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ノトルが朝食を作っていると、教会の男が窓越しに話し掛けて来た。
昨夜は庭で野宿した様だ。
「おはようございます。娘さんは帰って来ませんでしたね」
「おはようございます。そうですね」
「……二人分ですね」
「そうですね」
男がスープ鍋を覗いたので、ノトルは自然な動作で鍋に蓋をした。
「ノトルニスさん。時間が有りませんので、朝食が済みましたら出発しましょう。宜しいですか?」
「構いませんよ」
サラリと返事をするノトル。
「……失礼します」
男は窓を閉め、玄関の前で立っているリーダーに近付いた。
そして小声で会話する。
「本当に娘は居るのでしょうか?幼い娘を残して旅立つと言ったのに、顔色ひとつ変えませんよ」
「村人や行商人に聞く限りでは、銀髪で金の瞳の娘は確かに存在する」
「しかし、幼い娘が一晩帰って来ないなんて事が有り得るでしょうか。年頃なら夜遊びと言う事も有りますが」
「常識で考えれば有り得ないだろうな……。村人が匿っているのかも知れない。二人残して村を探ってみるか」
「期間はどうします?」
「一ヶ月、は長いか。半月くらいだな。そこまで待って出て来ないのなら、本当は居ないか、別の村に逃がされたか、だろうな」
「分かりました」
「別の村に逃がされた証拠が見付かったら村人全員が後悔する事になると脅せば白黒ハッキリするだろう」
「はい」




