表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
221/237

after03.会議は踊る、混沌へ


 グループに入ったはいいのだが、歓迎やら勧誘やら喧嘩でまともな会話にならないということが判明した。これで幹事をやれというのは無理がある。というわけで貴重な休暇を浪費する羽目となった。


「本日は魑魅魍魎の馬鹿達の所為でご足労をおかけしました。あいつら、正気に戻らないかな」


「真人間に戻ってくれるかどうかなんて高校時代に諦めたわ」


 招集者その一、蘭。恐らく現在一番忙しいであろう人物だ。綾香の突発的参戦によるスケジュール調整はかなり難航しているのだろう。顔に疲れが滲み出ている感じがある。それでも招集に応じてくれたのは感謝だな。


「普通になっちゃ面白くないじゃないか」


 招集者その二、悟。恐らく現在一番暇であろう人物。裏でこそこそと何かをしている様子はあるが、流石に十二本家相手では慎重にならないといけないだろう。火花にいらん知識を与えやがって。


「この面子で集まるのも久しぶりだな」


 招集者その三、健一。裏方専門の制作側代表者。兄の学生時代で会議を開く場合、この面子が一番多かった。他にも部門は様々あるが、何をするにしてもこの三人は必須であるのだ。


「集まってもらったのは他でもない。皐月家から依頼されている結婚式の件だ」


「こっちは一回断ったんだけどね。ドラマの進行とかに影響が出るから。事務所からは何とか都合をつけてくれと言われていたけど」


「僕は最初から受ける気でいたけどね。でも、参加者が中々集まらなくてどうしようかと思っていたところ」


「俺は琴音からの依頼もあったから、気分的には半々だったな。依頼を抱えすぎると碌なことがない」


 三人それぞれに都合があったのだが、私の参加という爆弾が投下されたことによって事態は急速に動き出した。ただ、そのままでは指揮系統もなく各々が自由に動き過ぎてしまうために指揮系統が必要になる。その為の我々だ。


「再現VTRは脚本が仕上がり次第、撮影に入るんだよな?」


「それまでは綾香が他の人達に演技指導よ」


「悟は全体の流れを把握して、何が必要なのかを考案だな」


「挙式自体はあちら側に任せるから、僕達は披露宴がメインだね」


「健一は悟の立てたアドリブに応えると」


「それが一番難しいんだよ。毎回無茶な要求をしやがって」


 大まかな流れはこんな感じだ。兄が務めていたのは全体のバランスを取ること。どこかが暴走したら鎮圧用の人材を確保して殴り込みをかける。今だとそれが難しいので、難易度が上がっている気がする。


「ところで、何でここで会議しているの?」


「店長には許可を貰っているから、気にしないでくれ。あっ、支払いは全額こいつにしてくれ」


「僕の扱いが財布なのは酷いね」


 本日は私が休暇なので店内では香織が接客を担当している。ちなみに本来であれば掛かった費用は皐月が持ってくれる約束になっているのだが、私に対する迷惑として悟に負担してもらうことにした。


「私は当事者じゃないから関係ないけど。物騒な発言とか止めてよね」


「香織ちゃん。琴音が親友を巻き込まないと思っているの?」


「えっ?」


「恥を晒すなら諸共にが俺達の理念だからな。こいつが一人だけで参加するわけないだろ」


「すでに手配していると僕達は読んでいるね」


「えー」


 文句を言うよりも諦めの声を出すあたり、香織も染まってきたな。実際、皐月には私の友人として香織の招待も依頼している。一応は最後の場面で香織も一緒だったからな。全くの部外者というわけでもない。


「後で一緒にドレスを選びに行くからな」


「分かったわよ、もぉ」


 結婚式に着ていくような服をお互いに持っていないからな。こういう時こそ費用が相手持ちなのが活きてくる。学生が買えるようなものじゃないからな。レンタルという手もあるのだが、せっかくなら一着くらい持っておくかと考えている。


「店長お久! アイスコーヒーをジョッキで!」


「いいか、香織。あいつにだけは絶対に関わり合いになるんじゃないぞ。いいな?」


「えっ、でもお客さんじゃない」


「そもそも訳分からん注文をしている時点で迷惑な客だろ」


 アイスコーヒーのサイズでジョッキなんてお店のメニューにも載っていないんだぞ。しかも、久しぶりというのが解せない。兄がここに来る前に奴は来店していたことがあったのか。


「ふっ、久しぶりの裏メニューのチャレンジャーか。沙織も腕が鳴るな」


「「裏メニューなんてあるの!?」」


 流石に店員と娘からのツッコミが飛んでしまう。私と香織すらも存在を知らないメニューがあるなんて初めて知ったぞ。そもそも柊は今日の招集メンバーじゃない。一切関係ないのになぜかいるのだ。


「あー、話が脱線したな。あれは無視の方向で行こう」


「相変わらず変な存在感があるわね、彼女は」


「柊君とは久しぶりだけど、相変わらずみたいだね」


「ぶっちゃけ、あいつが頼んだ裏メニューとか滅茶苦茶気になるんだが」


 私だって存在を知らないメニューとかかなり気になる。だが、あれのペースに引きずり込まれると話が進まなくなってしまうのだ。今はとにかく披露宴で何をするのかを決めないと。


「担当教師の件を参考にするか?」


「いや、あれは特殊なケースだろ。俺達が教え子だというアドヴァンテージを最大限活かしたんだから」


「確かにあれほど好き勝手には出来ないわね。元より何をするのかは皐月側から許可を取らないといけないのよ」


「今回は社会人としての制約が付いてくるね。そこをいかに掻い潜るか」


 無難な披露宴が一番楽で、何よりも事故が起きない。だが、それだと何のために私達へ依頼してきたのか分からないのだ。私達に求められているのは波乱があり、問題が起こらない出し物。


「いや、難易度高いな」


「再現VTRはいつも通りやれば問題ないわね」


「そっちのクオリティは心配していない。変なアドリブを入れなければな」


「そこは私が厳重に監視しているわ」


「問題は披露宴で何をするかだね。会場内だと制限が厳しいから、外でできないかな?」


「立食形式か? それとも外にテーブルなんかを設置する感じ?」


「長時間だと疲れるだろうから設置型かな。問題になるのは当日の天気だね」


「外でなら自由度が上がるから俺としても賛成だな。天候はいつも通り、鳳に依頼するか?」


「祈祷による神頼みだな。結構費用が掛かるけど、別に私達の金じゃないからな」


「そんな迷信を信じているの?」


「香織。世の中には訳分からない信憑性もあるんだ。流石に九割の確率で晴れにされたら信じる気にもなるぞ」


 鳳の神社は天候に関係するもので、昔からその分野で依頼されることがあるらしい。兄たちは絶対に何とかしないといけない場合のみ利用していた。一応、学生割引が適用されて各々で寄付を募って利用していたくらいだ。


「出し物は他の面子を考えるならミュージックに合わせたダンスは鉄板だよな」


「それなら勇実達も参加できるし大丈夫そうね。ダンサーも今から練習させれば何とかなるかしら」


「以前みたいに漫才でもやって盛大に滑らせてみる?」


「あれのリカバリー、滅茶苦茶大変だったんだからな。アドリブで乗り越えられたのが奇跡だったんだぞ」


「同じ事やったら皐月からアホ二人が何をされるか分かったものじゃないから却下。私としても見たい気持ちはあるけどさ」


 あれは担任教師の結婚式だからこそやれた暴挙だ。自信満々の二人を信頼した兄たちが愚かではあったのだが、あそこまで会場が冷え切ったのは正直全員が顔色を青くしたものだ。


「殺陣は? 以前は総司君と奈子が担当していたけど」


「私は別件があるからやれないぞ。やらせるなら、そこにいる奴が担当することになるが」


「それだとただのサンドバックじゃない」


「いや、柊も頑張れば何とかなるはず。柊ー、首の調子はどうだ?」


「弥生の治療で完治したよー」


 あれから一週間くらいしか経っていないのに完治したとか何をしたんだよ。気にはなるが、知ってはいけない気がする。ただ、柊が参加するとなると突発的なトラブルには気を付けないとな。


「殺陣はやれそうか?」


「素手? それとも武器有り? 奈子との合わせもそれなりにやらないといけないよ」


「あー、そこは奈子と相談しないといけないな。追って連絡する」


「らじゃー」


「総司もそうだったが、何でお前たちは武器の扱いに慣れているんだよ」


「日頃の戦闘の成果だよー」


 ぶっちゃけ、それなんだよな。兄たちが不良と喧嘩する場合は、そこらに落ちているものとかも利用していたから。それを活用するような場面があったのも驚きだけど。柊の場合は弥生の件も絡んでいるか。


「はいよ、チャレンジメニュー。特大ジャンボパフェトッピングマシマシにケーキぶっ刺してだ」


「ヤケクソのようなネーミングだね。これは歯ごたえがありそうだよ」


 柊の目の前に豪快な音を立てて置かれた物体に店内の全員が言葉を失う。器がフルーツの盛り合わせ用の特大サイズ。その上にカウンター席に座っている柊の頭上まである山盛りのパフェ。何より目を引くのがそれに突き刺さっている数種類のケーキだ。


「沙織さん。本当にヤケクソで作ったんじゃないか?」


「お母さんもストレス発散でやった可能性はあるわね。でも、あれって何人前なのかしら?」


 どう見ても一人用じゃないよな。軽く見積もっても四人は必須の様に見られる。しかし、この喫茶店に大食いチャレンジなんてものは存在しない。となれば、あれの金額はいかほどなのか。


「でも、柊ならいけるんじゃないかしら?」


「あの細身のどこに入るのか人体の神秘だよな」


「皆がドン引きするくらいだからね」


「私でもあれは胸焼けしそう」


 確かにあれならアイスコーヒーをジョッキで必要になるかもしれない。とりあえず、あいつの存在は視界に入れないでおこう。そして、披露宴の計画は順調に決まっていくのであった。


 なお、柊は完食した代償として暫く動けなくなっていた。相変わらず後先を考えない奴だよ。

ぶっちゃけ、庶民と魔窟の複合版なので読みづらいのは把握しております。

ただ、どうこねくり回しても今回の件は総動員じゃないと解決できないのです。

あと魔窟が訳分からないのは筆者が何も考えていないのが原因です。

そこは元からの部分があるんですけどね。

おかげで話数が増えていくのですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ゴールデンウィーク中に終わるのかこれ…
[一言] かなり強い晴れ女と雨男を知ってますが、あの人種の天気操作って割と信じざるを得ない結果を出すのがなんとも……。 と言うか再現VTRの大半は飲み会で飲んでるシーンになりそう。
[良い点] 良い意味で期待を裏切る内容増量… 更新を楽しみにお待ちしております。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ