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神の創りし新世界より A  作者: ゴウベン
第四部 赤い剣と鳥
38/42

1.魔術の世界

 第五世界を後にして章子たち三人が次に辿り着いたのは二番目の時代、第二世界だった。

 第二世界は異世界があるならだれもが憧れる待ちに待った剣と魔術の世界なのだという。

 だからか、第五もそうだったが第二世界もこれがまた独特な雰囲気をもっていた。

 それはすでにこの到着した港の賑やかさからも現われていた。

 今日は特段何かのお祭りがあるわけでも無さそうなのに、着いた港からすでに人々が行き交い活気づいている。

 それを見て章子と昇は目を白黒させていた。

 自分たちが歓迎されている訳でも無いのに、ただの一港がここまで活気づいているのがなぜなのか分からず戸惑っていた。

 そこへ地上から一人の少女が甲板から続く下り階段の下で待っているのが見えた。

 少女は三人を認めると手を挙げてお辞儀をするのがわかる。

「ようこそ、わが魔術と芸術の国ラティンへ。あなた方が第一世界三日月の徒・特別使節団のオリルさまご一行ですね?

 私は今日よりあなた様方三名様のこの第二世界での案内役を申し付けられました。ヴァッハ魔導魔術院立魔術アカデミー高等過程第三学年生在籍生、サマンサ・オーリーブと申します。

 短い間ですが、これからよろしくお願いしますね」

 にこりと笑うそれは魔術師らしい黒い三角帽をかぶった短いオレンジ毛のはっきりした同年代の少女だった。

 その笑顔を見て訝しんだのはオリルだった。

「また女の子なんですか?」

 その言葉の意味が分からなかったのだろう。

 サマンサはその細い首を傾げた。

「どういう意味でしょう?」

「いえ」

 とオリルは一つ咳払いをする。

「こっちに立つ半野木昇は女子に見境がないので、正直あなたが心配なんです」

「ちょっとっ?」

 かなり辛辣な自己紹介のされ方に昇がオリルに叫んだ。

「なによ」

「いや、何よじゃないよ。そこまでヒドイの? おれって?」

「章子にきいてみれば?」

 オリルに振られ昇は章子に振り向く。

「咲川さん?」

 その機嫌を伺う様な目が本当に気持ち悪いと章子は思った。実際問題、本当に生理的に受け付けない。

 だから言ってやった。

「昇君てさ」

「うん?」

「落差がひどいよね」

「え?」

「なんか所々で蝶になったり蛾になったり、落差がひどい」

「蛾?」

 昇は唖然となっている。どうやら聞き間違えかと思っているようだ。

「そう蛾」

「蛾って、あの蛾?」

「そう。あの蛾!」

 最後の蛾という部分は特に強調して言ってやった。

 他の女子に目移りしてるからこういう目にあうんだ。

 半ば章子は本気でそう思っていた。

「蛾……?、おれが蛾……?」

 茫然となる昇を見ているとまるで自分の娘に一緒にお風呂に入ることを拒否された時の自分の父親の姿に重なる。

(ああ、あの時のお父さんもこんな顔をしてた)

 章子はしみじみとそう思った。

「あの……、もうそろそろいいでしょうか?」

 そこで、おそるおそる聞いてきたのはサマンサだった。

「ええ、大丈夫です。こんな男は放っておいて行きましょ」

 章子とオリルは結託するようにサマンサの両隣を揃って歩いていく。

 昇は愕然となりながらも身をせせこましながらその三人のあとをおそるおそる着いていった。

「みなさんはこれからどこか見ておきたいものはありますか?」

 サマンサは自分が先導している三人に言う。

「何か観光名所的なものはあるんですか?」

「どうでしょう。それなりにあるとは思うんですが私たちにとっては当たり前のようなものばかりですから」

 サマンサはただ笑って言った。

「我が第二世界、三大国家の一つであるグレーセなら数千万年の歴史を持つ古代教会遺跡群を所有する聖典教会。ヘブラなら王立宝物院などが公開されていますが、我がラティンは魔術だけが取り柄なので魔術師たちの使う魔具、魔装をつくる魔術工房がせいぜいです」

「グレーセ? へブラ?」

 章子の首を傾げる様子を見てサマンサはああと思い到る。

「それならどうですか? これから魔導魔術院直轄の国立魔術大図書院に行って見ましょう。そこでこの第二世界の国々をかいつまんでご紹介しますよ」

 章子たちはサマンサのその厚意に甘えることにした。



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