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神の創りし新世界より A  作者: ゴウベン
第一部 神のつくりし
4/42

《二日目》 日曜 全日 混沌の惑星

 もしかしたらこの世界の終末が来るのかもしれない。

 昨日から慌てふためいていた世界の雰囲気は更なる驚愕をもってこれを抑えられた。

 その驚愕の事実とはあの惑星はそこに出現した時点からすでにこの太陽系全ての天体運動に自らの重力の影響を及ぼしていないということだった。つまり新聞や他の報道機関でいうところの今の状況は、あの惑星が出現する前と後での太陽系内の全天体の運行速度は微塵も変わっていないというものだったのだ。

 その事実は世界中の科学者たちを絶句させた。あの巨大な地球型惑星の性質から考えられる密度とその途方もない体積から予想される、存在してなければおかしい膨大な質量が存在しない。土星よりも一回りほど小さく天王星や海王星よりも一回りぐらい大きい謎の地球型惑星はその謎の重力構成からも明らかなとおり人類の叡智を遥かに超越した存在だった。

 謎の新惑星の出現から逆算して重力の影響速度を探ろうとした天文学者たちの試みは無駄な失敗に終わったがそこからもたらされた新たな情報は人々にさらなる謎を突き付けていた。

「なんかすごい混乱としてるわねえ」

 章子の母親は新聞を眺めながらそう独り言ちていたものだった。

 実際世界は混乱していた。それは火を見るよりも明らかであり人々の思うところでもあっただろう。

 しかし、その謎に対して唯一の答えを出すことのできる人物とはまた章子は会えないでいた。

 会いたいと願えば会えると言ったあの言葉は嘘だったのだろうか? これほど星に願うように両手を組んで待ち続けているのに昨日はとうとう会えなかった。

 次第に明るみになっていく謎の巨大な惑星の全貌は、章子にあの人物との再会を強く望ませるのに十分な役割を果たしていた。しかしその思いとは裏腹に一向にあの人物が目の前に現れる気配はない。

 しびれを切らした章子は休日の昼前にバッグをもって外に出た。

 どうやらこの分だと今日も会えないだろうという予感がしていた。

「もしかしたら、今頃、もう一人の子に会ってるのかな」

 そう思えるぐらいにあの人物はどうやら章子よりももう一人の少年の方を重要視している感じに見受けられる。

 章子は誰にそう言われたわけでもないのに、自分だけがどこか仲間外れにされているような感覚に陥っていた。  

(せめて神様がもう一人を隠すなら、自分からそのもう一人を探して見せる)

 思い当たる節も手がかりもないのに章子はそう思って外に飛び出した。自分では堂々とそう思っていたが結局のところ、少しでも気晴らしになればそれでよかった。

 しかし、そんな少女の杞憂の外でも世界は勝手に動いていく。

 次第に明らかになっていくあの惑星の新たな情報。人類と同等かそれ以上の知的生命体による高度な文明社会の可能性、そして広大な超大陸級の陸地と果てしない大海洋の存在。

 章子が宛てのない捜索から帰ってきたときには報道各社がその情報を大々的に伝えていた。

 それは人類にとって思ってもみない新天地の出現に思えた。

 人々は唐突な絶望から、新たな夢を見つけようとしていた。

 その謎の惑星にとうとう今夜名前が付いた。

 その惑星の名は英名で「ケイオス」 ギリシャ神話の中に出てくる混沌の神の名前だ。どうやら学名の方が「カオス」という名前になるらしい。こちらの名前の方が日本人にはなじみがあるだろう。

 これ以上、文字通りにこの世界にとって混沌をもたらしているのだからこれほど当てはまる名前もない。

 その混沌の惑星はやはり少女の心も混沌に映していた。



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