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ダンピール・エピオルニス  作者: 宗園やや
ソレイユ・ソワレ
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祖父の部屋とは対照的な、必要最低限の家具しかないフローリングの部屋に男性の石像が立っていた。

部屋の隅で浮かんでいる青白い光に照らされている石像は、何かを言いたそうに口を開いている。


「間違い無い。エーレンスレイヤーさんだわ」


石像の前に立ち、顔を確認するテスピス。

その横に立ったエピオルは、石像を見上げて複雑な表情になった。


「私にそっくり」


その言葉を聞いたテスピスが笑う。


「ふふ。逆よ。エピオルが彼に似てるのよ」


「そっか。ねぇ、ソフォクレス。ちょっと私を抱き上げてくれる?」


「良いよ」


ソフォクレスがエピオルを抱き上げると、父と娘の顔の高さが同じになった。


「ねぇ、お父さん。お母さん、ずっと待ってたんだよ。バカ」


ペチン、と石像の頬を叩くエピオル。

固く、冷たい。

埃も積もっている。

連れ帰る為に探していた人物だが、重いので持って帰る事は出来ないだろう。


「ありがとう、ソフォクレス。下して」


「もう良いのか?」


「うん。声が聞こえてるとは思えないし。生きてるかどうかも怪しいよね、コレ。あ、手紙は残そう。……紙って、百年も持つかな?」


床に立ったエピオルは、旅の荷物からインクと白紙を取り出した。

旅先で地図を描かなければならなくなった時用に用意していた物なので、普通よりは長持ちするはず。

だが、百年はどうだろうか。

全員が首を傾げる。


「あ、それならこれはどう?これに文字を彫れば、確実に百年持つわ」


木の机を指差すテスピス。

しかしエピオルは不満顔になる。


「良いアイデアだけど、書くのに滅茶苦茶時間掛かりそう」


「構わないさ。何年も掛けてエーレンスレイヤーさんを捜すつもりだったんだろう?それに比べれば大した労力じゃない」


机に積っている埃を手で払うソフォクレス。

地味ながらも高級そうな机だが、遠慮する気は無い。

弁償しろとは言われないだろうし。


「じゃ、お母さんと私の名前を彫って、……お母さんが亡くなった事と、私があの村でずっと待っている事を伝えれば良い、かな?」


「そうね。この机の広さを考えると、それくらいね。じゃ、一番力持ちの人に彫って貰おうかしら」


ソフォクレスに短剣を渡すテスピス。


「私か」


「エピオルはさっき取り出していた紙に伝えたい文を書いて。出来るだけ短く、でも詳しくね」


「うん」


「その間、私はペンで名前の下書きをするわ。ソフォクレスはそれに沿って机を彫ってくれる?」


「分かった」


役割分担が決まったので、三人はそれぞれの仕事に取り掛かった。

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