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「人の数が凄いですね、フィオ!」
「首都だからね。はぐれちゃダメよ、エピオル」
息苦しくなるほどの人出が有る商店街を歩く少女と幼女。
人混みに慣れていない二人が四苦八苦しながら前に進んでいると、幼女の金色の瞳が輝いた。
「フィオ、フィオ!凄い量の果物ですよ!!今日はお祭りでしょうか?!」
小さな手が指し示している先には普通の果物屋が有る。
首都では当たり前の店だが、田舎者の幼女には特別な出店に見える様だ。
「分かったから落ち着きなさい。ホラ、エピオルのフードがずれちゃってる」
「え?ホント?」
エピオルは編み上げた銀髪を隠す為のフードの乱れを直した。
フィオもエルフの証である長い耳を隠す為のフードが乱れていないかを確認する。
「さ、先を急ぐよ、エピオル」
「うー、あの変な果物を食べてみたいですぅ~!」
「後でね。ここに何の目的で来たの?宿と教会を探さないといけないでしょ?ホラホラ!」
フィオは果物から目が離せなくなっているエピオルの腕を引いて商店街の脇道に入った。
誘惑が多い道を通ると日が暮れそうだから。




