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12改訂版.違和感についての考察

大変申し訳ありませんが、筆者の都合により内容を思いっきり変えました。

変更点は美咲の趣味嗜好、世界についてが大まかな所です。


12.違和感についての考察


母と咲子さんが出て行ったことで部屋には俺と美咲さんが残る形となった。珈琲を飲み干して手持ち無沙汰になってしまったがこれから晩御飯を食べることを考えればまた淹れる訳にもいかない。

というか無表情に身じろぎもしない美咲さんが怖いんだが。


「琴音お嬢様、ご確認したいことがあります」


「何ですか?」


「どうして奥様に対して他人行儀だったのでしょうか?」


「気持ちの折り合いがついていないだけです」


俺だって母に対してぶっきらぼうに受け答えしていたのは分かっている。だけどあの人は琴音にとっての母であって、俺にとっての母ではない。それを意識してしまうために他人として扱ってしまうのだ。

多分、家族に会ったとしても対応は変わらないと思う。


「奥様は今までの行動に大変心を痛めております。せめてお嬢様から歩み寄っては如何ですか?」


「その内ね」


正直な所、あの人を俺が母と思って行動できるかどうかは分からない。それに歩み寄るといってもどういう行動をすればいいのかもわからない。いきなり甘え始めたのでは変に思われるのは確かだ。

実家に訪ねに行くわけにもいかない。下手に父と出会ってしまったら目も当てられない。


「ねぇ、美咲さん。私から歩み寄るとはどういうことをすればいいのでしょう」


「まずは会話をしてみるのはどうでしょうか。今までお二方はまともに会話をしたこともなかったのでしたから」


うーむ、確かに琴音の記憶でも母と日常会話をした覚えがない。琴音が避けていた部分もあったが、母もあの能面を張っていたからな。それで会話が成り立ったら逆に変なことを疑うわ。


「そうなると次に母が来た時ですね」


「そうですね。来る日は事前に連絡があると思います」


「美咲さん、何日居る気ですか?」


足の怪我なんて二週間もあれば治るぞ。いつまでも美咲さんをこの部屋に居させる気はない。一人暮らししているはずなのに侍女がいるとかどうなのよ。


「お嬢様付きとして一生お願いします」


「断る」


「あのような雰囲気最悪な屋敷で働いているのだって、給料がいいからです。だから給料が同じであればお嬢様付きとしてください」


「だから断ると言っているのです」


ぶっちゃけすぎだろ、この人。美咲さんの両親二人は如月家に恩がある感じなのに、その娘がこれなのだから。まぁ両親は両親だから、娘には関係ないだろう。


「過去を振り返って下さい。お嬢様に最後まで付き従ったのは私だけです」


「従ってくれた覚えがないんだけど」


滅茶苦茶な命令を出していた記憶があるけどな。それに従う使用人達なら俺だって信用なんてしないんだけど。どんな狂信者だよと突っ込むだろうからな。


「恩を感じてください」


「それを主に向けて言う、貴女が凄いです」


面と向かって、こういう風に話したのは初めてだが、やはり美咲さんの性格は掴みがたい。先程の会話も全て無表情で言っているために本気なのかどうかも分からない。多分、本気だろうけど。


「貴方こそ過去を振り返って下さい。私がどのような命令をしていたか」


「実現不可能な内容でしたね。言ってしまえば無茶ぶりです」


実現できないことをやれという主に従う使用人はいない。そっと傍を離れていくのが普通なのに、美咲さんだけは否定したり、面と向かって罵倒したりとまず使用人として考えられない行動をしていた。それなのにクビにならないのだから運がいいのか、それとも琴音付きから離れられないのが不運なのか。


「よく当時の私に口答え出来ましたね」


「主の為に忠告するのが侍女の役目だと思っております」


「その知識は何処で?」


「ライトノベルです」


現実的に考えれば、それはクビへの第一歩だ。主に積極的に逆らう使用人を雇用する人など滅多にいないだろう。不興を買ってクビにされるのがオチだ。というかライトノベルで得た知識って何だよ。


「馬鹿ですか」


「失礼ですね。それでこそお嬢様なのですが、一つ忠告です。敬語が似合っておりません」


「貴女も大概失礼だな」


初めて言われたぞ、そんなこと。侍女に敬語を使うのは確かに変なのだが、初対面なら基本的に敬語を使うと俺は決めている。そして初対面の相手と言うのは俺としての初対面だ。

ただし例外もいるがな。


「本当に変わりましたね。私が否定を口にしたら癇癪を起していたあのお嬢様が」


「だから私の傍にいることを決めたんじゃないのか?」


「そうですよ。というか口調が以前と違いますね。暴力的だったのが、男らしくなりましたね」


それはどう違うのだろうか。男らしいのは中身が男であるのだから間違いないが、女性としては暴力的な発言にはならないのだろうか。まぁいいや。どうせ口調を変える気はないんだからな。


「以前よりもマシになったのであれば大歓迎です」


「二週間で追い出すけどな」


「何故ですか!?」


「怪我が治ったら用済みだから」


何故も何も侍女を養うだけの費用を俺が捻出できるわけないだろ。実家からの仕送りなんて当てにできない以上、俺が稼げる金額なんて限られている。美咲が自分で稼がない限り無理だ。それは使用人としてどうかと思うがな。


「というか、そろそろ晩飯作らないといけないな」


「私がやりますので、お嬢様はごゆるりとお待ちください」


「三人分頼む。あとでもう一人来るはずだから」


茜さんの分を忘れてはいけない。仮に忘れたら何を言われるか分からないからな。下手したら泣かれるかもしれない。その後はヤケ酒のコースになるのだから、その後の被害を考えるなら忘れてはいけない。


「お嬢様、このお酒は何ですか?」


「もう一人の人が持ち込んだものだよ。別に私が買った訳でも飲む訳でもないから」


精神的には飲んでも構わないんだが、やはり今の年齢が問題になる。誰かに見られたら問題どころの話じゃすまないから一切口を付けていない。飲みたい気持ちはあるぞ、もちろん。

だけどやはり成人してからと決めている。


「そういえば貰った物を整理しておかないと」


昼休みに貰ったものをテーブルの上に広げる。惣菜のパンなどは足が早いから早めに処理しないといけないが、菓子類は後のおやつとして頂くとしよう。甘味類が増えたのは僥倖。あとの楽しみだな。

自分では率先して買おうとは思わないから、クラスメイトには感謝だ。


「お嬢様」


「うお!?今までキッチンにいたよな!」


いつの間に横にいるんだよ。思いっきり仰け反ってしまったが、美咲が見ているのは俺というよりもテーブルの上に並べている菓子類に向いている。興味があるものでもあったのだろうか。


「このお菓子は私も頂いて宜しいのでしょうか?」


「別に構わないが」


一緒に生活するのであれば別に構わないと思っている。ただ無表情の目の奥がギラギラと光っている気がするのは気のせいだろうか。何か滅茶苦茶気迫を感じるのも気のせいだろうか。


「ここに来て、一番の収穫です」


「別に普段も食べられるだろ」


「母に禁止されております」


「は?」


テーブルの上にある菓子類は別段普通のお菓子だ。屋敷で出される高価な菓子や、購入が難しいものでもない。コンビニやスーパーなどで一般的に売られるようなもの。それを食べることが禁止されているとはどういうことだろう。


「アレルギーとか?」


「いえ、単に食べ過ぎるのです」


「少しは嘘を吐くことを覚えような。なら私も禁止する」


正直に話すのも善し悪しだ。ここで黙るなり、嘘を吐くなどすれば俺だって禁止にしなかったかもしれない。ただ咲子さんが禁止にするほど食べ過ぎる美咲が悪い。むしろどんだけ食うんだよ。


「後生です!お願いします!」


「いや、土下座するほどかよ」


「甘味が心の潤いなのです!食べても運動して痩せます!ですからどうかお願い致します!」


「過去にどれだけ太ったんだよ……」


咲子さんが禁止にした理由が見えた気がする。つまりあまりに食べ過ぎて太った娘を心配した結果なのだろう。過度に食うと健康状態が不味い方向に傾くからな。あとご飯が普通に食べられなくなるのも問題なんだよ。


「咲子さんに相談して決めようか」


「駄目です。絶対に禁止されるのが目に見えています」


「だから過去に何をしたんだよ」


「ダイエット成功からのリバウンド成功です」


「自業自得だろ」


気持ちは分かるけどな。今まで我慢して鬱憤が溜まっていたのが爆発したのだろう。最初は少しずつと思って食べていたら、いつの間にか以前よりも食べてしまったとかそんなところだろう。

今までの発言から咲子さんに隠れて食べていた可能性だってある。


「もし甘味を頂けなければストライキも辞さない覚悟です!」


「なら出ていけ」


「すみませんでした。今の発言は撤回致します。真面目に働きますのでご褒美をお願いします」


「侍女が言う台詞じゃないだろ」


美咲がここにいる理由で一番なのはお菓子を食えることじゃないだろうか。なら自分から再び琴音の所に来たというのも納得できる。母からの命令であったという可能性もあるだろうが、美咲の様子から隠れてでも食う気だったのだろう。食欲に忠実だな。


「なら一日一個」


「えっと、一袋では駄目でしょうか?」


「あぁ、勘違いしているな。箱として考えるなら一日一箱まで。あと二週間後に体重が五キロ増えたら咲子さんに報告するから」


「ありがとうございます!」


暴飲暴食でもしない限り、そこまで増えるとは思えないからな。外で食うとなっても、この条件なら極端なことにならないだろう。ただ晩御飯が食べれないことになれば忠告はしておくが。

取り敢えず美咲の為に今ある在庫の数でも控えておくか。俺が把握できていないんじゃ管理なんて出来ないからな。


「それでは早速」


「いいから晩御飯を作れよ!」


お菓子に手を伸ばそうとした美咲の手を叩き落とす。まずは仕事しろと目で訴えかけるとお預けを食らった犬みたいな雰囲気を出している。本当に無表情だから感情が掴みづらいな。過去に咲子さんからどんなことをされたんだよ。


「晩御飯食べた後ならいいから」


「お嬢様に一生付いていきます」


「いらない」


厄介な拾い物をしてしまったというのが本音だ。面倒臭い侍女だよ、全く。

美咲の性格をこちらにした理由は後の方で書き易いからというのが主な理由です。

あっちの性格だと筆者の知識がないので、全然書けなくなるということが分かりました。

復帰一番に書く話じゃなかった気もしますが。

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― 新着の感想 ―
[一言] 心の声じゃなく、胃袋の声が漏れやすすぎるメイドだな笑笑
[一言] ラノベで使用人の心得… 魔術士オーフェンのキース・ロイヤルか…
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