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「あのさぁ、ジンメル。どうして付いて来るの?」
「……僕も危ない所に行きたくないから。……嫌なら言って、帰るから」
「あっそう。私達の方に来ても面白くないだろうけどね」
エピオルとミンナは村の外れを歩く。
植えているのか自生しているのかは知らないが、小さくて可愛い季節の花が道に沿って咲いているから。
それらを眺めるのは楽しいが、一歩後ろを付いて来るジンメルは楽しくないと思う。
男の子だし。
「……痛……」
突然しゃがみ込むエピオル。
驚いたミンナとジンメルが銀髪少女を囲む。
そしてその顔を見てもう一度驚く。
「どうしたの?うっわ!お顔が真っ赤だよ、エピオル!」
「手の甲もよ。あーあ、今日はもう最悪。雲が出てるから大丈夫かと思ってたのに、日差しは強かったみたい。帰って冷やさなきゃ」
広げている日傘を睨み付けながら愚痴るエピオル。
これ、もしかしたら役立たずかも知れない。
「あー。日に弱いって、こう言う事なんだ。大変。だったら青の淵に行かない?あそこは近くに滝が有って涼しいし」
「え?どうして青の淵なの?」
エピオルの金色の瞳に凝視され、ミンナは反射的に顎を引く。
変な事を言ってしまったのかと思ったが、別に変じゃないと思い直す。
「え?どうしてって、だから涼しいし、木陰も多いし、ここから近い水場だし……」
「そうね。確かにそうね」
大袈裟に頷くエピオル。
「エピオル?今日は変だよ?どうしたの?」
「それが分からないからイライラしてるのよ。まぁ良いや、行こう」
このまま突っ立っていても日焼けは酷くなる一方だ。
だから三人は青の淵に向った。




