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村の広場にいつもの五人が集まった。
今日は市の日なので大勢の大人達が忙しそうに行き交っている。
「どうしたの?エピオル」
建物の陰で呆けているエピオルの顔を覗くミンナ。
珍しく元気が無い。
「ん?うん、ちょっとね」
エピオルは日傘を持ち直しながら素っ気無い返事をした。
母が何か企んでいる。
それが何かが分からないので、凄く気持ち悪い。
勿論、エピオルを騙すつもりではないだろう。
青の淵に追い払って一人で美味しい物を食べようとか、そう言う感じでもない。
しかし、ダスターと言う他人が関わっているのに詳しく説明してくれないのが気に食わない。
「よーし、今日は夕向いの丘に行くぞ」
ナトルプとクルシィウスはまた変な所に行くつもりらしい。
危険な冒険をするのは楽しい。
新しい発見や綺麗な風景が有るから。
しかし冷静に考えると、親に怒られるリスクを背負っているだけの全く無意味なヒマ潰しでしかない。
(……そう言えば、なんで私はナトルプ達と遊ぶんだろう)
「じゃ、出発!」
「私、行かない」
右手を突き上げて号令をかけたナトルプに冷たい声で応えるエピオル。
「どうして!?」
「良いじゃない、そんな事はどうでも!私がどこに行こうと私の勝手でしょ?」
フンッ、と鼻を鳴らしたエピオルは、足音を立てて広場を後にした。
「あ、待ってよ、エピオルー!」
ミンナもその後を追い掛けて行く。
「何だよ、あいつ」
呆気に取られたナトルプとクルシィウスは、ジンメルも居なくなっている事に気が付かなかった。




