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35.球技大会?

35.球技大会?



風を切って今まで以上の速度を出しながらやっと本部に到着した。急いだ理由はもちろん昼休憩が短くなっているから。真面目にあの子は何をやりたかったのか。明らかに評判落としただろ。


「スコアを持ってきました」


「意外と時間が掛かったみたいですが、何かあったのですか?」


「ちょっと問題が発生しただけです。競技が長引いたのもその所為ですね」


一応生徒会権限を行使したので待っていた木下先輩に詳細を報告しておく。話を聞いている木下先輩の表情が段々と険しいものに変わっていくがそんなに気にすることがあっただろうか。


「琴音さん、シャツが汗で透けて下着が見えていますよ」


表情険しくしていたのはそっちですか。そういや、風を入れるために胸元開けていたな。この位なら恥ずかしくないので、普通に胸元を元に戻す。それに見えていたのは少しだけだから。


「まさか試合もその状態で行っていたのではないですよね?」


「木下先輩。笑顔が怖いとか器用な事、よく出来ますね」


「慣れれば琴音さんも出来ますよ。それと私の質問に答えていませんよ」


「先程の状態は自転車に乗ってからですよ」


「全く、あまり油断しないでください。それと保健室に行きますよ」


「この位なら一人で行けますよ」


「先程の話を聞いていれば、現在琴音さんを一人に出来ません」


さっきの子は学園長が連れて行ったから何かをしてくる可能性はないだろう。問題があるとすれば取り巻きの子達だな。あの子みたいに堂々と行動を起こすほど度胸は無いと思うが。


「大丈夫だと思いますけど。それに木下先輩だってお昼の時間が削れてしまいますよ」


「構いません。琴音さんだって同じなんですから。折角なので一緒に食べましょう」


「なら私も一緒に取る」


「小梢さん、何処から出てきました?」


「ずっといたよ。誰も気付かないのはいつものこと」


相変らずと言うか何と言うか。本人が全然気にしていないのがまた凄いんだよな。普通ならコンプレックス位に思っても不思議じゃないのに。


「分かりました。ならさっさと行って、お昼にしましょう」


こうやって話している間にも昼休憩の時間は過ぎて行く。保健室が混んでないといいのだが。こういった体育会系のイベントの時は決まって怪我人やサボりで込んでいるんだよな。


「佐伯先生、救急箱借りますね」


「勝手に使わないの。怪我した所を見せなさい」


忙しいだろうと思って勝手にやろうとしたら注意された。よくよく見れば保健室に他の生徒の姿がない。佐伯先生もお昼を取っている最中みたいで特に忙しいようには見えないな。


「意外と人がいないですね」


「昼休憩中だからよ。午前中はそれなりにやってきたわよ。今年は皆、アグレッシブに取り組んでいるみたいね」


どれだけ賞品狙いで頑張っているんだよ。佐伯先生の言葉に一緒に付いてきた木下先輩と小梢さんも何とも言えない表情をしている。こんな状態になるなんて想像してなかったからな。


「消毒薬塗るから染みるわよ」


「うぅ、染みる」


「だから言ったでしょう。あとは絆創膏貼ってお終い。以前の怪我に比べたら軽いものでしょう」


「あれと比べるのは違うと思います」


まともに足が地面に付かないレベルの怪我なんて簡単にしたくはないぞ。今回の怪我は俺からしたら怪我とも言えないレベルだ。別にほっといても治る程度だから。


「それにしても随分と生徒会と仲良くなったわね」


「臨時とはいえ生徒会役員ですから」


「去年の貴女を知っている身としては何か納得できないんだけどね。それは貴女も分かっていることだと思うけど」


「一番納得していないのが私だと思います。去年の事を考えるとまかり間違っても入れるはずがありませんから」


そして生徒会に入った原因は絶対に学園長だ。あの人が木下先輩に俺を差し出さなかったら会長と接触することもなかったと思いたい。あの会長、何だかんだとフットワーク軽いから普通に会いに来そうだな。


「でも琴音さん、生徒会に慣れましたよね」


「あの会長を相手にしていたら嫌でも慣れます」


緊張感とか感じる前に突っ込みから入るんだぞ。今だと会長に敬意とか全然感じない。最近は面倒臭さの方が跳ね上がっているな。ウザさに関してはある人物を抜くことは無いだろう。


「今の如月さんなら入れるの分かるんだけど。去年の私の苦労は何って思うじゃない」


「ご迷惑をお掛けしました」


「そう思うのならちょーと、私のお願いを聞いてくれないかしら」


お酒関係は勘弁して欲しいのだが。俺の貯蓄が全部吹っ飛ぶ勢いで飲まれるのは確定的だから。それ以外の頼みならいいけど一体何だろう。木下先輩と小梢さんから少し離された。


「八月に花火大会があるじゃない。その時如月さんに料理をお願いしたいんだけど」


「お弁当的なものですか?」


場所取りした所に弁当の配達だろうか。別にその位なら構わないけど。佐伯先生が行くということは茜さんも誘われそうだし、必然的に俺も参加させられるだろうからな。


「私としてはおつまみね。それに花火会場じゃなくていつもは茜の部屋で花火を見ているのよ」


「見えるのですか?」


「それがあそこって結構見えるのよ。屋台とか遠いから毎度買い出しの惣菜をつまみにしているの。茜の料理の腕があれだから」


「なるほど。でしたら私の部屋でも構わないと思いますよ。茜さんなら私の部屋で見ると思いますから」


「どれだけ入り浸っているのよ」


俺の部屋で寝ようとするくらいだからな。旦那さんも何だかんだと茜さんの世話を俺に押し付けているのではないだろうかと最近は邪推している。


「でも八月の予定を今話すのは早くないですか?」


「今の内に貴方を抑えておかないと予定が埋められそうだからよ。ほら、そっちの人達とかに」


あぁ、木下先輩が有力といった所かな。この間の撮影会で花火大会にはいつも行っているとか言っていたし。誘われるかもしれないが、多分会長もセットで付いてきそうだ。


「ではその話はまた後日で。私達、まだお昼取っていないので」


「先に言っておくけど枝豆大量に宜しくね」


早まったかもしれないと思ったのはこの時だったな。材料費どうしよう。枝豆だけじゃなくて他の品目も要求されるだろうし、今更材料費お願いしますとか言えないよな。


「さて何処でお昼を取りましょうか」


「生徒会室でいいと思います。場所を探している間に時間が無くなりそうですから」


気を取り直して昼飯にしよう。今悔やんだとしても行動を起こすのは八月だ。それまでに色々と考えておく必要性はあるだろうが、急ぐ必要はないだろう。


「先程、佐伯先生とはどんなお話をしていたのですか?」


「ちょっとしたお願いですよ」


昼食を取り終えた後に木下先輩に聞かれたが適当に濁しておいた。夏休みに生徒の部屋にやってくるなど言えないからな。木下先輩や小梢さんのことは信用しているが一応な。


「花火大会がどうのと聞こえたのですが」


やけに気にしているが何でだろう。それによくあの小声での密談が聞こえていたな。


「どうしても言わないといけないですか?」


「大変気になりますので。特に花火大会が関連しているのであれば」


どれだけ花火大会が好きなんだよ。そしてこれは話すまで引きそうにないな。小梢さんは我関せずでお茶を飲んでいる。対照的過ぎるだろ。


「花火大会で会う約束をしただけです」


「佐伯先生と個人的な繋がりでもあるのですか?」


「隣人が佐伯先生の親友なのです。その繋がりですね」


「ちなみに観覧場所は何処ですか?」


「……私の部屋です」


言いたくはなかったけど、木下先輩の眼力に負けた。何か怖い。何が怖いのかよく分からないけど今までと迫力が違う気がする。


「良く見えるのですか?」


「それは分かりません。私もあの部屋で花火を見たことはありませんから」


「私もご一緒していいですか?」


「勘弁してください」


先生が来る場所に更に生徒まで来るのは流石に不味いだろ。俺が言える立場じゃないのは分かっている。分かっているからこそ飲んべーの巣窟に犠牲者を入れたくはない。


「この話を学園長に持っていってもいいのですよ?」


「木下先輩、容赦ないですね。というかキャラが変わっていますよ」


まさか花火大会でここまで手段を選ばない人になるとは思わなかった。そして学園長に話すのだけは止めてくれ。学園長と佐伯先生の関係について知らないであろうが、巻き込まれる俺が悲惨なことになる。あの人まで俺の部屋に来たら不味いだろ。


「でも私の部屋で見る場合は屋台とか無理だと思いますよ」


「それは構いません。私の目的のメインは花火ですから」


そうですか。あとは何か理由ないかな。主に木下先輩が来れないように出来る理由。


「会長が一緒の場合は無理ですよ」


「追っ払います」


全然諦めてくれない。それに一蹴された会長も可哀そうだな。日頃の行いが悪い所為だと思っておこう。うーん、もう諦めよう。これ以上話が長引いても泥沼化しそうだし。


「では条件で私の手伝いをお願いします」


「手伝いとは?」


「料理の作成ですね。他にも来る人がいるのでその為ですね。作るものは主におつまみ関係になりそうですけど」


「その位でしたら大丈夫ですね。承りました。小梢さんはどうしますか?」


「多分MMOのイベントがあると思うから無理」


ハマっているな。夏休み中は家から出ないのではないだろうか。過ごし方は人それぞれだが不健康そうだなぁ。


「それでは後で琴音さんのお部屋を教えてくださいね」


「分かりました。折角だから私の部屋で賞品の打ち合わせをしますか?」


「それは助かりますね。生徒会室ですと会長が煩わしいですから」


それについては同意する。こっちとしては普通の物を作りたいのに会長が一緒だととんでもないものを要求されそうだからな。ただ材料については会長に頼まないといけないんだが。


「しかし今回の球技大会は盛り上がっていると聞いたんですけど、そんなに去年と違うのですか?」


「やっぱり何処かはやる気ない部分が見えてくるのですが、今年はその部分があまり見えないです」


ちなみに俺が去年の球技大会を知らないのは琴音が思いっきりサボっていたからだ。お陰様で内容自体を全く知らない状態でやっているのだが、生徒会の情報で把握は出来た。他のイベントに関しても似たようなものだ。


「一番人気の賞品は何だと思いますか?」


「あまり認めたくないのですが、やはり写真集でしょうね。食事会については上級生位しか知らないことですから」


だよなぁ。何でそこまで人気が出たのか分からないが今回の立役者になっている。賞品だけでここまでやる気が変わるんだから人って現金だ。


「これで不味いもの作ったらヤバいですね」


「ガッカリさせないものを作らないといけないですね。責任重大です」


球技大会が終わっても、俺と木下先輩に関しては全部が終わった訳ではない。突発的に思いついた会長の横暴で、何でプレッシャーを感じないといけないのやら。


「それではそろそろ休憩時間が終わりそうですから戻りましょうか。琴音さんは怪我をしているので午後は無理しなくていいですよ」


俺に付き合わせた所為で休憩時間短くなってしまって申し訳ない。それにこんな怪我くらい怪我の内に入らないぞ。


「でも午後って私達は何をするのですか?」


殆どの予選会は終わって後は決勝リーグやる位だよな。うちのクラスは全部の競技で予選敗退しているから助っ人もないし。どう考えても暇だよな。


「確かに回収する数も減りましたから閉会の準備位ですね。もし良ければ決勝リーグを見てきてもいいですよ」


その位しかやることないのか。楽が出来ると言われていたが蓋を開けてみれば体力仕事の結構過酷なものだったな。下手したら競技参加よりも大変だったかもしれない。


そして午後の競技と言うか球技大会全体が終わった。優勝したのは三年三組。優勝賞品の写真集と食事招待券を高らかと掲げていたのは滑稽に映ったな。そして教室に戻り、ホームルームが終了してから上の階から絶叫が聞こえてきた。


「「「何で水着写真がないんだよ!!」」」


知らん。

球技大会関係ない話となりました。

バッサリとカットです。

今回の話を書いていて香織の立ち位置に木下先輩が入っているような気がしてきました。

香織、不憫な子……

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