てんきのかみさま
児童文学です。
ゴゴゴゴゴーーーッ!ドカンッ!!
ハルくんがママとお風呂に入っていた夜のこと。突然、かみなりが鳴った。
「うわっ、窓の外が光ったよぉ・・・!!」
ハルくんは、ママの肩に顔をうずめながら、ギュッと強くしがみついた。今年小学校に入学したばかりのハルくんは、人一倍怖がりなのだ。怖いのは、かみなりだけではない。大雨の夜も、風の強い夜も、恐竜の鳴き声のような音を聞く度、布団の中に小さく丸くなって縮こまってしまう。
「ねぇ、ママ。どうしてかみなりって鳴るの?」
「それはねぇ、ハルくん。地球にはね・・・かみさまがいるんだよ。」
「かみさま・・・?」
「そう。お天気のかみさま。」
「おてんきの・・・?」
「かみさまが、怒っている時にはかみなりが鳴るの。悪いことをしたり、ママの言うことを聞かないこどもがいると、かみさまは怒っちゃうんだぞぉ~。」
ママは冗談のつもりで言ったのだけれど、6歳のハルくんはそれを信じた。ハルくんには、思い当たることがいくつかあったのだ。昨日は、学校からまっすぐ帰ってきてね、とママに言われていたのに、途中でお友達のお家に寄り道してきちゃったし、今日の朝ごはんに出たピーマンも残してしまったし・・・どうりで、かみさまが怒るハズだ。深く鳴り響いているこの怒りの声は、自分に向けられている気がしてならなかった。
次の日の学校帰り。
「あぁ・・・地球のかみさま、ごめんなさい。ママ、ごめんなさい。」
昨日のママの話を思い出して、そうつぶやきながら、まだ小雨の降る薄暗い空の下、家への道をトボトボと歩いていた。ちょうど雑木林の中の細道へさしかかった時、誰かがいるのが見えた。空に向かって何かしている。
「変な人だったらどうしよう・・・。」
おそるおそる道を進んでいくと、それはハルくんと同じくらいの男の子だった。なんだ、こどもか、と安心したのも束の間、その男の子はいきなり、
「ワッハッハッハッハッ~!」
と、大声でわざとらしく笑い始めた。男の子はハルくんには気づいていない。ハルくんは、びっくりして木の枝を踏んでしまった。
「んん??あれ??もしかして、聞いてたかな、今の?」
「・・・うん。」
「恥ずかしいところ見られちゃったな・・・。」
「さっきのは・・・?」
「お天気を変える練習さ。空に向かって笑って楽しい気持ちを吹き込むの。そうすると、晴れるんだ。でも、それがうまくできなくって・・・。」
ハルくんは、頭の上にたくさんのハテナを浮かべていた。
「あっ、ボクね。かみさまなんだ、こう見えて。こどもだけど。お天気のかみさまになる修業中。人間の世界に来るのが伝統なんだって。名前は、ソラ。」
「か、かみさま!?えぇっ!?君がっ!?」
ハルくんのかみさまのイメージは、サンタクロースみたいな白ひげが生えている人だった。想像とは程遠いけど、なんだか嬉しくなった。
「お天気をコントロールできるようにしなくちゃいけないんだけど、父ちゃんに『気持ちが足らん!』って怒られちゃって・・・ボクの気持ちが暗いから、今も雨なの・・・。」
楽しいと心から思う気持ちが足りないから、晴れにならない、ということらしかった。まだ雨は降り続いている。
「ねぇ、ソラくんは、お友達はいるの?」
「友達?そんなのいない。だって、いつも父ちゃんと母ちゃんと3人だけだから・・・。」
「ボクだったらね、お友達と遊んで楽しかったことを考えるな。あっ!ボク、お友達になってあげる!」
「・・・。」
ソラくんは戸惑っているようだったけれど、
思い切ってこう言った。
「ボク、お友達欲しかったんだ!本当は・・・いつも人間の世界がうらやましかったの。」
「かけっこ!かけっこしよう!走るとすごく楽しいよ!ボク、好きなんだ!」
ハルくんはそう言って、駆け出した。その後をソラくんも全力で追いかけた。
「はぁ、はぁ・・・。」
二人が息を切らしていると、みるみる内に
空が明るくなってきた。二人とも心からその瞬間を楽しんでいた。
それから1か月後。また大雨で風の強い嵐の夜が来た。だけど、ハルくんはもう怖くなかった。
「あっ、ソラくん、またお父さんに怒られているのかな。」
ハルくんは、そう思うとおかしかった。
お読みいただきありがとうございました。
これからも作品作りに、日々精進して参ります。