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196.七歩目は不吉を連れて

年内に終わる見込みが遠ざかっています。


 同行者が一人減り、新たに一人増えたのでプライマイゼロ。厄介さでも柊と勇実は同程度なので本当に状況が変わっていない。これで柊が戻ってきたら、私はどうしたらいいのだろう。


「話は終わった?」


「しほっち、おいっすー!」


「何で戻ってきたんだよ」


「シリアスな雰囲気を察知したから。というのは冗談だけど、知り合いに呼ばれたから」


 あっちと差された方には女性警官がこちらにお辞儀をしてきていた。だから何で警官に呼ばれているんだよ。これだと柊を知っているこっちも疑いの眼差しを向けてしまう。むしろ、何で知り合いになっているのか。


「最近、物騒だから威力偵察してほしいってさ」


「市民に頼むことじゃないからな」


「私と奈子が揃って歩いていると、不良連中は大人しくなるから」


 その二人を見かけて、それでも悪さをするような奴はこの町じゃモグリだろうな。それだけでも犯人を絞る情報となる。防犯役として偶にパトロールを依頼されているのは知っていたけどさ。


「矛盾として有名だよね。奈子としほっちは」


「本当は総司もその間に入っていたんだけどさ」


「ハッキリ言っておくけど、巻き込まれていただけだからな」


 奈子を見かけたら最強の座を獲得しようと挑みかかってくる馬鹿が多かったのだ。一緒に行動していた兄も撃退に協力していたら、奈子に挑む前に兄で力試しをしようとする奴もいた。更に柊も一緒になってからは変な事件に巻き込まれることが増えていたのだ。


「勇実も一緒に琴音の実家に行くの?」


「おー、琴ちゃんの実家とか興味があるね。行き先がようやく分かったよ」


「連れて行きたくはないけどな」


 本気でこの二人を実家に連れて行きたくはない。だけど、二人を引き離す方法を確立させることもできない。本気を出されたら、兄ですら勝つのが難しい二人であるし、下手に刺激して他の連中が参戦してこないとも限らない。


「何でよりによってこの二人が揃ったのか」


「ふっふっふ、私としほっちが揃えばウザさが倍増だよ!」


「私はその評価を否定したいなー」


 自覚しているのなら少しは黙ってほしい。そして、勇実と柊が揃った場合は喧しさが跳ね上がるというわけでもない。主に柊のテンションが条件となる。テンション吹っ切れた場合の柊は喧しいというよりも、ただ迷惑なだけだ。


「テンションの上限下限でパフォーマンスが上がるのはしほっちらしいけどさー」


「今はテンションを上げる必要性はないからね」


「ローテンションでいてくれれば、こっちが楽だからそのままでいてくれ」


 柊のテンションが上がるとすれば、弥生が攫いに来た場面だろうな。弥生がどの程度の戦力を投入してくるのかは分からない。それでも正月ほどの規模にはならないだろう。町を巻き込んでまでの騒動には発展してほしくない。


「連絡が取れないな」


「誰と?」


「知り合いの十二本家の連中。弥生の連絡先を教えてもらおうと思ったんだけど」


「あっ、それは私を売り渡そうとする算段だね」


「そのつもりだったんだけど、他の連中が何を企んでいるのか分からないな」


 柊だって兄との付き合いは長い方だ。だからこっちの狙いにだって気付いているし、最初から想定はしていただろう。それでも何で私に付いてきたのかは謎だな。面白さ優先した結果か。


「実家に連絡を取ると面倒そうだし」


「琴ちゃんは相変わらず実家との仲が複雑そうだね」


「何で弥生の連絡先が必要なのかと聞かれるだろうけど、馬鹿正直に友達を売り渡すとは答え辛いし。柊なら絶対に察知して邪魔するだろ」


「私の生き死にが掛かっているからね」


 柊と弥生との間に一体何があったのか。奈子に聞けばすぐに分かりそうなものだけど。あっちも溜まった仕事を片付けるので忙しくて手が離せないようだ。メッセージを送ったのだが、既読すら付かない。


「これも冗談だけど。弥生も神無月もこっちの限界はちゃんと把握しているよ。彼女らにとって私は一般人のサンプルとして貴重らしいよ」


「モルモットか」


「私は気にしてないけどねー。やり過ぎると師走がすっ飛んでくるし。あの三人もバランスのいいメンバーだと思うよ」


 弥生、神無月、師走はトリオで活動しているのか。十二本家が組んで活動しているのは珍しいとされているけど、柊を間に挟むことで関係性を曖昧にしていたのだろうか。別に隠すようなことじゃないと思うけど。でも、兄が色々と隠さずに行動していた所為でその努力も無駄になったか。


「医療関係、スポーツ関係とかあの三人にとってサンプルとなる人材は貴重だからさ。協力者が欲しかったらしいし」


「そこに柊が入るのか。それだと奈子は?」


「弥生の相手が務まるの何人いると思う? 私と奈子の二人でガス抜きに付き合っているだけ」


 何というか過酷なガス抜きに付き合っているような気がする。語っている柊の表情から哀愁を感じるのがその証拠かな。こっちからしたら奈子と柊のコンビを使うだけのガス抜きとか正気かと思ってしまうのだが。世界は広いな。


「しほっちも十二本家と付き合いがあるなんて知らなかったね。何で隠していたの?」


「面倒臭い事態になるのが分かり切っているじゃん。面白半分に関わり合いになっていい組み合わせじゃないのは私と奈子ですら理解しているよ。瑠々ですらヤバかったと言わしめる人材なんだから」


 魔窟と十二本家の組み合わせは兄ですら遠ざけるくらいの危険度を孕んでいるから仕方ない。それを柊が理解していたのは予想外だったけど。仲間ですら売り渡すような奴ではあるが、その後の面倒事は柊にとってもヤバいと思えるほどなんだろうな。


「琴音に関しては師走が勝手に警戒してくれるはずだから、接触はしてこないと思うけど」


「そっちは柊に任せる。こっちは別の面子を相手にしないといけないから余裕なんて一切ない」


 これ以上、十二本家との関わり合いを持ってしまうと話が流れてくれた当主の道が復活してくる可能性がある。友好的な関係を築いてしまえば猶更だな。柊が関連している時点で私も巻き込まれる可能性は非常に高い。


「私には荷が重いし、いつそっちに興味を持つのか分からないから絶対は言わないよ」


「そんなもの誰にも期待していないから気軽にやってくれ」


 誰にだって絶対はない。人それぞれに得意な分野があれば、欠点だってある。それが個性だからな。その個性を十二分に活用しているのが魔窟であり、十二本家の連中でもある。標的にされたら私だって諦めるさ。


「そういえば、琴ちゃんの家族構成とか聞いていないね。一人っ子?」


「下に妹と弟がいる。頼むから大人しくしていてくれよ」


「「それは無理というものだよ」」


 予想通りの返答に肩を落とす。こうなれば柊に期待するしかないか。テンションが低い状態なら、コミュニケーションですら初手からかっ飛ばす勇実を抑えてくれるはず。柊まで暴走してしまったら目も当てられないけど。


「そうだ。今のうちに言っておくけど、実家に着いたら柊の居場所は弥生に伝えておくからな」


「どうせ逃げ切れるとは思っていないから構わないよ。その間に琴音の実家を堪能させてもらうからさ」


「諦めが良すぎる」


「テンション爆上げ状態にならなくていいんじゃない。あの状態になると私でもドン引きだよ」


「無茶ができる状態でもないからねー」


 怪我の功名か。柊が暴走しだしたら止められる面子は限られる。この場にはその適任者が揃っていないのだから私の実家が大変なことになってしまうからな。ちなみに適任者は兄と奈子の二人。


「それじゃ、琴ちゃんの実家に向かってしゅっぱーつ!」


「すでに向かっているのにね」


「気分の問題だよ、しほっち」


 大丈夫な気が一切しないのは気の所為じゃないな。ある程度耐性の付いている美咲を活用するしかないか。父以外に心配事が増えるとは思わなかったぞ。

体調を崩し、葬式の連打、ワクチンによる副反応。

願いを込めて、12月は平穏に過ごしたいとツイートしたところ。

翌日、野生のタヌ吉の身命を賭した特攻により、愛車が破損しました。

そして、翌々日にトラックから金属レールを投下されましたがそっちは回避です。

何でフラグが仕留めに掛かってくるのか意味が分かりません。

フラグ回収のラップタイムは20時間くらいかな。最近一日持ちません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 実生活がクライマックスだらけで眩しいですが、平常心でご自愛下さい。 タヌキ相手だと道路の障害物(非生物)にぶつかったのと同じ事情に分類されて次の保険料が1ランクくらい高い方にシフトするんでし…
[一言] 琴音さんの家でどんな騒動が起こるのか…… そして緋月さんのフラグ回収が早い!
[一言] 父は(物理的に)黙らせることが出来るけれど、流石に十二本家相手では厳しいですかね? アレ?父も十二本家だった気が……まあ父は父だし問題無いですね! Twitterで一連の流れを見た時、先生…
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