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25.不穏な気配は何処へ

筆者、迷走中。

改訂前を投稿してしまっていたので、今回は時間関係なく投稿させて頂きます。

25.不穏な気配は何処へ



朝は特に問題はなかった。登校しても俺を見て逃げていくようなこともなかった。昨日の帰りの話だから、まだ噂が流れていないのだろうと思うのだが、この後が不安だよな。


「ねぇねぇ、如月さん」


弁当を食べていたらクラスメイトから声を掛けられた。遂に来たか。


「昨日、女子を虐めたと聞いたんだけど」


「私は殴り飛ばしたと」


「事実無根です」


「「だよねー」」


納得してくれて安心したわ。またクラスの中が雰囲気悪くなるのは俺も辛い。やっと居心地のいい場所を手に入れたというのに、また針の筵のような状況は勘弁してほしいからな。

ただし教室から出たら、状況は違うだろう。


「またデマかな?」


「私が呼び出された方です。囲まれて捕まりそうだったので、一人を突き飛ばした位です」


「それって如月さんが被害者だよね」


相羽さんの言う通りなんだよな。確かに俺も手を出したが、あれは仕方ないだろ。捕まったら何をされるか分からなかったから。正当防衛になるかな。


「でも噂が流れるの早くない?」


「誰かが流布しているのでしょう」


積極的に流しているのだろう。事実だろうと、全くの出鱈目であろうと相手にとっては何でもいい。目的は俺の評判を落とすことだろうから。前年の琴音のイメージが残っているから信憑性は増すだろうなぁ。


「何というか、乙」


「本当ですね。また肩身の狭い生活が始まりそうです」


「いや、最初から肩身狭そうに見えなかったんだけど」


皆川さんに言われて過去を振り返ってみたが、恐縮したりはしていなかったな。だってヘコヘコしていたら逆に虐められそうじゃないか。


「このような事態なので放課後に生徒会室に来るように。との連絡が来たよ」


気付いたら真後ろに小梢さんがいた。相変らず気配を感じられないから周りにいた相羽さんも皆川さんも驚いている。俺は慣れているから特に思うことは無い。


「またちょっかいを掛けてくるのでは?」


「迎えが来るってさ。それなら相手も下手に動けないと」


確かに相手の標的は俺であるが、生徒会役員に喧嘩を売るような真似はしないだろう。俺だから評判は悪いが、他の生徒会役員の評価は学園全体でも高い。


「ただ私を呼んで、あの会長はどうする気なんでしょう」


「また碌でもないことを考えているんじゃないかな」


俺もそんな気がする。俺のイメージアップ戦略とか変なことを考えていないと良いんだけどな。この事態は俺が動いてもいいことはないと思うんだが。


「それじゃ伝えたから。また放課後に」


「えぇ、お休みなさい。小梢さん」


生徒会室で会話していたが、彼女の昼休みは昼寝の時間なのだそうだ。多分、会長から連絡があって眠りを邪魔されたのだろう。顔が凄い眠そうだったから。


「生徒会って一癖ある人が入る場所なのかな?」


「相羽さん。それは私も癖があると言いたいのですか?」


「うん。如月さんが癖のない人物だったら、大体の人達は普通の人になっちゃうよ」


失礼な。俺は至ってまともな人物だ。ただ前年のイメージが悪くて、今のイメージとかなり違っているだけ。確かにお嬢様なのに一人暮らししていたり、節約を心掛けたり、商店街で世間話したりもしているけどさ。


「琴音さん!大丈夫ですか!」


今日の昼休みは来客が多いなぁ。血相変えてやってきたのは小鳥か。彼女が現れただけで教室の空気がほんわかしているのは確実に気のせいじゃないな。和みキャラだ。


「別にこれといって問題はないですよ」


「だって変な噂が流れているじゃないですか!」


「気にはしていますが、あまり関わりになろうとは思っていません」


噂を流している人物を探し出したり、報復しようとは全く考えていない。更にイメージが悪くなるだけだからな。気持ちのいい物じゃないが、噂はいずれ消えるだろうし。


「こんな噂を流すような人を私は許しません!」


「取り敢えず落ち着きましょう」


誰に喧嘩を売るのか分からないので、頭に手を置いてナデナデと。うん、サラサラの髪だな。ヒートアップしていた小鳥も頭を撫でていたら落ち着いたな。されるがままになっているが。


「何か尻尾が揺れている幻視が見えるようだね」


相羽さんの言う通り、表情が凄く気持ち良さそうなんだよな。ただ頭を撫でているだけなのに。


「小鳥が何かをする必要はありません。4組のクラスでも私の為に働きかけてくれているんですから」


「あれ?何で知っているのですか?」


「ちょっと聞きました。それとありがとうございます」


自分のクラス以外の評価を戻すのは協力者がいないと無理だからな。正直ありがたい。だから微笑みながらお礼を言ったら小鳥の顔が真っ赤になった。何で?


「何で全員顔を逸らしているのですか?」


「如月さんはもうちょっと自覚しようね。破壊力が半端ないよ」


相羽さん。何に自覚すればいいのだ?仏頂面でお礼を言ってもあまり意味はないだろ。それに小鳥なんて固まって動かないんだが。おーい、戻ってこーい。


「ありゃりゃ、予想通りというか何と言うか」


「幸子さん、昨日ぶりです」


「やっほー、如月さん。うちのマスコットを回収しに来たよ」


何か昨日と違ってテンション高いな。時計を見てみると昼休みもあと僅か。今日は賑やかな昼休みになったな。原因が原因だから素直に喜べない。


「それじゃ今度、ゆっくり話そうねー」


「えぇ、また今度」


小鳥を手を引っ張って出て行ったが、夢遊病者みたいにフラフラしている小鳥は大丈夫なのだろうか。頭撫でていただけだったのに、何かあったっけ。

それよりも放課後、嫌な予感がするな。



「第一回、如月琴音対策会議ー!」


会長が高らかに宣言を上げているのを、俺は頭を抱えて机に項垂れていた。予想はしていたが、ここまでノリノリでやるとは思っていなかった。


「ごめんなさい。止められなかったわ」


「木下先輩は何も悪くないです。悪いのは会長です」


申し訳なさそうにしている木下先輩を弁護しておく。木下先輩や俺でも会長の奇行を止められる確率なんて低いからな。しかし俺の対策会議って何だよ。


「まずは今回、琴音の何が悪かったのか協議する」


いつの間にか会長、俺のこと呼び捨てにしているし。んー、今回の俺の何が悪かったのか。


「ほいほい付いていったのがそもそもの間違いだったのではないだろうか」


「はい、山田君正解。座布団も何もないけどね」


この会長のノリ、何とかならんのか。何でこんなにテンションが高いんだよ。滅茶苦茶楽しんでいるのだが。


「これでも心配はしているのですよ」


「心配事も全力で楽しまないとね。辛気臭く考えてもいい考えなんて出て来ないからさ」


木下先輩の擁護がなかったら、信用しなかったぞ。


「大体素直に付いていかないで無視して即帰ればよかったじゃないか。評価なんて底辺なんだから今更気にすることもなかったはずだよね」


「去年の事に関することだったら謝ろうと」


「その結果がこれなんだからさ。もっと人数を用意されていたら不味かったはずだよね」


会長の言う通り、あれ以上の人数に囲まれでもしたら逃げるのは厳しいだろうな。ただ相手がそこまでやるとも思えないんだよ。卯月の二の舞になるとは考えないのだろうか。


「という訳で今度から一人で付いていかないこと。最低でも一人くらいは同行者を連れて行くこと」


「いない場合は?」


「当たり前のことだけど付いていかないこと。毎回毎回こんな噂が出回るのは君にとっても不本意でしょ」


確かに変な誤解が生まれるのは勘弁してほしい。ただそんな都合よく同行者がいるとは思えないんだが。つまり誰にも付いていくなという事だろう。


「それじゃ次の議題に行こうか。如月琴音イメージアップ戦略会議ー!」


予想通り過ぎて頭が痛い。というかやる気があるのは会長だけで、皆は呆れていて好き勝手やっているな。小梢さんなんて寝てるし。


「別に無理にイメージを上げようと思っていないんですが」


「一般人レベルまで戻して貰わないと困るんだよ。このままだと本当に不信任案が来そうなんだからさ」


「私は別に構わないんですが」


「「「我々が困る!」」」


今まで話を全く聞いていなかったはずの連中から声が上がった。というか小梢さん、あんたは寝ていたはずだよな。別に俺がいなくなっても生徒会は問題なく回りそうだし。


「事務能力が高い。仕事が早く終わるのはこちらとしても助かる」


会計の佐伯さん。あんたの仕事ペースでも十分に終わるよ。


「俺としても役に立たない事務作業をしなくて済んでいるからな」


庶務の山田さん。もうちょっと事務をしてくれ。


「会長対策で残って下さい」


副会長の木下先輩。切実な願いであるのは十分理解している。俺も苦労しているから。


「仕事折半で負担軽減。早く帰れるからいなくなられると困る」


書記の小梢さん。欲望に忠実過ぎないか。最初に会った時から随分と印象が変わったよな。


「利用できるものは利用しないとね」


「それを言葉に出す会長は最悪です」


何だかんだと生徒会の人達は俺のことを信用しているんだよな。クラスメイト以外だとここの人達が次に一緒に居る時間が長いというのもあるだろう。あとは会長の奇行へ苦楽を共にしているのもあるか。


「会長が進行しても全く話が進まないので私が代わりに進めます。まずは現状の把握です」


進行役が木下先輩に変わった。そのことにしょんぼりしている会長だが、あんたの言動が原因なんだから反省してろ。


「現状、如月さんのイメージが悪いのは上級生と同級生です。下級生には比較的好印象です」


確かに朝に挨拶をしてくるのは下級生が中心だな。やっぱり琴音の惨状を見ていないから、悪い印象を持たれていないのだろう。先輩達から話を聞いていても今とじゃ全然違うからな。


「それでも僅か二か月とはいえ如月さんが変わったので、中立派がもっとも多いです」


「中立派?」


「はい。関わりにならなければ被害がないと思っている人達です。問題となるのが否定派です。こちらは今の如月さんは何も変わっていないと思っている人達ですね」


「そうだとしても、そもそも今回は何が目的だったのでしょう?」


「単純に嫉妬だろうね。去年あれだけの問題児だったのに生徒会へ入ったから何かしらの裏があると思っているんじゃないかな」


「会長の所為じゃないですか」


生徒会に入らなければ問題が起きることもなかった。むしろ勧誘されていた時は俺の方が付き纏われて迷惑していたというのに。しかし嫉妬ねぇ。生徒会に入っても大変なだけなのに。


「だからこうして会議を開いているんじゃないか」


「なら真面目に進行してください」


木下先輩の突っ込みは的を射ている。何で最初からふざけた調子でやっているんだよ。確かに暗い雰囲気には一切なっていないがな。


「私の考えは如何に中立派を取り込めるかです。如月さんが害のない存在であるとアピールすることが出来れば大丈夫だと思います」


「そこから少しずつ否定派も取り込めるようになれば万々歳なんだけどね」


まだ俺が害のある存在だと認知されているわけか。確かに俺が琴音であると分かり始めたら同級生達は避けていくな。別に取って食う訳でもないというのに。

ただそのアピール方法はどうするんだ?


「そして一番如月さんが無害であると印象付けるには食堂で昼食を取ることだと思います」


「はぃ?」


いかん、変な声が出た。俺が食堂で昼飯を食うことがアピールポイントというのはどういうことだ?そして周りは何故納得したような顔をしている。


「薫、ナイス!」


グッジョブしているんじゃないよ、会長。周りもうんうんと頷くなよ。誰か俺に説明してくれ。


「いいですか如月さん。私達が一番印象が違うと思ったのが貴女が食事を取っている時の表情です」


「はぁ」


「あれだけ幸せそうな顔をしていれば、周りも毒気が抜けます。緊張しているのが馬鹿らしくなるほどです」


そこまでかよ。俺としては普通に食っているだけなのに。三食きちんと食えることは結構重要なんだぞ。


「幸い我が学園の食堂は弁当持ち込みでも大丈夫です。そういう訳なので明日から実践してみてください」


「あ、明日からですか」


「大丈夫です。私と小梢さんも同席します。この人は除外しますので安心してください」


「ならいいですけど」


「本当に生徒会の女子は僕に辛辣だなぁ」


言動を弁えるのであれば同席を許すさ。会長が案を出しても碌な物が出てこないであろうことは予測できるからな。絶対に変なことを考えているだろうし。それを考えると生徒会に入ったのは早まったかな。

しかし木下先輩の案で改善されるのかね。まぁやってみるか。

予約投稿間違えて、書き直す前のを投稿していました。

これは改訂版みたいな感じですね。

直したからさぁ投稿し直そうとして気付いて焦りました。

直す前は会長が暴走していました。筆者の暴走も大概ですけど。

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