記念特典SS.琴音に対する認識
本日『悪役令嬢、庶民に堕ちる』書籍版発売です!
コミック&書籍の発売を記念してWeb版特典SSを公開します。
時系列としては、原作5話頃のお話ですね。
それと、書籍版との違いもありますので本作の題名にWeb版と追加させていただきます。
学園の休日。いつも通り、バイト先である喫茶店で働いている。働くようになって気付いたのだが、店長が忙しいと言っていたのは本当だった。よく、一人で店内を回していたと思うよ。沙織さんは厨房から離れられないほど、注文が来るからな。今は、混雑が解消されて、お客さんもまばらだけど。
「いらっしゃいませ」
「お疲れ様。お客さんを連れてきたわよ」
「お邪魔します」
やってきたのは、部活帰りの香織と、なぜか相羽さん。おそらく、香織と会ってそのまま連れて来られたのだろう。喫茶店にやってくるお客さんで、生徒は珍しくない。だけど、俺と同じクラスの生徒がやってくるのは初めてかな。
「席へご案内します」
でも、見知った相手だからといって、手を抜いていいわけじゃない。お客さんであるのは変わらない。空いている席に案内して、サービスのお冷をテーブルに置く。なぜか香織も一緒にいるけど。ニヤニヤとしながら、こちらを見ている香織と違って、相羽さんはマジマジと俺を見つめてくる。
「どうかしましたか?」
「いえ、なんというか。学園のイメージと違う感じがして」
「真面目に働いているだけですよ」
「それがお嬢様のイメージとかけ離れているのを自覚しなさい」
香織の指摘に対して、どのように返答すればいいのか迷ってしまう。不慣れな様子を装うのは簡単だ。だけど、その失敗で店長に迷惑をかけるわけにはいかない。だったら、最初から実力を隠さずに働いたほうがいいだろう。
「迷惑はかけられません」
「大人な感じがします」
相羽さんの言葉で、俺の頬が引き攣る。香織は笑いを堪えるように顔をそらしている。以前に店長から、大学生に間違われたのを気にしているのだ。香織にも、年齢相応に見えないと言われたこともある。俺だって、少しは年齢を気にするのだぞ。
「私って、老けて見えますか?」
「違いますよ! 仕事のできる、大人の女性だと思っただけですよ!」
「大学生くらいに見える時はあるけどね」
相羽さんの言葉はフォローになっていない気がする。さらに、香織の追い打ちで軽く落ち込んでしまう。年齢相応に見えないのは俺の所為だよな。外見の年齢と、内面の年齢が合っていない。意識して何とかなるものでもないから、諦めるしかないのだけど。
「まぁ、いいや。ご注文は?」
「相変わらず、切り替えが早いわね」
「気にしても、しかたありませんから」
注文を聞いて、席から離れる。その際に後ろから聞こえてきた言葉に、なんとも言えない表情になってしまったのは隠せたな。
「琴音って、自分に対して無頓着だと思うけど、変な部分で気にするのよね」
「カッコいい女性って、憧れの対象なのにね。自覚はないのかな?」
「ないと思うわよ。だって、琴音だし」
「私達と認識がずれているよね」
俺の話で盛り上がるの、やめてくれないかな。自然と顔が赤くなってしまう。二人のように他の生徒達も、以前の琴音ではなく、今の俺としての琴音を真っ直ぐに見てくれたら、学園生活も平和なのだが。それは、まだまだかかりそうだ。
優しい担当さんに許可を貰えて、本当に助かりました。
発売日前日からかなり不安を感じております。
原作書籍と言われているのに、原作を再編集しすぎたのが原因ですけど。
Web版、コミック版、書籍版は流れ自体は同じなのに別物として読める不思議。
ネタも色々とあったと思う書籍作業でしたが、仕事関係は書けないのが残念です。
それでは、今後も庶民堕ちをよろしくお願いします!