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神の創りし新世界より A  作者: ゴウベン
第三部 覇都の遺産
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4.水の槍

 数さえ入力すれば確実に再現し発動する魔法装置。

 それがその水の槍ペンティスラのもつ、単純かつシンプルであるがゆえに非常に強力無比な力だった。

「でも、きっとそれがいけなかったんです」

 サマリナの手は冷たいガラスの大窓に触れていた。

 大窓の向こうでは仰々しいまでに大規模な数々の機械が無機的に動いている。

 その光景はまるでどこか戦艦クラスの船舶を収容できる造船基地ドックを思わせた。

「この施設に水槍ペンティスラが持ち込まれたのはある意味では必然でした。

 その当時の私たちの世界は欲望の渦に巻き込まれていたんです」

 サマリナの哀しげな目がまたもや章子たち三人に向けられる。

「皆さんにとって、救われた世界とはどういうものですか?」

 言ってサマリナは自分で首を振る。

「いえ、いいんです。私たちの世界にとって救われた世界とは各国の自己都合だけを最優先させた人の欲望が如実に現われる、それはそれはとても目を背けたくなる偏った世界でした」

 サマリナの言ってることは章子にも分かった。

 この第五世界を構成する国々はその全てが諸島国家だ。この第五の時代は大陸という大地の存在しない島国だけで構成されていた時代。

 サマリナはそのあたりの事情も付け加えながら続ける。

「ある国は救われた世界での自国領土を広げようとしていました。またある国では資源を、またある国ではいまだ知らぬ遥か先の未来技術を求めました。

 それだけならまだよかったんです。

 しかしあろうことか、ある国では敵対する国を救済された世界では抹殺しようと考えていました」

 章子はあまりのことに口元を抑えた。

 それはともすれば自分たちの世界にも確実に当てはまることが半ば無意識的に心のどこかで確信していたからかもしれなかったから。

「そんな一国の横暴な願望でさえ再現可能とするペンティスラの力はもはや各国の欲望の象徴でしかありませんでした。その所有権を巡って各国が火花を散らしたんです。しかもそれが原因で戦争まで起ころうとしていたんですよ。

 もうみんなが忘れてしまっていたんです。

 地球環境の危機が目の前に迫っていることも。

 そんなことをしてる場合じゃないのに」

 欲望は人を惑わせる。その言葉をここまで忠実に再現させたものはない。

「でもそれに気づかせてくれたのは、皮肉にも悪化していく地球環境でした。遅くなった自転速度で徐々に長くなっていく日照時間と夜は人々に不安定な日常生活を強いらせたのです」

 それを受けて第五の各国は折半策を模索し始めたという。

「槍に直接救済数値を入力しないでこの地球を保たせる方法を見つけ出そうとしたのです。そしていくばくかの月日が経った頃、ある結論に辿り着きました」

「それが、その槍に命を与えること?」

 オリルの言葉にサマリナは頷く。

「幸いにもその槍には流動的な部分が存在しました。私たち第五世界はそこに仲裁策を見出したのです」

 槍に命を与えそれを地球内部に投入して、この地球の内部活動を活性化させる試み。

「各国はその提案を採択しました。地球の救われる形そのものをその槍自身に委ねたのです」

「結果、地球の体積は増大し僕たちの時代まで安定するようになる」

「そうです。そしてあの地球ではいまもその内部に槍はあるのです」

 サマリナはだれに向けるでもなく言った。

「私たちに命を与えられた槍が」

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