ドリアード緑の精霊
徒然です。
それは大きな樫の木。
何年も前からのお気に入りで、時折訪れる私を癒やしてくれた。
ある夜、突如としてそこに女が倒れていた。
寒空の元、見慣れぬ薄着の風変わりな女だった。
そのまま放っておけば良い物を、
私は迂闊にもそれを持ち帰ってしまった。
土と草の上で横たわる女を、抱き上げると、
持ち上げた反動で首が後ろに傾き、その顔がはっきりと現れ、
ついで、白い喉から大きく開いた胸元が私の目の前に晒された。
何と言う無防備な姿だろうか。
素材の薄さもさることながら、
そのスカートの裾の短さにも驚かされた。
抱き上げると、膝までのスカートが、更にめくれ、
滑らかな腿が半分も露わになっていた。
今まで感じたことの無いような、密なる動悸に苛まれながら、
私は彼女の半身をマントに隠し、待たせてある馬車へと急いでしまった。
樫の木に潜む精霊、ドリアード。
人間を木の中に引きずり込もうとする、清らかであり妖艶なる乙女。
私は抱き上げた瞬間、思わず木の中には引きずり込まれまいと、
直ぐさま樫の木から離れ、その場を後にした。
それらのものは、今思えば、
言い訳でしかなかったのかもしれないが。
ほんの小さな出来事が、人の生を大きく変える。
そんな運命があるならば、私も身を委ねてみたい。
徒然です。