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127.聖夜での影響

予告詐欺となります。


聖夜の打ち上げが終わり、予想外なほど何もなく自宅へと帰りつくことが出来た。そしていつスマホが鳴るのかと待ち構えていたのだが、本当に何もないまま聖夜は終わり就寝につくことができた。


「良く考えれば聖夜のあの時間帯にラジオを聞いている人も少なかったんだろうな」


恋人や家族、友人達と一緒にいる場合が多いのだからラジオよりもテレビの方が視聴しているだろう。そして白瀬の配慮なのかもしれないが、あの一局だけで放送したのであれば更に聞いた人の人数は少なくなるはず。


「その確認の為にも連絡を取らないといけないのだが」


嫌がらせのように朝の五時に電話してやったのだが、普通に出やがった。起きたのではなく、絶対に徹夜明けなのが分かってしまう。どうせ新曲作りとかに熱中して朝を迎えたのだろう。それが白瀬という人間なのだ。


「何?」


「昨日の一件について説明を求む」


「私が投稿した。以上」


「それで終わるなよ!」


説明になっていないにも程がある。どうしてあんなことをやったのかを俺は知りたいのだ。おかげでこっちは知られたくもない恥を晒してしまったのだから。しかも全国に。せめて地方局を選んでくれよ。


「琴音は私のメールを見てからラジオを聞いた?」


「そうだが」


「なら知らなくて当然。あの時間帯は人材発掘企画をやっている。それに私が投稿しただけ。一言添えて」


「アンノーンからの一曲ですとかそんなのかよ」


「アーティスト名は伏せるように交渉はした」


「それは投稿とは言わない」


何で交渉しているんだよ。どう考えても売り出しに掛かっているじゃないか。人材発掘という点については納得できる部分はある。だって俺はデビューしている訳でもない。ただシェリーと一緒に歌っただけの素人だから。


「白瀬は私に何をさせたいんだよ」


「両方。イグジストに加入してもらいたいし、ソロとしても歌ってもらいたい」


「欲張りだな」


「その位がちょうどいい」


過去の俺だったのなら勇実をサポートする程度に考えていたはず。だけど琴音となったことで白瀬の中でも心境の変化があったのだろう。それでも最初に勇実達とセッションした際には今回みたいな考えはなかったはず。やっぱり原因はシェリーか。


「ぶっちゃけて言って、語部から私に依頼があった。誰か新しいインパクトのある歌手を知らないかと」


「そこで私を紹介するのはどうなんだよ」


「インパクトとしては十分。時期的にも琴音からの依頼の前だったから丁度いいかなと。語部にも忠告はした。絶対に曲の再放送はするなと」


「あいつなら大丈夫だと思うけどな。やっぱりあのパーソナリティーは語部だったか。聞き覚えがあったわけだ」


高校時代は声優を目指していたのだったが、どうにも自分には合わないと実感してラジオ局に売り込みにいったのだったか。下働きから始めて、今だと放送を任されるようになるとは。他の皆も順風満帆な人生を送っているのかな。


「ちなみにアンノーンの事は大好きになっている。琴音だって事は知らない」


「言ってないのかよ」


「アンノーンの存在を知っているのは私や琴音と実際に会った人たちだけ。他は知らない。デビューするまでの秘密にすると約束した」


てっきり全員に言いふらしているものだと思っていた。だけどそれを台無しにしたのは勇実達であるのは間違いない。テレビで俺の争奪戦を始めた時点で、何人かは不思議に思っているからな。勘のいい奴なら探り位入れてくるだろう。


「何でまた?」


「あまり琴音の邪魔にはなりたくないと思っている。琴音にとって私達は過去の人物。干渉しすぎなのもどうかと思うから」


「どの口が言っているんだよ、おい。本音を話せ」


思いっきり干渉しまくっている自覚がないとは言わせないぞ。いい事言っているつもりなのだろうが、俺からしてみれば戯言でしかない。だけど言葉にしたということは自覚があるのかもしれない。気を一切使っていないがな。


「デビューした時に自慢できるから。以上」


「戦争を勃発させるつもりかよ」


魔窟内での戦争なんて二度と見たくないし、関わり合いになりたくもない。そう思っているのに原因となるのが俺なのだから絶対に巻き込まれる。それを考えるだけで憂鬱になる。主に十二本家が関わってきそうで。


「今の内に言っておくけど、反響は凄く良かった。局に取材の依頼が入るほど。全部断ったらしいけど」


「そこは語部に感謝だな」


「朝のニュースには間違いなく載るとは思う。アンノーンの魅力として謎という点も含まれているから」


「あの騒ぎが再びかよ。テレビで曲を流すのか?」


「私が許可していない。あれは一回きりが条件。やるなら琴音がデビューする決意をしてくれた時、大々的にやる。それはもう色々と」


よし、デビューしないぞという決意が固まった。プロデュースするのが白瀬である時点で嫌な予感しかしない。大体、魔窟の連中が関わりだした時点で俺が凄惨な体験をするのが確定してしまうのだから了承なんて出来るか。


「高校卒業後でいい?」


「鼻息荒く私の人生設計を始めるな。あとそろそろ寝ろ。思考がおかしくなってきているぞ」


「確かに。それじゃまた喫茶店で。お休み」


あっさりと切りやがった。こういった点で言えば勇実達よりも扱いやすいのだ。しかし最後に爆弾発言していきやがったな。白瀬も喫茶店に来るのかよ。朝にニュースで昨日の件が流れた場合、誰が集まるのか考えてみたら。


「カオスだな」


出不精の癖にこういう時だけは積極性を発揮するのが訳分からん。朝から長話して日課へ出るのが遅れてしまったが、大丈夫だろう。もう冬になって肌寒いを通り越して痛いのだが、走っていれば身体も温まる。護衛の人達がどうなのかは知らないけど。


朝のニュースを確認してから喫茶店へと向かう。予想通りなのはラジオでの放送。予想外なのはレストランで歌ったことがなかったこと。考えてみれば当然か。レストランでの一件では名乗りもしていなかったからアンノーンであると気付かれる可能性が低い。それも今回の件でばれたと思うけど。


「おはようございます」


「話題の人物がやってきたか。今日も混むと思うから覚悟してくれ」


「私の所為なのですから精一杯頑張ります。ついでに言えば迷惑を掛けることになると思いますが」


「今更の話だ。琴音の知り合いはパワフルな人が多いからな」


前回ほどの来客数は見込めない。今回は姿を晒したわけでもないから。あるとすれば俺がアンノーンであると知っている同級生達や十二本家の連中。魔窟で俺が総司であると気付いている奴らが該当するのだが。一堂に集まったらどうしよう。


「琴音。覚悟を決めるしかないわよ」


「香織がサポートに入ってくれるのか。一緒に地獄を見よう」


「すでに諦めているわね」


諦めもするだろ。俺がいくら頑張っても抑えが効くような状況になるとは思えない。むしろ火に燃料をガンガン注ぎ込むような結果になるだろうな。しかも過去と今の連中が勢ぞろいするなんて状況になったら何が起きるのか。


「化学反応でも起きるかな」


「一体何を想像しているのか全然分からないわ」


「知らなくても良い事だ。開店準備始めるぞ」


想像しただけで気分が滅入る。余程運が悪くならない限り、全員が一堂に集まることはないと思う。主に一番出会ってほしくないのが、白瀬とシェリーだ。あればかりは俺も出会ってどのような反応をするのか全く分からない。


「琴音! あれはどういうことよ!」


「私達に黙ってあんなことをしているなんて知らなかったよ!」


開店早々にやってきたのは晴美と宮古のコンビ。あとは級友たちが何名かだな。これは晴美達のグループだと思って間違いないはず。開店直後にやってきたのは俺がまだ忙しくないと思っての事かな。


「ありがとうございます。開店早々にやってきて本当にありがとうございます」


「これは予想外の反応過ぎるわね」


俺の反応に晴海ですら若干引いているな。本性を見せたことがない人たちもいるから口調は直している。それでも俺が本気で感謝していることが不思議でならないだろう。だって十二本家とか過去の人物たちと被らなかったのだ。それだけでも嬉しい。


「琴音の反応も気になるけど、それよりも今日のニュースよ。本格的に活動する気なの?」


「そのつもりは一切ありません。あれはそうですね。たとえの話ですが、母親が勝手にオーディションへ応募したようなものです」


「琴音の母親が?」


「たとえの話です。私の母親は一切関係ありません」


晴海への説明で例えを出したが間違ってはいないはず。俺だって半分騙されたようなものだ。白瀬があんな行動をするのならば考え直していたかもしれない。作戦の変更を行って、別の手口を考案したはず。しかし白瀬だからで納得できてしまう自分がいるんだよな。


「それでご注文は? お客様でないのならお帰りをお願いします」


「確かに邪魔になるわね。寒かったし、暖かいものでも頼もうかな。宮古もそれでいいでしょ?」


「賛成。他のお客さんが来るまでは琴音に相手してもらうとして。一曲頼もうかな」


「お断りします」


あの曲を歌うのはあの時だけで結構。自分にとってあれほど恥ずかしいことは中々にない。過去で言えばあれ以上は存在するのだが、自爆するほど俺だって馬鹿じゃない。あれは忘れていい記憶だ。


「ぶー。私達は聞けなかったんだよ」


「宮古の言う通り。あの時間にラジオを聞いていた人なんて稀よ。連絡が回ってきた時には殆ど終わりの方だったから」


そりゃクリスマスのあの時間ならば仕方ないだろうな。車の運転中、仕事の最中の息抜き、あとは毎回あの番組を試聴している人位だろうな。それでも反響があったのは意外としか言いようがない。一体何があったんだよ。


「という訳でまだ誰も来ていない今がチャンスだよ」


「だからやりません。迷惑なお客様として強制退去して頂きますよ、宮古」


「琴音のガードが堅い」


不平不満があるだろうけど、今回は修学旅行とは違う。あの時は学生全員が参加資格があったから映像という形で提供したのだ。だけど今回は学園長と静流さんの為だけに歌ったのだから他の人に提供する気は一切ない。


「それじゃ二度と聞けないの?」


「それについては私から何とも。楽曲を提供してくれた人次第でしょうね」


白瀬がどう動くのかは俺にも分からない。でも白瀬自身も俺がデビューするまではあの曲を再び提供する気はないと思っている。そこだけは信用している。折角作った新曲であろうとも納得できる状況が整うまでは動かないのが白瀬だ。


「それに今回ので懲りました。私はソロで歌えません」


「あれだけ恥ずかしがっていれば仕方ないわね。私にとっても予想外だったけど」


「もしかして香織は聞いたの?」


「生でね。食事は美味しかったし、歌声は聞けたしで役得だったわ」


「くっ、これが親友格差か」


何だよ、その格差は。晴海へ適当に突っ込んでおき、注文された品を取りにいく。まだ店内には学生しか居らず、店長も特に言わないから接客対応としてはこれでいいのだろう。女子同士の会話とはどのようなものなのかまだ掴めていないんだよな。


「お待たせいたしました。ご注文の品でございます」


「琴音も会話に入ればいいのに」


「お仕事中ですのでご遠慮させていただきます」


あの空間に入るのは苦手なんだよな。これに関しては以前の琴音も似たようなものか。そもそも小さな琴音は人の輪に入ること自体が苦手だった気がする。そんな記憶が蘇っているのだが、正常に戻ってきたのだろうか。


「それではごゆっくり」


本音ではさっさと帰ってくれないかなと思っている。他の厄介な人物たちが一体いつやってくるのか不明だからだ。せめて誰かと絡まないでほしいと願う。

感想欄で見掛けて何となく書きました。

久しぶりに一話で纏まるか! と突っ込んだ次第です。

次へ続きます。

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