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19.護衛の人達のあれこれ

久しぶりの一話にする気はなかった話です。

さっさと実家の話に持ち込みたかったのに何故か止まらないのですよね。

19.護衛の人達のあれこれ



そしてあれから特にハプニングもなくあっという間に一週間経ってしまった。変わったことといっても生徒会の事務処理が一段落ついて、ファミレスで打ち上げをした位か。

相変らず俺の食べている姿を見た会計と庶務がポカーンとした表情をしていたな。それに他の人達は笑っていたが。


「気を付けて行ってきなさいよ」


「実家に一回寄るだけで大袈裟ですよ、茜さん」


「大体入院した娘に一回も面会に来ないような親よ。何があるか分からないじゃない」


「その事情は話しましたよね。まぁ父が海外に行っているみたいなので大丈夫だと思います」


何か知らんが、夜勤明けの茜さんに心配されている。茜さんには色々と家のことも話しているのだが、やっぱり不安になるらしい。俺は別にそこまで不安になっていないんだが。


「何かあったらすぐに助けを呼ぶのよ」


「私は一体、どこに行くのでしょう」


「戦場かな」


「実家です」


実家が戦場とか嫌すぎる。何処の傭兵だよと突っ込みを入れて、お互いに笑い合った。茜さんも冗談で言っているのだが、心配なのは変わらないのだろう。たった半日の帰省なのに。


「クッキーの材料位だな、持っていくの」


お店でもクッキーは出しているのだが、せめてこれ位は俺の手作りにしないと。ケーキは完璧専門外だから後で沙織さんに教えて貰おうかな。そうすればお店にも貢献できるかもしれないからな。


「それじゃ私は寝るね~」


「それではまた明日」


茜さんの部屋の前で別れて、喫茶店に向かう。土曜日であるので通勤に向かう人達がいない寂しい道を歩きながら、後ろを振り返ってみる。やはりと言うべきかある人物が俺から付かず離れずにいる人と目が会う。

あら、気まずそうに目を逸らされた。


「ちょっといいですか?」


「何かしら」


どうやら今日の午前中の担当は女性のようだ。ボディーガードの人達の名前は一切知らなかったことに今初めて気づいたな。


「今日の午後は実家に向かいます」


「それを見ず知らずの人に言うのはどうなのかしら」


確かにその通りなのだが、見ず知らずという訳ではないんだよな。喫茶店でそれなりの頻度で会っているんだから。幾ら俺でも常連の人の顔位は覚えているぞ。


「隠すことですか?」


「それもそうね。よく周りを見ているじゃない」


「常連さんじゃないですか」


「そうだったわね。それで何で今更声を掛けたのかしら」


「今までと違う行動をするのはそちらにとって不測の事態じゃないのですか?」


「まぁ面倒ではあるけど、これも仕事だからね。それでも予定を教えて貰えるのは有り難いわ」


唐突に護衛対象が消えたら目も当てられないからな。下手したらクビになるだろうし。だから念の為に予定を伝えたのだが。


「午後の恭介は残念ね。喫茶店、気に入っていたから。私もだけど」


「仕事なのにですか?」


「仕事なのに喫茶店でゆっくりとお茶を飲めて、休めるからよ。普通だったら常に気を張っていないといけないからさ」


そりゃそうだな。常に護衛対象の動きをチェックして、危険が周囲にないかどうか気を配らなければいけない。変な人が近寄ってきたら、さり気なくフォローに回らないといけないとやるべきことは多そうだ。なのに護衛対象が喫茶店でバイトしているのだから外で見張っているわけにもいかない。

だから中で優雅にお茶が出来るのだ。


「結構人気が高いのよ。貴方の護衛は。楽だから」


「そんなに楽ですか?」


「だって貴方、行動がパターン化しているからね。夜は出歩かないし、平日は学園と部屋の往復。休日は喫茶店でバイト。あとは買い物して部屋にいるだけ」


改めて自分の行動を思い返してみると、本当に同じ行動しかしていないな。偶に出歩いても図書館に行くとか商店街に行くとか位かな。夜に出歩かないのは単純に無駄遣いしないためだ。


「それにお偉いさんの護衛となるとずっと息の詰まるような場所にいないといけないじゃない。それに引き換え貴方の護衛は気を張る必要性が薄いからね。むしろ周囲から浮いちゃう」


あの喫茶店の中で緊張した面持ちでいられたら、そりゃ周囲から浮いて目立つわな。逆に怪しくて周りから警戒されていらんトラブルを招きそうだ。それより今のように一緒に歩いている位が目立たないな。


「最初は不人気だったんだけどね。ほら、結構有名だったからさ」


「あぁ、それは分かります」


「それが実際に付いてみれば、こんな楽な護衛があるのかと思ったわよ。断った人達は後悔していたわ」


「それで若手の人が選ばれたんですね」


「立場が低い人に押し付けられるのは社会の基本よ。今回は当たりだったけどさ」


言っていることは分かる。ただそれで当たりを引けるのはかなり確率は低いけどな。思わぬ幸運と言っていいほどだ。大体は酷い案件しかないんだよ。


「それにしても何で今更実家に戻るのさ?」


「双子が誕生日なんです。今日ではないですけど」


「へぇ、噂じゃ妹にも弟にも興味ないと聞いていたんだけど。噂は当てにならないわね」


「いえ、合っていますよ。ただ私が変わっただけですから」


中身がまともな人にね。噂の8割くらいは本当のことだと俺は思っているから。それによって色々な所に影響を与えているのはボディーガードからの話で理解はしている。今更どうにもならんが。


「最初、私の担当になった時はどんな気持ちでしたか?」


「胃潰瘍にでもなると思ったわ」


「それは酷いですね。まぁ納得はしますが」


だから接触せずに遠くから見守る位の感覚で職務を遂行していたのだろう。所が喫茶店に入って、顔バレするのも厭わなくなったのだからどうなんだろうな。


「それに行動が読めないと思ったのよね。一応情報として聞いていたから貴方を一人にするのも不安だったのよ」


「勝手に死なれるのも問題ですか。貴方達の責任じゃないのですけど」


「それでも護衛対象が死んだと言うのは私達の評価に関係するからね。つかぬ事を聞くけど、また死ぬ気はある?」


「ストレートに聞きますね。それで私が癇癪を起こすとは考えないのですか?」


「う~ん、貴方のことを見守り続けた身としてはこの程度のことで貴方が行動を起こすとは思えないのよね」


「その通りですけど。質問の答えですが、自殺する気はありません」


「なら良かった」


この護衛の女性に対して思うのだが、俺に対して全くと言っていいほど遠慮というものがないんだよな。確かにその方が俺としても付き合い易いんだが、仕事としてはどうなんだろう。

他の人に付いたらクビになりそう。


「何か失礼なことを考えていない?」


「私としては付き合い易いのですが、私以外の人に対しても同じですと不味くないですか?」


「その通り。おかげでストレスの溜まりっぷりが半端なくてね。酒量も増えてエライことになったわ」


「肝臓が?」


「プラス体重」


女性としては一大事だな。というか俺の周りの人達はどうしてお酒に強い人が多いのだろう。茜さんも決して弱いわけではない。佐伯先生が強すぎるだけなんだよ。


「今は落ち着きましたか?」


「ストレスを感じることが少ないからね。あるとすれば朝のトレーニングにどちらが付くか揉める位ね」


「そんなにキツイですか?」


「あのペースでずっと走り続けられたら流石にね。自転車とかで追いかける訳にもいかないんだから」


俺としては普通に走っているつもりなんだがな。最初の頃に比べて体力は大分鍛えられて、今じゃ町内一周位出来るんじゃないだろうか。そして自転車で追いかけられたら俺だけじゃなくても気づくな。むしろ俺だって本気で逃げる。


「何で十二本家の人達は変にハイスペックなんだか」


「血筋でしょうか。私としては比べる対象がいないので分からないですけど」


体育の時間だって同じクラスか、隣のクラスと合同でやっているが十二本家とかち合ったことはない。身体的に優れているのか、それとも頭脳で優れているのか分かれるだろうが。会長なんて頭脳の方に傾いていると思う。


「貴方の学年だと何人だったかしら。如月、文月、長月かな。卯月は消えちゃったから」


「三人ですね。一応全員と面識はありますけど」


文月とは今だと普通にお昼を一緒に食べているような間だからな。長月に関しては去年の琴音がやらかしているから今学期ではまだ接触していない。俺としては好んで接触したくもない。絶対に相手は根に持ってそうだから。


「上級生だと葉月と霜月。葉月と付き合いがあるのは知っているけど霜月とは?」


「葉月は生徒会長ですから関係は概ね良好です。霜月は図書室で会うくらいですね」


図書委員の人だからな。大人しい女性で柔らかな笑顔が人気の人だ。俺が如月だと分かってもにこやかに本の貸し出しに応じてくれたのだからいい人なのだろう。別の人だった時はかなり渋られた。


「下級生は長月、水無月、霜月ね。こっちは結構兄弟関係が多いわね」


「でも会ったことすらありません。むしろ兄弟の方々が私のことを教えて接触しないようにしているのではないでしょうか」


下手に会って被害に遭うくらいなら最初から会わないことを選ぶだろう。といっても下級生が入学した頃には琴音は俺に変わっているから会った所で被害を与えるようなことはしない。相手から突っかかってくるなら別だが。


「来年は多いわね。如月、弥生、卯月、皐月、神無月と五家も入学してくる可能性があるのよ」


「別に私には関係ないことじゃないですか?」


十二本家が何人入学しようが俺にとって関係があるようには感じられない。ゴマを擦りに会いに行くわけでもないし、喧嘩を売りに行くわけでもない。接触しなければ顔を見る位で終わるような関係だろう。


「情報として受け取っておきなさい。こっちとしては無用な諍いが起きないことが一番いいのだから」


「肝に銘じておきます」


要するに仕事を増やすなと言いたいのだろう。いざこざを起こせば相手方の護衛と事を構える必要性も出てきてしまうからな。心配しなくても俺だって無意味に喧嘩は売らんさ。売られたら買うかもしれないが。


「さて、それじゃ私は他で暇を潰してくるから。また開店したらね」


「えぇ、色々と情報ありがとうございました」


喫茶店の近くまで着いたので分かれたが、どうせ開店したら店の中でまた会うんだよな。しかし情報を貰ったとしても使えるのは来年の話だよな。今知った所で全く役に立たない気がする。

全くと言っていいほどどうでもいい話だ。


「おはようございます」


ということでキッパリと先程の話を忘れて今日の準備を始めよう。厨房ではすでに沙織さんが作業をしているから、俺もさっさとエプロンを装着して手伝う。飾りつけだけだが。


「生クリームとか駄目だった?」


「好みが全然分かりません」


「母親が来た時に聞いておきなさいよ」


うん、その通りなので何も言い返せない。せめて双子の好み位は聞いておくんだった。あと思い出したが美咲をどうやって抑えるか。あれが暴走しないとも限らないな。

咲子さんに任せるか。


「色々と考えていると思ったのに、肝心な部分が抜けているね。琴音って」


「どうせ何も考えていませんよ」


本当に何も考えていないけどな。衝動的な行動が殆どなんだよ。誕生日のプレゼントだって思い出したから何かしらやらないと思っただけだし。母との和解だって殆ど成り行きだ。

切っ掛けが無ければそのままだっただろう。


「さてケーキはこんなもんでしょ。クッキーもさっさと作るわよ」


「了解であります」


開店前に全部終わらせておかないといけないからな。店長達にも午後は休ませてもらうことは伝えているし、了承も貰っている。

あとは俺が覚悟を決めて実家に向かうだけ。

次こそは実家に到着です。むしろ現在執筆中です。

ストック切れるの早かったなぁ……

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