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13.事件の裏側

感想の突っ込みに驚きました。こういった人物が嫌いな人、結構いたのですね。

ただ今回は余裕がないので感想の返信は後日行います。

真面目に体調悪いので……

13.事件の裏側



昨日の問題解決から一夜が明けて、現状変わったことと言えばクラスでの印象が向上したこと、期間限定で同居人が増えたことだろう。ただ今回の問題で悪い噂が出ないとも限らないのだから油断は出来ない。


「美咲、生活費を渡しておくから食材と必要そうなものの購入をお願い」


「一万円とは太っ腹ですね」


「美咲がいる間はそれだけだから。あとレシートも全部持ってくること。一日の終わりに残金の確認もする」


「えっ」


家計簿に入力するのだからレシートは必須。残金確認も関係ない物を購入していないかどうかを調べるため。そんなことはしないだろうと思うが一応の為だ。


「嗜好品については?」


「いらない。関係ない物を買ったら咲子さんを呼ぶから」


お菓子とか俺は食わないからな。食う可能性があるとすれば美咲くらいだが楽をさせるつもりは一切ない。TVもPCも禁止にさせる。PCに関してはパスワードを設定しているから勝手に使うことは不可能。


「本家よりも厳しいです」


「息が詰まるような屋敷と制限付きの私の部屋。どっちがマシだと思う?」


「まだこちらです」


一般的な感性を持っていたのなら当然の反応だろう。何をするにしても気を遣うような場所だからな、あそこは。特に父がいる時など本当に気まずい。今は琴音が居なくなったから多少はマシになっただろう。

それに比べれば俺がいない間などゆっくりすることが出来るのだから気は楽だろう。


大まかな決め事を美咲に話してから学園へと向かう。用意されていた車はレンタカーだったが、普通の乗用車だった。高級車なんて乗りたくなかったから助かった。本家から父に内緒で車を持ってくることが出来なかったのだろう。


「それじゃ帰りも頼む」


「承りました」


さて行きますか。学園の駐車場だったから他の先生に会うのだが挨拶をしても誰も返してくれない。まだまだ当たり前の生徒になるのは遠いなと溜息を吐きつつ教室へ向かうのだが、その際に挨拶をしてくれる人もいた。

クラスメイトや下級生だったがな。下級生は情報不足だからこそ琴音のことをあまり知らないからだろう。もちろん挨拶は返していく。


「下級生に人気だねぇ」


「皆川さん、おはようございます。私のことを知らないからでしょうね」


「目下の問題は同級生と上級生だね。そっちの方も時間の問題だと思うけどさ」


「それはどういうことですか?」


「今の如月さんなら魅力的だからね。他の人達がほっとかないよ」


そんなものだろうか。一年間、同じ学び舎で過ごしていたのだから結構根深いものだと思ってんだが。琴音が絡んでいた人達は千差万別だから色んな人が知っている。それに伴って噂にもなっている。噂の中には志津音のものもあるだろうが琴音がやったというほうが信憑性がある。

特に生徒会の人達には迷惑を掛けていたな。


「あっ、おはよう」「おはよっさん~」


教室に入れば色々な人たちから挨拶された。本当に印象が変わったんだなと実感してふと微笑んだら教室中が静まり返った。

はて、何故に。


「そういえば如月さんが純粋に笑った所って初めて見たね」


「相羽さん、おはようございます。そうでしたか?」


「うん。作ったような笑みとか偶に見たような気がするけど、素で出したのって記憶にないかな」


まぁ笑えるような状況ではなかったからな。言ってしまえば学園の中には敵しかいないと思っていたから。その敵を如何に中立状態に持っていくかが当初の目的だった。予定外のハプニングが起こってクラスの印象が良くなったのは想定外だったけどな。

それが今の状況とどう繋がるのだろうかと首を傾げてしまう、


「あぁ、これは無自覚だな」


「如月さんだからで納得できないかな。ほら、こういう状況って多分初めてだと思うよ」


クラスメイトから挨拶を返される状況自体、琴音としては初めてのことだからな。入学当初からあの化粧だったから誰も関わろうとしなかったのだろう。更に言えばお嬢様だったから対応次第で何を言われるか分からなかったから。

皆川さんと相羽さんの会話が良く分からないが、状況が改善されつつということは確かだろう。いつも通り窓際の席に座って松葉杖を立て掛ける。今日は無事だった机に安堵しつつ、一応中も確認しておこう。


「流石に今日は何もなかったですね」


「あればその人は勇者だよ。目を付けられるのを分かっててやるんだから」


話を聞けば学園の掲示板に停学者のお知らせが張られていたとのこと。学園長もやってくれたな。噂が流れる前に自分から流布させるとは。これで学園での彼女の立場は無くなった。

そして学園からいなくなったとしても転校したと考えることも安易にできる。居場所のない所にいつまでも居ようとは思わないだろう。琴音みたいにそういった立ち位置を利用している人物でない限り。


「おぉ、今日も全員揃っているな」


事件が起こる前のいつも通りの風景。当たり前のように予定がないことを伝える教師。それに突っ込みを入れる生徒達。ノリのいいクラスだなと思い、だからこそ俺を受け入れてくれたのかなと考えてしまう。

学園長の作為なのか、偶然こういった人物たちが集まったのかは分からないがそれに感謝する。


「如月~、今日も放課後に学園長室に行ってくれ」


「分かりました」


あの事件の関係で知らされていないこともあったからな。積極的に知ろうとも思ってはいない。学園からいなくなったのであれば、それだけで十分だから。その先のことなんて俺が知っていても意味がないと思っている。

だが当事者が知らないでいることをあの学園長は良しとしないのだろう。

そして本日の授業だが問題が起こるはずもなくあっという間に放課後を迎えた。やはりというべきか心配した二人が学園長室まで付いてきたが昨日と同じで扉の前で別れた。さてノックをしますか。


「如月です。入っても宜しいでしょうか?」


「入ってくれ」


昨日と同じやり取り。そして入ってみれば、同じように仕事をしている学園長の姿。忙しい人だなと思いつつソファに座ると、昨日とは違って学園長は仕事を切り上げると俺の対面に座った。その際に珈琲を淹れて俺に出してくれた。


「連日、すまないな」


「いえ、構いません。それで本日の用件は?」


「卯月志津音の今後とあの教師についてだ」


予想通りといった所だな。あの時点で話さなかったのは本人が目の前にいたから、そして如月と卯月の話であったからこそ教師の話は後回しにしたのだろう。母も隣の応接室にいたのだから。


「卯月志津音は転校を受理。転校先はアガサリーヌ女学院。卒業までは出て来れないだろう」


学園に在籍中は報復を恐れる必要はない。ただ留年すれば分からないがな。する気もないが。あと志津音が転校した先の学院だが、かなり有名な所だ。

別名「監獄」だからな。卯月家も思い切ったことをする。あそこに入ることは評判を落とすことになるのにそれを厭わなかったのだろうか。


「よく卯月家が了承しましたね」


「交渉の結果だな。もし承諾しなければ退学も辞さないと話したら了承してくれた」


「それは交渉ではなく脅迫です。それと寄付金でも貰いましたか?」


「取れるものは取れるうちに貰わねば意味がないからな」


これが昨日の裏の部分。一族から退学者などが出たと知られれば家名に傷がつくどころの話ではない。それを話したのが十二本家の人間なのだから話が流れるのも当然だろうと考えたか。

なら評判を落とす方を選び、あまり公にしないでくれと寄付金を渡す。褒められる内容ではないが、どこの社会でもある話だな。


「それとあの教師は懲戒免職だ。現在は余罪を調べている」


「堂々とやり過ぎましたからね。これで残していたら学園の評判も落ちますね」


卯月家の後ろ盾を得たと勝手に勘違いして暴走した結果だろう。結局は正式な後ろ盾ではなく志津音が勝手に話を持ち掛けただけ。恐らくこの話も表に出さないで欲しいと願われているはず。

娘が勝手に買収したのだが、その結果が返ってくるのは卯月家にだからな。


「他の生徒達の目の前でのセクハラ行為と窃盗の補助だ。揉み消すことも出来ないと考えなかったのだろう」


「目撃者が多過ぎます。これを隠すのは不可能です。相手の権力を利用して好き勝手やろうとしたのではないでしょうか」


「利用されていたのは自分だと気付いていないのだろう。だが話を聞けば、卯月家にやらされたと言っているのだから救えん」


本当に救いようがない。そしてそんな人物だと分かっているからこそ学園長は他にも何かをやらかしていないのかを調べている。どのように対応するかはその後になるのか。


「復職はまず無理だな。それに話が回れば如月及び卯月に手を出したとされて職に就くのも難しいだろう。誰も懐に痛い者を入れたくはないからな」


「社会的に生きるのは難しいですね。ただそれを考えますと報復行為について考えないといけないです」


まだ確認は取れていないが俺には護衛の人達がいるから大丈夫かもしれない。だが周囲にいる人達に手を出されては後手に回らざる負えない。その可能性を未然に防いでおかないと。


「その懸念は当然だな。だから彼の行先をこちらで誘導することにした。国内と国外、どちらがいい?」


「国外で」


国内と言ってもバッタリと出くわさないも限らない。なら海外を俺は押す。


「暑いと寒いでは?」


「寒いで」


心身ともに引き締めて貰おう。そうすれば多少なりともまともな性格に更生されるかもしれない。


「カナダ辺りにするか」


「ですが強制的に海外へ連れ出して問題はないのですか?」


「こちらは稼ぎの良い職を紹介するだけさ。もちろん本人の了解は必ず得る」


その必ずの方法は知りたくないな。本人の了解と言っている割に強制力が働くのがまる見えなんですが。もしくは誘導するとか。これは逃げ出そうとしても捕まえられるな、あの教師。

それか契約書か何かに一筆書かされるか。学園長、黒いな。


「それを聞いて安心しました。これで今回の件は全て片付くことになるのですね」


「私にとっては問題が山積みだ。頭の痛い話だ」


事後処理やら対応やらで手一杯なのだろう。いつも仕事を抱えているのに更に追加される苦痛はよく分かる。いつになったら休めるのか全然目途が立たなくなるからな。

そして終わった後に訂正やら更に追加とか怒る気力すらも湧かん。


「心中お察しします。私も手伝えることがあれば何か手助けできるのですが、そういった方面は分からないので」


「言ったな?」


あっれ~、学園長の目が光ったような気がした。うん、珈琲飲んで気のせいだと思おう。落ち着こう落ち着こう。あっ、珈琲美味い。


「実は君にある人物について調査をしてほしい」


「内偵ですか?」


それなら専門の人を雇えばいい。別に俺じゃなくてもいいだろ。何で学生に教師とか事務員の人達の調査依頼をしているんだよ、この人は。


「何、難しく考える必要はない。危険もない。ただその人物の身辺調査をしてほしいだけだ」


「どうせ私に拒否権はないのですよね?」


「君が嫌だと言うのであれば強制する気はない。だが君は先程の発言を撤回する気かね?そうだとすれば私は君に幻滅だ」


「いや、どう考えても拒否させる気ないですよね」


どうせさっきの発言だって録音しているんだろうな。学園長のことだから本気で拒否したら強制しないと思う。うん、思いたい。


「それで誰ですか?」


「佐伯静流君だ」


「何か悪いことしたのですか?」


あの人が横領とか生徒に対して何かしていたとか全然想像できないんだが。それよりだったらお酒を飲んでいる方が想像できる。むしろお酒の為に横領でもしたのだろうか。


「彼女に限ってそのようなことはしていない」


「だったら何を調べるのですか?」


「彼女の好みとか交友関係、一番重要なので好いてる人物がいるかどうかだ」


うん、今ので分かった。学園長が何をしたいのか全部まるっと理解した。この悩みを俺に聞くのは絶対に間違っている言いたい。それも素で。


「学園長、私から一言。女子高生に恋愛相談しないでください!」


「君なら出来ると私の勘が言っているのだ」


勘で頼むなよ!あんたは俺の何を信頼しているんだよ!そんなフラグを立てた覚えもないぞ。それをネタに俺が何かするとは考えていないのかよ。あー、突っ込みたい。


「私の何を信頼しているんですか?」


「今の君と話していると学生と話している気がしない。それが勘の理由だ」


中身を何となく察したと言いたいのだろう。それか琴音との落差で勘違いしているか。断っていいかな、この話。無理だよな、絶対何かしらの対策を立ててるだろ、この学園長。


「それに君と佐伯君には接点があるだろ。それを使って何とかならないか?」


「接点と言っても部屋に来た位ですよ。特別に親しいというわけでもないんですから」


俺と佐伯先生の接点なんて茜さんと付き合いがあるかどうか位だ。確かにそのおかげでそのうち遊びに来る約束はしたが、それが本当になるかどうかは分からない。


「これから親しくなってほしい」


「大体教師と生徒が特別に親しくなったら不味いのではないのですか?」


「私が許す。やってくれないか?」


許すじゃねーよ!しかも疑問形の割に声がマジすぎるんだよ!やらなかったら俺はどうなるんだろう。本音でいえば断りたい。誰が人の恋路に進んで首を突っ込もうと思う。しかも何か共犯にさせられそうだし。

むしろ自分で聞けよ。


「はぁ、それとなく聞いてみますとしか言いようがありません」


「引き受けてくれるだけでありがたい。代わりに私からも君の印象改善に協力しよう」


「変な噂が流れるので真面目に止めてください!」


学園長の一声で職員の態度が一変したら面倒な事態になりそうだから勘弁してほしい。しかもこの学園長なら有言実行しそうだから曖昧な発言も出来ない。凄い面倒臭い。

はぁ、何でこうなったんだろう。

頭痛と眼球の痛みで昨日はダウンです。現在も痛いです。

しかし美咲の反応には本当に驚きました。暴走するのも大概にしろということですね。

実際美咲の設定は二通りありました。暴走した時の結果があれ。

冷静に考えた時はお菓子と甘いものに目がない残念侍女を構想しました。

どうしてこれで書かなかったというのはいつも通りに勢いで書いたからです。

構想自体あるので書き直すことも、後の話に対する影響も殆どないんですよね。

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[一言] > 君なら出来ると私の勘が言っているのだ 今思うとその勘が大当たりしたわけか
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