴音です」


『本当に、本当ですか?』


「本当です。ですから許可を貰えないでしょうか?」


『お、奥様ー!』


あっ、咲子さんが混乱している。というか母さん居たのかよ。さっさと出てほしかったけど警戒されているんだろうなぁ。


『代わりました、音葉です』


「お久しぶりですお母様。咲子さんから事情はお聞きになったでしょうか?」


『何を企んでいるの?』


「特に何も。しいて言えば仕送りの額的にバイトをしないと日常生活に支障をきたします」


『それは仕送りの額を増やせと言う事?幾ら欲しいの?』


「いえ、それはいいですからアルバイトの許可を下さい」


一人暮らしの意味をこの一家は分かっているのだろうか。仕送りを増やしたら何のために屋敷から追い出したんだよ。更生させるためだろうに至れり尽くせりにしてどうすんだよ。

それにこれ以上仕送りを貰って如月家に頭が上がらなくなるのも嫌だ。


『悪いのだけれど貴女のことを確認させてもらうわ。咲子をそちらに送るから居場所を教えなさい』


「分かりました。場所なのですが商店街に近い場所にありますアトリエルという喫茶店です」


『分かりました。すぐに咲子を向かわせます』


思いっきり偽物だと思われてるな。偽物だったらもっとうまく似せると思うんだけどなぁ。それだけ信じられないのだろう。現実を見てほしいものだ、全く。


「琴音、お前どれだけ変わったんだよ……」


「うーん、家族や教諭の反応から別人だと思われるレベルですね」


「変わる前のお前が凄い怖いんだが」


「今はまともなので大丈夫ですよ」


家族にとっては今が異常なんだがな。だが俺でも琴音がまともだとは思えん。さて咲子さんが来るまでもうひと頑張りしますか。せっせと皿洗い。で咲子さんが来る前に終わってしまった。

店長に聞いてみれば昼間のラッシュを抜けると比較的ゆっくり出来る程度の仕事量になるらしい。まぁここからは一服しに来る人とかおやつを食べに来る人がメインになるのだろう。


「失礼します。私、如月家の使用人であります咲子といいます。琴音お嬢様はいらっしゃいますか?」


「あぁ、あんたが琴音の。おーい、琴音。お待ちの人が来たぞ」


「はーい。あっ、咲子さんお久しぶりです。それでこれが申請書なんですが」


「どちら様ですか?」


うわぁ、真顔で言われたわ。流石の俺も頬が引き攣っている。店長も俺と同じで笑顔が引き攣っているぞ。それで咲子さんも自分の失言に気づいたのだろう。結構慌ててる。

それにしても一体いつまでこの反応が続くのだろう。ていうか咲子さんは屋敷でスッピンを見ていたはずだよな。


「何かその反応にも慣れたのでいいです。それでお母様は何と?あっ、これ店長からサービスだそうです」


「本当にお変わりになられて。店長さん、琴音お嬢様はお役に立ちますか?」


「今の所、裏方では助かっているな。正式採用で表で接客してもらうつもりだが、この様子だと問題ないだろ」


「分かりました。奥様はお店にご迷惑をお掛けしないようであれば許可するとのことでした」


「それでしたら申請書を咲子さんに渡せばいいですね。あの、出来るだけ早めにお願いできないでしょうか」


「いえ、許可は貰っておりますので私がここで代わりにサインします。……これでいいでしょうか?」


わーい、これでアルバイトが出来る。部屋に居てもやることないし、居ても暇潰ししていたら電気代や娯楽費で出費してしまう。あとで図書館を探しておかないと。

あそこなら自習したり、本を読んだりと時間潰しとしては最良の場所だろう。


「琴音お嬢様はこの後のご予定は?」


「スーパー巡りです」


「はい?」


「値段の把握、タイムサービスの時間帯把握が主な目的ですね。あと100円ショップで小物を揃えます」


「咲子さん、こいつのバイタリティの強さは生まれた時からか?」


「い、いえ。私もこのような琴音お嬢様は初めて見ました」


節約生活だと必須な情報なんだけどな。いかに安く質のいいものを揃えるかで食生活が格段に変わってくるのだから。尚且つ私一人の食事じゃないのだから責任もある。

食べて貰うなら美味しいと言って貰えるようなものを作らないと。


「琴音、もう上がってもいいぞ。まだ正式採用前だからな」


「分かりました。咲子さん、お母様にもよろしく伝えてください」


「琴音お嬢様もお気を付けて」


さてさっさとスーパーに行かないとタイムセールが始まっているかもしれない。まだ初期装備の食材が残っているとはいえ情報だけでも仕入れないと。さぁ忙しくなってきたぞ。




「奥様、私は疲れているかもしれません」


「何を言っているの。それで琴音の様子はどうだったの?」


「本人でしたが別人でした」


「……どういうことなの?」


「いえ的確に表現するにはこの言葉しかないです」


「どういうことなのよ……」


如月家の面々が更に混乱したのは言うまでもなかった。

バイトの申請書とかは私が勝手に考えた結果です。

実際申請書なんて貰った経験すらありませんからね。

あと琴音は敬語がデフォです。そうしないとボロが出そうだと理由です。

というかブックマークありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 本人でしたが別人でしたwww 名言です。゜(゜ノ∀`゜)゜。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ