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02 恋
漆黒のマントから解放されたノトルニスは、何処かの城の地下牢に入れられた。
壁や床が石で出来ている上にジメジメとしているので、裸足の少女は身体の芯から冷えてしまった。
「へっくしゅん!」
ネグリジェの袖で鼻を擦ったノトルニスは小刻みに震えている。
身体を動かせば暖まるかもと思って立ったり屈んだりしてみたが、疲れるだけで暖まるまでは行かなかった。
ハエの様に両手を擦り合わせる事しか出来ない。
静かな地下牢に肌が擦れる音が響き続ける。
しかし、そんな足掻きは無駄な抵抗だと笑うかの様に冷たさが痛みに変わって行く。
もうそろそろ限界。
辛過ぎて涙目になった所で誰かが地下に降りて来た。
マントを脱いだあのバンパイヤだ。
「こんな所に押し込めたりして申し訳御座いませんでした。父は帰りましたので、客間に案内します」
早足で牢の中に入って来た美しい男は、おもむろにノトルニスを抱き上げた。
彼が着ている男性用のチュニックに頬を寄せたノトルニスは、その温かさに安堵の吐息を漏らした。