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ダンピール・エピオルニス  作者: 宗園やや
ソレイユ・ソワレ
45/104

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青の淵に居るダスターとエピオルは、向かい合って一礼した。

極東式の礼にも慣れて来た。


「予告していた通り、今日は軽く組手をやる。動き易い服は持って来たか?」


「はい。ほら」


エヘヘと笑いながらスカートを捲り上げたエピオルは、ドレスの下に着ている中華風の服をダスターに見せた。


「お母さんに作って貰ったんですよ、拳法着。お外で着替えるのは嫌だから着て来たの」


「そ、そうか」


何故かダスターの顔が赤くなる。

それを誤魔化す様に話を前に進める筋肉男。


「それでは、……むっ!」


ダスターの表情が急に険しくなり、片手でエピオルの動きを制した。


(聖の気配を持つ者が来る。何者だ?)


「どうしたんですか?」


不思議がってダスターの視線の先を懸命に見ようとするエピオル。

ここは村の水源なので、水泥棒が悪い事をしない様にと視界が開けている。

ここから村が見えるし、村からもここが見える。

何かあったのかと目を凝らしてみても、いつも通りののどかな風景が広がっているだけだ。


(目的は俺か?エピオルか?どちらにしても見付かる訳には行かないな)


「エピオル、俺にしっかりと掴まれ!」


「え?どうしたんですか?」


「怪しい者がこの付近に居る。一先ず逃げよう」


ダスターはエピオルを抱き上げ、村の反対側に位置する林の中に駆け込んだ。


「下を見るなよ」


「うっわぁ~!」


そして高めの木を一気に登ったダスターは、てっぺん近くの枝にエピオルを座らせた。


「危ないから迎えに来るまで物音を立てるなよ」


「迎えにって、ダスターはどこに行くんですか?」


「このすぐ下で怪しい気配の正体を探ってみる。大丈夫だ、そいつに見付かる様なヘマはしない」


ダスターは木を降り、林の陰で気配を消した。

しばらくすると教会の服を着た一人の若い男が走って来て、いつも淵で釣りをしているお爺さんに話し掛けた。


「すみません。ひとつお伺いしたいのですが、ここに金色の瞳と銀色の髪を持った少女が来ませんでしたか?」


しかしお爺さんは反応しない。


「もしもーし!」


耳が遠いのかと大声を出してみたが、返って来るのは滝の音だけだった。

呼吸をしているから生きてはいる。


「ふう……。失礼しました」


無関係だと思われる年寄りにこだわっても仕方が無いので、一人で滝の裏や林の中を捜してみる男。

だが何も見付ける事は出来なかった。

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