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ダンピール・エピオルニス  作者: 宗園やや
ソレイユ・ソワレ
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短い階段を登り、一本道の廊下を進み、大きな木の扉を開ける。

そうした先に有ったのは石造りの大部屋だった。


「またこんな部屋?」


エピオルの声が石の壁に反射する。

先程の大部屋と全く同じく、家具や絨毯等が一切無い侘しい風景。


「ここには魔物が居ませんね」


踵を鳴らして歩くテスピス。

足音に反応した何かが動く事も無い。

長女とは別の方向に行ったソフォクレスは、壁を爪先で蹴りながら頭を掻いた。


「参った。行き止まりだ」


「隠し扉とかが有るはず。でないと、魔方陣がここに繋がっている意味が無いもの」


言いながら掌で石の壁を叩くテスピス。

エピオルも周囲を見渡し、不自然な部分が無いかを探る。


「そうだね。夢魔は私を誘拐する為に魔法陣を描いた。その先でさっきの鼠犬に食べられて終わりな訳が無い」


「恐らくあの魔物は、誘拐された人間の救出に来た人間、もしくは知らずに迷い込んだ人間を処理する為に居るんでしょう」


「その通りで御座います」


地の奥底から響く様な声がテスピスの言葉を肯定した。


「誰だ!」


ソフォクレスの叫びを合図にエピオルとテスピスが剣を抜く。


「私に剣は効きません。そして、私は貴女達に危害を加えません。どうか剣をお納めください」


「姿を見せなさい!」


テスピスが威圧的に言うと、部屋の中心に黒い影がぼんやりと現れた。

その影が頭を下げる様な動作をする。


「畏まりました。しかし、人間のお二人は私の姿を直視なさいませぬ様、お気を付けください」


「ソフォクレス、本当に見ちゃダメよ!彼は死神だわ!魂が抜けちゃうわよ!」


「ああ。あの声は私達が誘拐された時に聞いた。きっとエーレンスレイヤーさんの事を知っているはずだ」


テスピスとソフォクレスは、お互いを見詰めて会話をする。

人間ではないエピオルは試しに黒い影をチラ見してみたが、別に何とも無い。

しかし怖いので、影を視界の端に入れておくに留める。

影を見れるエピオルにしか奴の怪しい動きを注意出来ないだろうから。


「貴方はエーレンスレイヤーさんをご存知ですか?」


エピオルのつむじを見詰めながら訊くテスピス。

この子がその人の娘だと言う事を伝えて良い物だろうか。


「その質問の答えは魔方陣の向こうに有ります。答えを望むのならどうぞお乗りください。この城の主様がお待ちで御座います」


黒い影が蠢くと、エピオルの足元に魔方陣が浮かび上がった。

夢魔が作った物とは違い、真四角の中に五芒星が有るだけの質素な物だ。


「……どうする?」


エピオルが訊くと、テスピスとソフォクレスが魔方陣の前に集まった。


「行くしか道は無いでしょう。危害を加えないって言っていますし」


「しかし、信用しても良いと思うか?」


腕を組んで考える三人。


「そうだ。主って誰だろう?訊いてみようか?」


二人が頷いたので、発案者のエピオルが死神に質問した。


「あの、主って誰ですか?」


「エーレンスレイヤー様のお父上です」


「ええ?!」


揃って驚きの声を上げた三人は、円陣の形を取る。

そして小声で話し合うテスピスとエピオル。


「つまり、チークって夢魔は、エーレンスレイヤーさんのお父さんの手下だったって事?エピオルを何とかしようとしたのかな?」


「でも、チークは私がダンピールだって知らなかったよ?偶然だと思うけど」


ソフォクレスも顎に手を当てて考える。


「……相手の真意が見えないな……」


「うーん。でも、本当に私のお爺さんだったら、色々知ってるかも。折角ここまで来たんだから、ちょっとくらい危険でも行こうよ」


エピオルがそう言うと、数秒経ってからテスピスが頷いた。


「そうね。行くしかないでしょう。良いわね?ソフォクレス」


「ああ。行き止まりで悩んでも時間の無駄だしな」


頷き有った三人は、魔方陣を見下ろす。


「ただ入るだけで良いのね?死神さん」


エピオルが訊くと、黒い影が恭しく一礼した。


「左様で御座います」


「じゃ、行こう」


意を決した三人は、足並みを揃えて魔方陣に飛び込んだ。

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