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06 愛
「ただいま、っと」
週に一回の買い出しから城に帰って来たノトルは、自分を抱き上げていたエーレンの腕から解放された。
「お疲れ様でした、エーレン。ありがとう」
「いいえ。私はこれから出掛けますので、戸締りに注意してくださいね」
「はい。じゃ、失礼します。……よいしょっと!」
ドレスの乱れを直したノトルは、買い出し用の大バッグを持ってキッチンに向かう。
バッグが重いので、足元がおぼついていない。
彼女がこの城に来てから半年が経った。
魔界の空気や水で体調を崩す事も無く、ホームシックに掛かっている様子も無い。
むしろ生き生きしている。
そんなノトルを見送ったエーレンは、近くの窓から外を見た。
十六夜の月がほど良い高さに有り、魔界の夜を照らしている。
(そろそろ時間だ。行きたくはないが、行くか)
エーレンは溜息を漏らしながら自分の部屋に向かった。
パーティー用の正装に着替える為に。