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22.お泊り会、ただし実家

おかしい、前半は家での事。後半は報告にしようとしたはずなのですが。

何故か家の中の話だけで終わってしまいました。

計画通りに行かない筆者ですみません。

22.お泊り会、ただし実家



泊まることが確定してしまった。逃げるように帰ろうとしたら双子に掴まれ、隙を作ろうとしても誰かしらが隣にいて、逃げる事敵わず。厨房長は俺に対して懐疑的だったが、表に出てこないので特に問題ないようだ。

そして美咲に指示を出して、部屋から色々と持って来てもらうことにした。


「誰が着るか、こんなもの」


その理由がパジャマと言えないこの布地。ネグリジェなんて絶対に着ないぞ。誰が何と言おうが絶対に拒否してやる。


「スタイルいいし、お化粧していない今なら似合うと思うのだけど」


「母さん、私は趣味が変わったから」


持ってきた奈々へ反射的にぶん投げてしまった。何かを思い出したようにガタブルと震えてしまっていたから、急いで謝った。今の対応は確かに悪かったが、普通のパジャマはないのだろうか。

……なかったな。


「夕飯を食べている時なんて人が変わったような感じだったわね」


「美味しかったから」


流石専属料理人だけのことはあった。琴音の記憶があるとはいっても、俺は実際に食べたことがなかったから五感的な記憶は酷く曖昧なんだよな。記憶はあくまでも記憶でしかないということだな。

俺自身が体験しないと実際には分からないさ。


「だからといって、これにチャレンジする気はないが」


「でもそうなると着るものが無いのだけれど」


「美咲に取って来させている」


そろそろ帰ってきてもいい筈なんだけどな。帰りに一個だけお菓子を買うことを許可したのが原因だろうか。それ以外に考えられないけどな。そこまで遠いと言う訳でもないし。


「お姉様、そろそろお風呂の時間なのですが」


「誰かあいつを回収して来いよ」


念のために咲子さんに連絡を取って貰ったら、急いで戻ってきている最中らしい。遅れている理由を話さなかったらしいが、全員分かり切っていることなのであえて何も言わない。

帰ってきたら咲子さんのお仕置きが待っているだろう。


「入浴されている間に戻って来るでしょうから」


「なら先に入っているか。それにしても本当に一緒に入るのか?」


「当然です!」


何でそんなに気合が入っているんだよ。俺としてはいい加減、一人になれる時間が欲しいのだが。この家に来てから絶対に誰かと一緒に行動している。俺が逃げると思っているのだろう。

その通りだが。


「私も家族と一緒に入りたかったわ」


「母さん、幾らなんでも三人は狭い」


温泉みたいな大浴場みたいなものじゃないんだから、浴槽に三人も入ると流石に狭い。それに弟だけを一人で待たせるのも可哀そうだろ。せめて母さん位は傍にいてやれよ。


「行くか」


「行きましょう、お姉様!」


本当に何故この妹はテンションが高いのだ。俺はもう割り切った。これはあくまでも家族と一緒に風呂に入るだけだ。それに相手は中学三年生。気にすることなんて何一つないと。


「お姉様は美容に何を一番気を遣っていますか?」


「いや、特に何も」


脱衣所で服を脱いでいたら唐突に声を掛けられたが、本当の意味で何もしていないからな。化粧品だって自分では買っていないし、運動も特に何かを気にしているわけでもない。


「以前よりもスタイルが良くなっている気がします」


「マジマジと見るなよ」


以前の琴音も決して太っているわけでもなかった。ただ運動しないから美容用品にはかなり力を入れていたっけ。しかし食べたら痩せるとか謳い文句のものに手を出すなよ。原料不明のも怪しかっただろうに。


「どうして私はお姉様と同じお母様の子なのに、これなのでしょう」


うん、胸がないな。確かに母もスタイルがいい方だが、何故か妹にはその血が受け継がれていない。だからといって譲るようなことなんて出来ないんだけどな。


「というかさっさと入るぞ。見ていた所で変わるわけでもないから」


「いえ、眼福です」


俺を見て頬を赤らめるなよ。季節は夏に向かっているとはいってもまだ5月だ。裸でいたらこの季節でも風邪を引きかねない。ということで妹を無視してさっさと浴室に入る。


「相変らず広いよな」


「色々とお金が掛かっていますから」


本当にな。普通なら歩ける程度の広さもあればいいのに、何で一室分くらいの広さを必要とするんだよ。その割に浴槽は普通の風呂の2倍くらいの大きさ。浴室の広さと全然合っていない。

これが当たり前なのだから感覚が違うよな。


「お姉様、お背中を洗わせてください」


「いいけど、どさくさに紛れて胸とか触るなよ」


先程の様子から何かしら仕出かしそうだから釘を刺すと、目を泳がせやがった。故意にやるなよ。


「うわぁ、お肌が滑々ですね。本当に何もしていないのですか?」


「朝に運動してる位だな。化粧品だってただじゃないんだから気軽に買えないし」


「それなのに、それなのに」


後ろから恨み言がブツブツと聞こえてくるが、何かしら喋ったら藪蛇になりそうだから沈黙を貫く。ゴシゴシと背中を洗われながら、俺は表の方を洗う。


「胸があっても洗う時に面倒だし、動けば邪魔だし、いいことない気がするんだが」


「お姉様、それは私に対する嫌味ですか」


あっ、声に出してしまった。振り返るのは怖いので敢えて見ないが、目の前の鏡に妹様の姿がバッチリと映っている。あぁ、何かどす黒く見えるな。


「そんなお姉様にはこうです!」


「ちょっ!?だから胸を掴むなよ!」


「お仕置きです!」


背中に身体を押し付けられながら胸を鷲掴みにされるのだが、自分よりも妹の方が可哀そうに思えてしまった。バスタオルに包まれているとはいえ、全くと言っていいほど柔らかい感覚が感じられない。

声に出したら泣くだろうから、今回は本当に黙っておく。


「……虚しいです」


何もせずとも泣くのかよ。盛大に自爆しやがって。


「ほら、交代するぞ。今度は琴葉のことを私が洗う」


「お姉様、お願いがあります。胸を押し付けないでください。されると私の心が砕けそうです」


「んな、大袈裟な」


哀愁漂う背中をゴシゴシと擦りつつ妹の姿を再度確認するが、見た目が悪いわけでもない。俺や母のように髪を伸ばすことはしていないが、手入れは完璧だ。

肌だって負けず劣らずだし、学校ではさぞモテそうだ。胸に関しては何も言えんが。


「それじゃ入るか」


浴槽に浸かると自然と声が漏れてしまった。また妹が顔を赤らめたが、どうかしたのだろうか。浴槽が大きいと言っても二人で身体を伸ばせるほどに広いわけでもない。当然、肌が触れ合うのは仕方ない。


「お姉様は今、気になる男性とかいらっしゃるのですか?」


「藪から棒に何だよ? 今はいないぞ」


正直、男性に対して恋心を持てるかどうかも分からない状態だからな。肉体は女性だが、精神的にはまだ男性としての意識が強い。そんな状態だから親しくなったとしても友達が限界だろう。

ただこの精神もいつまで男性として保ち続けられるか分からないが。


「ならご結婚されるご予定も?」


「いきなりすっ飛んだな。好きな人もいないのに、結婚とか考える訳もないだろ」


「なら良かったです」


何がいいのやら。第一に俺自身が選んだ相手が仮に居たとしよう。そんな相手が以前の琴音を知っており、印象最悪だった場合どうなるか。結ばれるのは難しいだろうな。


「だけど許嫁とか勝手に決められたらどうなることやら」


「多分大丈夫だと思います。今の年齢でそういった人物が用意されていないのであれば、いないと思いますから」


そんなものなのか。やっぱりもっと年齢が低い時に決められるのかな。今更勝手にそんな人物が名乗り出てきても胡散臭い。


「琴葉には居るのか?」


「私もいませんね。達葉も同じです」


よくよく考えれば家族に関して無関心のあの父がそんな人物を用意するとも思えないな。いや、会社の為の駒として扱う可能性もあるか。ならあとありそうなのは見合いか。

堂々と破談にしてやる。


「母さん頼りで申し訳ないが、任せるしかないか」


「今までの反省も踏まえて、頑張ってみるわ」


「何で来るんだよ!?」


いきなり浴室に入ってきた母に俺と妹も目を丸くしてしまう。大体、弟はどうしたんだよ。一人にするのは可哀そうだと言ったよな!


「達葉は咲子に任せてきたわ。何でも美咲に対する罰に協力してほしいそうよ」


「あぁ、あの馬鹿にか」


「雁字搦めに椅子に縛り付けられた美咲なんて初めて見たわ」


「何をする気だよ、咲子さん」


むしろよく今まで家族に知られずに美咲へ罰を与えていたな。それともこの家に来てからは美咲もまともだったのだろうか。


「母さん、やっぱり狭い」


「いいじゃない、偶には」


「うぅ」


俺、琴葉、母と並んでいるが、妹の様子がおかしい。どんどん落ち込んでいく様子が分かるのだが、そんなに胸のことを気にしているのだろうか。


「まだ成長の余地はあるだろ」


「そうね。一気に育つこともあるんじゃないかしら」


「持っている人達に言われても、嫌味にしか聞こえません」


俺だって何で育つのか全然分からんのだからアドバイスも出来ない。食生活?運動?あとは何かしらの因果関係でもあるのだろうか。元男が分かる問題でもない。


「でもこうやって家族水入らずでお風呂に入るなんて、以前なら全然考えなかったわね」


「一般的な家庭だと、小さい頃はよくあることらしいけどな」


俺もそういった経験がないから、又聞きなんだよ。家族らしい生活というものは見たことはあるが、俺自身はその家でも他人だったからな。幾ら世話になっていたといっても遠慮してしまう。


「それを聞くと本当に私達は家族らしくなかったのね」


「今がいいなら、それでいいだろ」


過去を気にしても仕方ない。だから改善できるのであれば、すればいい。ただそれだけだ。あの状態の俺達が一緒に風呂に入るなんて当時からは考えられない出来事だろう。


「今の琴音はサッパリと割り切っているわね」


「そうでもしないとやってられないからな」


以前の琴音が接触した人達全員に謝るとか幾ら俺でも無理だ。それにそこまで低姿勢でいると今度はどんな要求をされるか分からない。だからあまりそういった人達に接触しないようにしている。

最近だと勝手にそちらから接触して来るのだが。


「あの、私は以前のお姉様の学園生活を知らないのですが。そこまで酷かったのですか?」


「開口一番に「私に話しかけてくるなんて失礼ですね」という人物に会ったらどうする?」


「二度と会いたくないと思います」


それが当然の反応だ。ただ琴音がまだまともだと思ったのが、相手に対して外傷を負わせるようなことをしなかったという点だろう。あくまでも言葉だけが酷かったのだ。

一度会って大体の人は避けるようになったし、トラウマを持つ人もいなかっただろう。


「それが今だと他人から好かれるような人物に変わるのだから、人って分からないわよね」


「好かれているかどうかは分からないけどな」


人の心の内を知るなんて無理だ。表面では好意的なのに、腹の内ではどう思われているのか分からない。卯月なんてあれだったしな。


「今のお姉様なら当然です!」


「いや、再会してまだ一日も経ってないのにその評価はどうだよ」


「私が思っているだけです。お姉様はお気になさらず」


変な行動はしないで欲しいんだけどな。以前の琴音があれだったから、その影響が妹や弟に出ないことを祈るよ。下手したら火消しを俺がやらないといけないから。


「今日は寝る時も一緒ですよ。お姉様」


「私と達葉も一緒よ」


「いや、ベッドに入りきらないだろ」


両隣に二人なら、あと一人はどうするんだよ。まさか足元に居る訳に行かないだろ。むしろ家族全員が納まるようなベッドを一目見てみたいわ。


「床に布団を敷いてもらっているから大丈夫よ」


「いいのかよ、それで」


床で寝るようなことなんて今まで一度だってやったことがないのに、よくやるよ。母が焦っているように見えないのだから、これが通常運転なのだろうが。変わり過ぎだろ。

今までどれだけ仮面を付けてたのやら。


「そろそろ上がるか。母さんはどうする?」


「私も一緒に出るわ」


結構長湯をしてしまったが、仕方ない。風呂はいいものだからな。温泉なら尚良し。


「奥様、お嬢様、琴葉様。何かお飲みになられますか?」


「その前に。咲子さん、この状況は何?」


パジャマに着替えて戻って来てみると、まだ美咲は縛り付けられている。それはまだ分かるのだが、美咲の目の前でゆっくりとお菓子を食べている弟は何なのだろう。

そして何で美咲はそれを見ながら泣いているんだ。


「今回の罰です」


「もしかして達葉が食べているのって、買ってきたお菓子?」


「そうでございます。美咲にとっては一番辛いことですから」


俺がご褒美をと思って許可したものを目の前で食われるとは美咲にとっては拷問だな。まぁ時間を大幅にオーバーしていた美咲も悪いんだが。流石に可哀そうだな。


「せめて一個位は食べさせたら」


「そのような事をすれば美咲が付け上がります」


一蹴された。そして俺のこの行動は美咲に希望を与えて、一瞬で絶望に変えるだけだった。


「美咲。今度からは時間を守ろうな」


「悩みに悩み抜いた自分を殴り飛ばしたいです」


気持ちは分かるけどな。暫く食べれないお菓子を漸く手に入れられる。それならばいい物を選ぼうとしたのだろうが、今回はそれが悪かった。一応とはいえまだ職務中だったからな。


「それでお嬢様。お飲み物は如何いたしますか?」


「なら牛乳で」


「私もお姉様と同じものを」


「私も二人と一緒でいいわ。達葉は入ってきなさい」


風呂上がりにいつも飲んでいるのは水だが、ちょっと贅沢をさせて貰おう。寂しそうに浴室に向かう弟がちょっと可哀そうだが仕方ない。流石にその年齢で一緒に入ることは出来ない。


「お風呂上がりに牛乳を飲むことが秘訣なのですか」


「いや、それで大きくなったら誰でも大きいから」


妹に突っ込んでおく。琴音だって飲んではいなかった。むしろ牛乳は嫌いじゃなかったかな。飲んでいる記憶がないから。


「それじゃこれから真剣な話をするわね」


「いきなりだな。というか何を話すんだよ」


真剣となるような話か。となると父に関することか、俺の今後について話し合うのか。だけどそれなら家族全員が一緒に居る時がいいんじゃないのか。弟だけ外すことはないだろ。


「誰が琴音の隣で寝るか。それが議題よ」


「いや、どうでもいいのだが」


「私は絶対に譲りませんよ!お母様!」


全くと言っていいほど真剣な話じゃないよな。俺にとっては誰と一緒に寝ようが全く気にしないのだが。家族は違うようだ。


「何で達葉がいない時に話すんだよ」


「自動的に外れるからよ」


酷い母だな。そこは母親らしく譲ってやれよ。


「でも達葉は入浴で一緒じゃなかったから、寝る時くらいは隣を優先してやろうよ」


「……琴音がそう言うのなら。ということは私が浴室に入らなければ」


「母さんにも優先権はあったな」


「あ、危なかったです」


項垂れる母に、安堵している妹。そしてやっと解放された美咲と訳の分からない状況になりつつあるな。美咲、幾ら袋の中身を確認しても残っていないから諦めろよ。


「お嬢様、明日も買うご許可を」


「いや、特に頼むような用事無いから」


無条件でお菓子を与えるほど俺だって優しくはない。ご褒美として与えるのだから、美咲は言うことを聞いてくれる。ならタダでお菓子を与えたらどうなるか。ただウザいだけだ。


「寝室の準備が整いました。ですが本当に宜しいのですか?」


「琴音が次にいつ帰って来れるか分からないのだから、出来るうちにやらないと」


「やり過ぎだと思うけどな」


報告に訪れた奈々もやはり納得していないのだろう。立派なベッドがあるというのに床で寝る準備をさせているのだから。


「ねぇ、琴音。やっぱり隣は駄目?」


「達葉が譲ってくれたらな」


戻ってきた弟は当然のことながら譲りはしなかった。母よ、いい加減に諦めろ。

ちょっと土日は友人達と遊んでいたら全く書けませんでした。

あと中身の人の過去についてはまだ書きません。

夏あたりに書こうとは思っています。そこら辺は計画を立てていますから。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば現時点の最新話までで母親の添い寝リベンジはまだ果たされてないな
[良い点] >咲の目の前でゆっくりとお菓子を食べている弟は何なのだろう。 >そして何で美咲はそれを見ながら泣いているんだ。 ここ好き
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