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「あれ?」
「ん?」
エピオルが突然声を出したので、ミンナは絵本から目を上げた。
「どうしたの?」
「ジンメルが居る」
「え?」
エピオルの視線の先を見るミンナ。
本当にジンメルが本棚の前で立ったまま絵本を読んでいた。
名前を呼ばれた無口な男の子は、ゆっくりとエピオルに顔を向ける。
「いつ来たの?全然気が付かなかったよ」
「……さっき。……二人共集中してたから、邪魔しちゃ悪いかなって」
「そっか。クッキーいる?どうぞ」
テーブルに置いてあるクッキーを勧めるエピオル。
その様子を見ながら口を開くミンナ。
「ナトルプとクルシィは?」
「……北の山に行った。……だから僕はエピオルの家に来た」
「北の山?!あの二人も懲りないね」
呆れるミンナ。
エピオルも苦笑いで肩を竦める。
「まぁでも、大丈夫だと思うよ。北の山は行商の人が行き来しているから迷う事は無いだろうし。……あの二人は無駄に無茶をしそうだけど」
半分ほどに減ったクッキーのひとつを抓んだエピオルは、ふたつのコップが空な事に気が付いた。
暑いせいでやたらと喉が渇く。
「あ、ジンメル、ミルク飲む?ミンナは?私はおかわりするけど」
「……飲む」
「私もおかわりを貰おうかな。手伝うよ、エピオル」
エピオルとミンナは、自分が使ったコップを持ってキッチンに向かった。




