17 幼年期
「おはようございます、ノトルニスさん。エピオル起きてますか?」
金色のおさげを揺らした小さい女の子が垣根の隙間から顔を出した。
それは毎朝の事なので、ノトルは笑顔で応える。
「おはよう、ミンナ。ちょっと待っててね」
洗濯物を干す手を止め、小さく狭い我が家に戻るノトル。
「エピオル、エピオルー!ミンナが来たよー。エピオルニスー?」
「はーい!!」
洗面所の鏡の前で長い銀髪を梳かしていた幼女が少し苛立った調子で返事をする。
その瞳は、この地方では珍しい金色。
「髪の毛が絡まって解けないの、よ!」
「どれ、貸してみて」
エピオルの髪に刺さっている櫛に意識を集中させるノトル。
その場所で細かく指先を動かしたノトルは、櫛を抜いてからエピオルの髪を撫でた。
「はい、解けた」
「ありがとう、お母さん」
仕上げに髪全体を軽く梳いたエピオルは、走って表に飛び出した。
「お待たせ!ミンナ」
「行こ」
仲良く手を繋いだエピオルとミンナが元気良く駆け出す。
今日も村の広場に行く様だ。
「二人共、怪我をしない様にねー!お昼ごはんまでには帰るのよー!」
「はーい!」
微笑みながら小さな背中を見送ったノトルは、二人が見えなくなってから残りの洗濯物を干した。
「ふぅ……」
朝の家事が一段落付いたノトルは、おもいっきり伸びをした後、青空を仰ぎ見た。
長かった右の前髪は切り落としたので視界を邪魔する物は無い。
「貴方に良く似た貴方の娘は、来週で六歳ですよ。……早く会いに来て、エーレン」




