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「おはようございますー!エピオルー、遊びましょー!」
ミンナの叫びに応えて家から出て来たのは、母親のノトルだった。
「おはよう、ミンナ。エピオルは外に出られないから、遊ぶのなら中に入って頂戴。クッキーが有るよ」
「え?もしかして、昨日、森に行った罰で外に出ちゃダメ、とかですか?」
エピオルの不注意からバレた子供達の悪事は、ノトルによってそれぞれの親に伝えられた。
子供達はそれぞれの家のルールに則った罰を受けただろう。
だから、この外出禁止がそれだと彼女が判断するのも無理はない。
「違う違う、それは関係無い。ま、入って」
「はい。お邪魔します」
家に入ると、銀色の髪を編み上げているエピオルがリビングで絵本を読んでいた。
自分を呼ぶ友人の声が聞こえていたんだろう、特に驚きもせずに片手を上げるエピオル。
「おはよ、ミンナ」
「あ、おはよう、エピオル」
「はい、どうぞ」
二人分のクッキーとミルクがノトルによってテーブルに並べられた。
それを見たエピオルが下の歯茎を剥き出しの変顔になった。
「今日は暑くなりそうね。ヤダヤダ」
「だったらカーテン開けたら?」
風に戦ぐカーテンに歩み寄るミンナ。
季節はもう夏なのに、リビングの窓は全て厚手のカーテンに覆われていた。
これでは暑いのは当たり前だ。
「ミンナ、開けちゃ駄目!これがエピオルが外に出られない理由なんだから!」
慌ててミンナの肩を掴むノトル。
その勢いに驚いたミンナは青い瞳を丸くする。
「驚かしてゴメンね。理由を説明するから座って」
ミンナをカーテンから遠ざけ、そのまま一緒にソファーに座るノトル。
「去年の夏、本の買い出しのついでにエピオルと一緒に海に寄ったの。そこで遊んだら、エピオルの日焼けがすっごい水脹れになったのよ」
「うん。死ぬかと思ったよ。それからは、今日みたいに太陽が強い日は外に出ない様にしてるんだ」
クッキーを食べながら肩を竦めるエピオル。
「へぇ、そんな事も有るんだ」
ミンナもクッキーに手を伸ばす。
「ええ。お医者さんが言うには、たまにそんな人が居るんですって。生まれ付き直射日光に弱い人が。そんな訳だから外に行けないの。ゴメンね」
クッキーのお代わりが必要かな、と考えながらミンナに謝るノトル。
「そうなんですか……」
ミルクを飲むミンナ。
普通のミルクなのに室温が高いせいで冷たく感じる。
「……暑いね」
「うん。昨日までは涼しかったのにねー。ミンナも何か読む?」
「あ、うん。そうする」
エピオルとミンナが本棚に向かうと、強めの風がカーテンを激しく揺らした。
強い日差しがリビングを明るく照らす。
「あわあわ……」
カーテンに体当たりを食らわし、太陽の光からエピオルを護るノトル。
その様子を見たエピオルは、過保護な母親に困った様な笑顔を向けた。
「ありがと、お母さん。でも、そんなに慌てなくても。ちょっとくらいなら大丈夫なんだし」
「あはは、まぁね。じゃ、私はお買い物に行って来るわね。お留守番をお願いね、エピオル。ミンナもゆっくりしていってね」
幼女二人が頷いたのを確認してからお菓子の材料を買いに出掛けるノトル。
あ、そうだ。
家から出ないのなら、大袈裟に肌を出しても良いのではないだろうか。
袖やスカートの短い夏用のドレスを作ってみるのも良いかも。
布屋にも寄ってみるか。




