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186.打ち上げは賑やかに④

筆者「終わるって言ったでしょうがぁ!」

自分の発言に対する馬鹿なツッコミです。


 寝転がって呻いている酔っぱらいは無視しておこう。下手に突っついたらゾンビのように復活してくるかもしれないからな。なるべくこちらの会話に参加できない状況を引き延ばさないといけない。


「三人の進路ってどんな感じ?」


「僕は当然ながら大学に進学して、経営や必要な技能の習得だよ」


「私も大学に進学ですね。その後のことは綾次第ですけど」


「私も大学に通いながら特訓よ。ママから許可が出次第、デビューするつもり」


 全員が進学という道を選んだのは予想通りかな。ただ、木下先輩の言葉に違和感を覚えた。なぜ、大学後のことを綾先輩に任せているのか。木下先輩ならその後の就職だって上手くいくと思うのに。


「何で綾先輩が関係している?」


「綾のマネージャーを務めてみようかと。随分と前からお願いもされていますから」


「ふっふっふ、優秀な人材は今のうちに確保しておかないとね」


「僕も薫を誘おうとしたんだけど。まさかすでに確保されているとは思わなかったよ」


 十二本家から引き抜きを受けるとは。やっぱり木下先輩は有能。歌手としての道が整備されるのがもっと早かったら俺もマネージャーを頼んでいたかもしれないな。現在のマネージャーに不満があるかと言われれば、多少の不安があるのだ。


「でも、綾が大学卒業までにデビューしなかったら他を探す予定にしています」


「そうなったら僕のところかな」


「葉月さんの場合は状況次第ですね。また生徒会みたいな無茶をしてないとも限りませんから」


「手厳しいねー」


 それは英断だと思う。確かに十二本家直属の仕事となれば、給料や失業の心配はほぼないだろう。だけど、それがどれほどの労力を必要とされるかは分からない。忙しいのならば分かるが、全く関係ないことでストレスを抱えそうだ。


「不安があるとしたら、マネージャーという職業ですね。色々と調べてはいるのですが、要領を得ないといいますか」


「効率的にとか、臨機応変さを求められそうな気はするけど。スケジュール管理以外にも健康管理、精神的ケアなども必要になるのかな。あとは問題が起きないように手を打っておくとか」


 蘭がそんな感じだと思うから。彼女の場合は一緒に住みながら綾香を監視している。そこまでやらないと綾香の管理は出来ないのだろう。魔窟の人間は目を離すと何をするか分からないからな。その例がイグジストの面々だ。


「琴音さんは誰か知り合いにマネージャーがいるのですか?」


「むしろ、すでにマネージャーが就いているわよ。それにデビューまで秒読みのはずよね?」


「何で知っている?」


「ママがあそこまで入れ込んでいて、今回の騒動じゃない。何となく察するわよ」


 誰でも考えることか。宣伝という目的であれば、ラジオでゲリラライブみたいなことをやったのだから成功したともいえる。俺としては大変不本意だけど。だって、俺が利用されたものだから。


「デビューについては詳細を省く。マネージャーに関しては知り合いが二人ほどいるな」


「もしかして、正月の騒動に参加していた人かな?」


「だから何で知っているんだよ?」


「そりゃ女優の綾香が参加していたんだから、マネージャーだってその場にいたと考えるよ」


 蘭を葉月先輩に紹介した覚えはない。だけど、あの場にいたのは間違いないし、顔も合わせてもいる。誰がどのような役割を行っていたのかも教えていない。葉月先輩にそんな情報を教えたら、色々と協力を取り付けようとするかもしれなかったからな。


「木下先輩に紹介してもいいけど。どちらも比較的まともな人材だから」


 唯さんはそれほど中身を知らないけど、イグジストの連中をある程度管理できている時点で有能だ。最近は奴らの行動に染まってきている感じはするけど。問題は蘭だな。管理というものを変な風に解釈している可能性がある。それは魔窟の所為だけど。


「訂正。一人はちょっと危ないかもしれない」


「どのように危ないのですか?」


「手段を選ばない点かな。状況、人材なんかをフル動員して鎮圧行動に走る場合があるから」


「まるで琴音さんのような方ですね」


「ちょっと待った」


 いや、木下先輩の前でそんなことをやった覚えはないのだが。確かに蘭の行動は俺を真似したものが多い。誰がこの状況で役立つのか、そして目的が分かるのであれば達成不可能の状況に持っていく。それは俺が魔窟の時に散々行っていた手段だ。


「葉月先輩。もしかして」


「情報共有は大切だからさ。綾と薫にも正月の騒動は見せているし、語ってもいるよ」


「まさか私達と別れた後にあんな楽しいことをしていたなんてね。もうちょっと付き合っていれば良かったわ」


「娯楽としては大変面白いと思いますよ。巻き込まれていなければの話ですけど」


 いらないことをしやがって。十二本家の人間に魔窟の連中を知られるのは不味いというのに。二つが結託でもしようものなら、それこそ大惨事が起こってしまう。それに巻き込まれるなんてまっぴらごめんだ。


「話を戻すけど。一人はイグジストのマネージャー。もう一人が女優の綾香のマネージャーだ」


「琴音さんの交友関係は本当に豊かですね」


「一癖も二癖もあるような連中ばかりだけどな」


「それはこの二人だって同じですよ。いい機会ですから紹介してもらえませんか。どうやったら癖の強い方々を抑え込めるのか勉強したいです」


 葉月先輩と綾先輩の表情が凍り付く。確実に自分たちが標的にされると思ったのだろう。それは正解だな。ただし、あんな大惨事を鎮圧しようとする人物から教えを受けた木下先輩がどのように変化するのか。末恐ろしいな。


「二人にはいい薬か」


「いやいや、琴音君。薫があんな人物になったらヤバいよ」


「私も同意見よ。それに私が薫と一緒にいる機会が多いのよ。一番私が割を食うじゃない」


「ちなみにどちらのマネージャーもそういった部類だからな」


 蘭はやり過ぎている面があるだろうが、唯さんだって主に馬鹿達を抑え込む方に特化されつつある。本人はそんな苦労が嫌だと言っているが、着実に成長しているのが分かる。だって、俺のところに馬鹿達がやって来ないのだから。


「学生時代みたいに無茶ができるわけじゃないけどな」


「それはそうですね。社会人となれば、制約は多くなるでしょうから。でも、大学で何かしらやる場合もありますよね」


 おい、そこの二人。そこで視線を逸らすな。葉月先輩ならまだ分かるが、綾先輩は化けの皮を被った状態で何をするつもりだよ。クラスを掌握するような手は大学で使えないはずなのに。


「お酒の入った席ならはっちゃけても問題ないかなと」


「次の日から見る目が変わるから止めておけ」


 大体、酒が入ったら自分がどんな変化をするのか分からないのに、はっちゃけるも何もないだろ。知らないうちに恥を晒している場合だってあるんだぞ。魔窟はその前に潰されるのだが。そこの三人みたいに。


「やっぱり最初の飲酒はここが一番良さそうだね。何かあっても琴音君が止めてくれそうだし」


「自分たちの変化を客観的に見てくれる人がいるものね。次の日に二日酔いになっても琴音が何とかしてくれそうだし」


「そうですね。私だけでなく、琴音さんが協力してくれると助かりますね」


「しれっと私を巻き込むな。拒否権は無さそうだけど」


 この三人との付き合いもここまでというわけではないな。それぞれで予定が合えば、ここを溜まり場にされそうな予感がする。何で俺が部屋を提供しなければならないのかは分からないけど。でも、悪い気はしないか。


「美咲。味わっているところ悪いが、あれを持ってきてくれ」


「承りました」


 美咲が一旦奥に引っ込み、あるものを持ってくる。流石に卒業したのに俺から何も送らないのはどうかと思ったからな。高価なものは準備できないが、それでも花くらいは買っておいたのだ。


「葉月先輩。綾先輩。木下先輩。ご卒業おめでとうございます。これからもよろしくということで」


 ここで涙ぐんだりすれば感動の場面なのだろうが、そんなものを期待なんてしていない。特に綾先輩なんて何か仕掛けられているのではないかと探っている。ありふれたドライフラワーに何を仕掛けるのだ。


 その後は思い出話や雑談で時間が過ぎ、それぞれの帰る時間となった。そう、帰る時間だったんだ。馬鹿が再起動しなければ。


「琴音さーん。水ー」


「白瀬さんの目の前にあるじゃないですか」


「飲ませてー」


「仕方ありませんね」


 自然な動作で髪留めを外してポニーテールからストレートに髪型を変える。それは俺の意思ではない。白瀬がやってきてからの生活の癖でやってしまった不注意。こうなったら俺にできることはないな。


「ゆっくりと飲んでくださいね」


「琴音さんは優しいー。どこかの誰かさんとは大違い」


 悪かったな、どこかの誰かさんで。俺だったら放置しておくか、咽るほどに流し込んでやるからな。それを分かっているから、琴音を頼ったのだろう。本当に何でこういった抜けている部分があるのか分からない。


「それと、君に寂しい思いはさせない。死ぬなら諸共に」


「何を言っているのですか?」


 本気で分かっていないのかよ。自分から地雷原の中に踏み込んだというのに。俺から注意するのは簡単だ。だけど、すでに手遅れなのだから自分が何をしたのか自覚させた方がいいな。どうせ狩人はこんな隙を見逃さないのだから。


「琴音君」


「琴音」


「琴音さん」


「ふぇ?」


 獲物を捕まえたかのような声に、奇妙な声を出しながら後ろを振り返り、自分が何をしてしまったのかやっと理解したか。数秒ほど思考停止していたけどな。そして、再度白瀬に向き直るとニヤァーと笑みを浮かべていた。


「グッドラック」


「謀りましたねぇー!!」


 いや、これに引っかかる琴音もどうかと思うぞ。そして、俺から言えることは一言だけ。


『馬鹿め』

終わるという度に墓穴を掘るのがお家芸と化してきました。

だからもう言いません。


モーションセンサーの照明が最近どうにも様子がおかしいのですよね。

何で私が部屋に入っても点灯してくれないのでしょうか。

点灯しても消えるし。いえ、サイドステップ位すれば点灯しますけど。

また幽霊化したのかな。いやいや、流石にないですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] みんなかわいい。 [気になる点] 学校(現在)と魔窟(過去)が見事に調和して未来を形作っているのがいつもお茶を吹きます。 この本編もあと少し()なのですね。 [一言] ×魔窟組の罠に掛か…
[一言] すごーく楽しくて毎回読み込んでしまいます。
[一言] >筆者「終わるって言ったでしょうがぁ!」 >自分の発言に対する馬鹿なツッコミです。 登場人物達全員アンコントロールアブル(制御不可)なので仕方ないです
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