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悩んだ挙句、帰宅と同時にパソコンの電源を入れる創流。
教会とか何とかの話を素人が考えても結論は出ない。
だから先祖の人に直接相談してみようと思ったのだ。
ゲームが立ち上がるまでの間を利用して、バイトの時に貰ったジャージに着替える創流。
最近はこればっかり着ている。
今まではダサイ運動着だと思って敬遠していたが、一度着てみるとその快適さがクセになった。
部屋着としては最強ではないだろうか。
高校を卒業したら、今使っている学校のジャージも普段着にするだろう。
とかやっている内にゲームが立ち上がったので、早速ワールド全体サーチを利用して先祖の人を探す。
確か、ノトルニスって名前だったな。
居た。
高レベル向けダンジョンに挑戦している様だ。
十人以上の人とパーティーを組んで遊んでいるっぽい。
大勢の人と連携して強敵と戦っているので、今話し掛けたらチャットログが流れてしまうかも知れないな。
じゃ、チャットではなくてメッセージで話し掛けるか。
メッセージとは、ゲーム内限定のメールみたいな物だ。
これなら手が開いた時に読めるだろう。
一分ほど待ってみても返事が来ないので、やっぱり忙しいらしい。
夕飯の準備でもしながら待ってみよう。
そして十五分ほど経つと、メッセージ到着を知らせる電子音が鳴った。
やっと返事が来たか。
野菜炒めを作っていた手を止め、メッセージを開く。
「あの子の事ならメッセージで、ゲームの事ならチャットで『あ』とだけ返事をしてください」
メッセージに『あ』と書いて返信する。
今度はすぐにメッセージでの返信が来た。
「貴方は敵に追跡されている可能性が有ります。
このまま電子的な会話を続けると、こちらの位置を逆探知される可能性が有ります。
なので、明日、リアルで接触します。
合い言葉は『強さは?』です。返答は分かりますね?その時に答えてください」
ネトゲのチャットで逆探知なんか出来るんだろうか。
どちらにせよ、コンピューターの仕組みに疎い創流は相手の言う通りにするしかない。
ん?待てよ?
リアルで接触する?
三百年も生きている人が会いに来るのか?
うわ、緊張する!
人間を憎んでるダンピール怖い!
機嫌を損ねたら噛み付かれそう!
キーボードから手を離し、でかい身体を強張らせて怯える創流。
でもまぁ、こっちはクウェイルの友人だし、問答無用で攻撃されたりはしないだろう。
一区切りしたので、ゲームを点けっ放しにして夕飯を食べる。
その数分後、クウェイルがインして来た。
「あれ?創流がもう居る。今日は早いね」
時計を見ると、19時半。
約束が無い時はこれくらいの時間にインしてるのか。
「ちょっと気になる事が有ってね。でも動けるのはいつもの時間だから、ちょっと待っててね」
「分かった。私も合成とかするから、また後でね」
20時を過ぎても茎宮先輩はインして来なかったので、適当に野良の募集に乗っかる事にした。
先祖の人がやる様な廃人コンテンツは無理なので、身の丈に有った物で遊ぶ。
久しぶりの多人数戦闘で緊張したが、特に問題無くクリア出来た。
それはとても楽しかったのだが、何も知らずにはしゃいでいるクウェイルを見ていたら、少しだけ心が痛んだ。
創流と先祖の人はゲーム内で会話をした事が有る、と言う部分は打ち明けておいた方が良い気がする。
チャンスが有れば、それも明日相談してみるか。




