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あっと言う間に森の入口に辿り着いたダスターは、見た目に似合わない優しい仕草で子供達を地面に降ろした。
「これからは森に近付かない様にな」
「はい。あ、ダスターさん」
森に帰ろうとしたダスターを呼び止めるエピオル。
「私のお父さんと知り合いなんですよね?お父さんは今どこに居るんですか?」
「父親の事は母親に聞け」
「お母さんはあんまり話してくれないんです。だから」
「そうか……。なら、俺は話せない」
「どうしてですか?」
「ノトルニスがエーレンの事を話さないのは、恐らく、エピオルニスがまだ幼いからだろう。大人になればきっと教えてくれる」
「大人になれば、ですか……」
失望して肩を落とすエピオル。
そんな小さな頭を撫でるダスター。
「父を知らないのは不安か?」
「はい。生きて、いるんですよね?」
「そうだな。それくらいは言っても良いだろう。確実に生きている。そして、エピオルニスはエーレンの子だと一目で分かるくらい似ている」
「そんなに似ているんですか?」
「ああ。顔の造りと銀の髪は父譲りだ。金色の瞳は、俺は会った事が無いが、エーレンの父親がその色だった筈。俺が言えるのはこれくらいだな」
「ありがとうございます」
色については母から聞いて知っていたが、第三者に同じ事を言われたのが妙に嬉しかった。
母を疑っていた訳ではないが、これでその情報が正しいと確定したから。
五歳児の笑みに頷きを返したダスターは、踵を返して森に帰って行く。
「何だか凄い人だったな」
「もしかすると、謎の家ってあの人の家なんじゃないかなぁ」
惚けているエピオルの後ろでナトルプとクルシィウスが囁き合っている。
不意にナトルプのお腹が鳴った。
太陽が真上に有る。
お昼御飯の時間だ。
「……帰ろっか」
「うん」
空を仰いだエピオルの言葉に返事をしたのはミンナだけだった。




