10
「眠っちゃったね」
長女の腕の中で寝息を立てている四女の顔を覗き込む三女。
しかし地下牢は暗いので、その顔は良く見えない。
「ずっと泣いていたんですもの。疲れたんでしょう」
涙で強張っている四女の頬を撫でる長女。
「寒いね」
三女は長女と四女の毛布を掛け直した後、自分の毛布の乱れを直した。
それでも石の床は冷たい。
「私達、これからどうなるのかな……」
「どうなるんでしょうね」
「え?……あ、うん」
長女の思考が止まっている事に気付いた三女は、自分も喋る事を止めた。
物を扱う様にあちこちに連れ回され、その上でろくな食事も与えられていないのでは生きる希望を失ってしまっても仕方がないだろう。
絶望と静寂に包まれる地下牢。
「誰か来る!」
鉄格子に手を掛けて外の様子を窺っていた次女の声が石の壁に響いた。
少女達に緊張が走る。
「ああ、神様……!助けて……!」
石の階段を下りて来る足音を聞いた三女が必死に祈りを捧げる。
しかし、魔物に誘拐されてから何度も祈ったが、未だに神は助けてくれない。
もしかしたら、今度こそ人生の終わりかも知れない。
寒さでも震えなかった少女達の身体は、恐怖で小刻みに揺れ動いた。