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58 仲間
月明かりの中、エピオルはやっと自分の家に帰って来た。
昨日の朝から雪がちら付き始め、もう野宿は出来ないからと徹夜で歩いたのでこの時間になったのだ。
教会の人間はもう居ないが、ドアと窓の全てに鍵が掛かっているので、食料庫の通気口から入った。
何ヶ月も放ったらかしだった家の中は、カビと埃の臭いが酷かった。
今は夜中だから空気の入れ替えは出来ない。
竈が死んでいるからロウソクも点けられない。
仕方無く長旅でボロボロになった服を脱ぎ捨て、替える事が出来なかった下着も放り投げ、全裸でノトルのベッドに入った。
とても埃臭かったが、少しだけ母の薫りが残っていた。
だからとても安心したが、こうして眠ると明日にはエピオルの匂いが勝ってしまうだろう。
この薫りは永遠に帰って来ない。
それが悲しくて悲しくて、どうしようもない喪失感で枕を濡らしながら眠りに落ちた。




