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After08.春は巡り、次は何が巡る

やっと終わったぞー!

皐月結婚式編、春の部。これにて閉幕です。


 焼き鳥丼を平らげながら今日の披露宴を振り返っているのだが。我ながら普通ではありえないことをやっていたと思う。何で宇宙服で披露宴に出席していたのだろうか。そもそもそこが謎なのだ。


「結局、最後まで歌う置物と化していた」


「スピーカーの間違いじゃないか?」


 そうかもしれないな。自走できない時点で私に逃走は許されなかったのだ。あれを脱いでしまったら私の正体がバレてしまうので不可能だったし。危ない発言は結構飛び交っていたのだけど。


「そのおかげで他の出し物に参加できなかったのは幸いだったけど」


「お前だったら他にも引っ張りだこだったろうからな」


「柊がぶっ飛ばされたり、射出されていたり、滑り飛んでいったな」


「胸焼けしそうな内容だったと理解した」


 言語化するのが難しいから。私としても弥生が飛び入り参加してきたのは正直肝が冷えた。予定外どころか、こっちとしては想定していない事態だったからな。ドレス姿で大立ち回りして、魔窟の精鋭を叩きのめしていた。


「おかしいよな。殺陣をやっていただけのはずなのに」


「どうせアドリブを取り入れたんだろ」


 途中までは奈子も柊も練習通りの動きをしていた。だが、最後に柊が木刀を正眼に構えてから本気勝負が始まったのだ。こっちはそれに合わせて選曲しながら場を盛り上げていたのだが、どうやらそれに触発されたのが弥生だったようだ。


「大男が腹パン一発で沈んでいた威力は恐ろしかった」


「映画のワンシーンみたいだな」


 披露宴で乱闘シーンが撮れるのはおかしいと思わない当たり、店長も毒されている部類なのだ。そもそも魔窟出身なのだから、すでに汚染レベルは末期を通り越している。異常が普通に思えてしまうのだろう。


「奈子と武器有りの柊ですら負けるような傑物なんて私は初めて見たよ」


「俺達の中じゃ最強の部類だからな。あとは参謀とかの知力が必要になるか」


「そこまでいったら戦争になるからな。物量ですら負けるような相手に勝負を挑むのは無謀だ」


 魔窟対十二本家の戦争なんて魔窟側が圧倒的に不利なのだ。幾ら小細工を弄したところで個々の才能が突出しているし、幾らでも物資や人材を投入できる十二本家に勝てるはずがない。そこは参謀や私も理解している。


「俺からしたら、負ける戦いでもお前らは嬉々として挑むような印象があるのだが」


「計画された負けなら、盛大に散るような場面を演出するな」


「汚い花火大会が見れそうだ」


 一発で終わらない辺りが魔窟らしくもある。私は考えたくないぞ、全員が盛大に打ちあがって散っていく様な演出は。でも、誰かが考えなくても自分で何とかするだろうな。そして、盛大に滑っていく奴が複数人いるだろう。


「でも、私は十二本家側で参加するだろうな。立場的に」


「絶対に負けたくないだけだろうが」


 魔窟相手に勝利の美酒が味わえるのなら、私は喜び勇んで敵側に回ってやるよ。問題があるとすれば、私に対しての集中攻撃を展開されそうで怖いのだ。奴らは嫌がらせだろうと全力を出す。


「琴ちゃーん。反省会終わったよー」


「勝手にやってろー。私はそんな危険地帯に近寄らないからなー」


 酒の席と魔窟がセットになったのなら予測不能な騒ぎが発生するのが決まりになっている。数人ですら精神的疲労が凄いのに、大人数となれば次の日は活動不能なほど寝込んでしまう。真面目に相手をしていた場合だけど。


「未成年が参加していい場所ではないな」


「事故を装って何かを盛ってきそうだからな」


 酒以外の何かを混入される疑いがある。仮に酒を入れようとしてきたのなら、察知した他の面子に制裁されるだろう。制止ではなく、制裁なのが魔窟らしくある。ただし、事前に発見できるかどうかは運が絡む。


「それに私はこの後に予定が入っているから」


「そんなに詰め込んでいて大丈夫か? 無理していないか?」


「大丈夫だって。何で過保護の父親みたいなことを言うんだよ」


「あいつの忘れ形見なものだってことは全員に情報が回っているからな。つまり、俺達の子供ってことだろ?」


「よし、家出しよう」


 家出どころか、絶対見つかってはいけないと旅に出る必要があるな。一か所に留まっていたら絶対に発見されるし、捜索隊が組織されるだろう。手段を問わない魔窟の捜索なんて迷惑以外の何物でもない。


「琴音。冷静に考えてみろ。お前が本当に家出をして旅に出たら、どうなると思う?」


「んー? 冷静に考えたら大騒ぎどころの話じゃないだろうな。魔窟ぷらす、十二本家ぷらすダブル母親という地獄絵図の展開がされるかな」


 逃げ切れる自信は微塵もない。そして、その後に何を言われるのかすら想像できない。日本中に迷惑を掛けるだろうし、捕まった後に私がどうなるか怖いな。反抗期をふざけてやることすらできない状況か。


「私の自由はどこだろう」


「十分自由に色々とやっていると思うぞ」


 そうかな。基本的に敷かれたレールの上で暴れている程度にしか感じていないのだが。だって、望まれている動きをするのは癪に障るじゃないか。せめて少しくらい抵抗したっていいじゃないか。


「それで予定というのは何なんだ? この地獄の宴会から逃げ出すような嘘じゃないよな?」


「嘘ではないかな」


 ギリギリ嘘ではないと思う。予定とは言っているが、それが確実に起きるとは限らない。つまり、相手の動き次第でその予定が確定するという曖昧なもの。ぶっちゃけ予定とは言えないようなものだ。つまり、逃げる口実である。


「新郎新婦が部屋にやってくるんだよ」


「普通はどっちかの実家とかじゃないのか?」


「常識が通じるような連中じゃないんだよ」


 新居を用意しているとも言っていたのだが、私の予想では八割がた私の部屋にやってくるだろうと予測している。だって、茜さんと飲んだ後に静流さんは私の部屋で締めのご飯を食べているんだぞ。その流れが簡単に変わるとは思っていない。


「そんなわけで身代わりを置いていくからこき使ってくれ」


「さっきからよく働いてくれているのはいいのだが、居酒屋の従業員がメイド服なのは違和感が酷いぞ」


「あれが正装なんだから仕方ないだろ」


 店主と奥さん、そして従業員が一人だけでは手が足りないだろうと美咲を招集していたのだ。魔窟に対する耐性も手に入れているからな。何かに巻き込まれても心に傷は負わないだろう。あれも逞しく成長したものだ。


「おかげで私が捌かなくて助かっている」


「色々と巻き込まれているように見えるが、可哀そうには思えないよな。彼女のおかげで俺達の安寧が確保されているから」


「それな」


 犠牲から生まれる幸せもある。美咲が弄られている間はこちらに被害が来ないのだから、私達は何の憂いもなく馬鹿達に美咲を差し出すのさ。あとでフォローしておかないと泣きつかれそうだけど。二度と行きたくないと。


「それじゃ本格的な騒ぎになる前に私は退散する」


「うざ絡みされたら、予定があると言っても逃がしてはくれないだろうからな。またな」


 店長がそこまでの汚染度でなくて本当に助かるよな。一応は客商売なのだから、無茶をやれるはずもないから良識のある部類にはなるか。そもそも汚染度って何だよと自分の思考にツッコミが入ってしまう。


「さてと、久しぶりにここから帰るわけだけど」


 居酒屋を出て、帰り道を検討する。兄はここから走って帰ろうとしたのだったかな。時間が決められていないのであれば、私だってやるかもしれないが。しかし、今回は遅くなると呼び出しの着信が来そうだ。


「へい、タクシー!」


「俺達をタクシー扱いするな」


「それで本当にタクシーが止まったらどうするつもりだったの?」


 その時は素直に謝るさ。いたずらでお金を無駄に使うつもりはない。溜息を吐いている伍島さんと瑞樹さんはどうしてこんなにテンションが高いのだろうと思っているだろう。馬鹿騒ぎの弊害だから気にしないでほしい。


「一年前と同じなら、必ずいると思いましたよ」


「嫌な信頼のされ方だな」


「タクシー代わりはちょっとね」


「別にタクシー役だとは思っていませんよ。懐かしい思い出を振り返ったんじゃないですか」


 一年前のあの日。学園長と佐伯先生が初めての飲み会を行い、兄は新たな護衛の人達と出会った。当時はあの二人を結婚させようとは兄だって思っていなかったのだが、放置している間にどんどん進んでしまったのだろう。


「帰り道の途中でスーパーに寄ってください。軽く買い物していきます」


「いい様に使われているのは以前からだな」


「あの時は私達にも得はあったのだけれどね。最近の琴音ちゃんだと、この程度の得じゃ全然足りなくなったわね」


「私に対する評価がおかしくないですか?」


「「間違ってはいない」」


 兄の所為ということにしておこう。今回のイベントは一から十まで全部兄が悪い。私は被害者であり、成り行きで今回のイベントを乗り切った。だから絶対に私は悪くはないし、気にしたら負けだ。


「お酒の締めに何を作ろうかな」


 これで兄が残していったイベントの一つは片付いたはず。残っているのは現在居酒屋で馬鹿騒ぎをしている連中が主催する新年会か。絶対に碌でもない目に遭うのが確定しているのが嫌すぎる。


「最終兵器投入するか」


「おい、物騒なことを言うな」


「琴音ちゃんの最終兵器とか、私達は絶対に関わりたくないわ」


 大丈夫、魔窟以外には無害だから。だから私に対しても一切のダメージはない、はず。とりあえず、直近の献立を考えないと。締めならあっさりとしたものがいいだろう。お茶漬けとか。インスタントでもいいけど、手作りを求めてくるだろう。


「布団の予備は間に合うかな」


 最近は私の部屋にそれなりの人数がやってくるからな。しかも問答無用で泊っていくし。あの布団はどうやって手に入れたのだったか。誰かが持参してそのまま置いていったはず。


「私の部屋が侵略されている」


 よく分からないものが増え、誰かの持参品が置き忘れていったもの。兄に対する恨みが増していく。おのれ兄め、厄介なものしか残していかないのか。


 とにかく、これにて学園長と佐伯先生の結婚式は完了。私は一つの試練を乗り越えたのだ!

モンハンのやり過ぎで、大幅に遅れてしまったことを陳謝いたします。

GWで、しかも四話くらいで終わらせようと考えていたのに、どうしてこうなった……。

着地地点は決めているのに、道中が寄り道し過ぎてしまうのは悪い癖なんですけどね。

どうしても、止められない止められない。

次回は夏編で予定しておりますが、いつ再開するのかは未定とさせていただきます。

ぶっちゃけ、何話作成するのか一切分かりません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とりあえず、結婚式編終了お疲れ様でした。 次の夏編を楽しみにしています。
[気になる点] 琴ちゃん… また在学中なので残りの試練は、ね? しかも夫婦両方から愚痴きますので。 [一言] モンハン…アクションゲーム…う、頭が……
[一言] 完結おめでとうございます! 次は夏編を予定しているとのことなので今から楽しみにしております!
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