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幻想世界の放浪者  作者: 紫貴
第七章
69/122

7-3

「魔王を倒した時、レア武器と固有スキル、それと称号が入手できる事が判明している」

 アールがキーボードを叩くと、テーブルの中央に立体画像が投影される。

 表示された二つの立体画像はそれぞれ中型武器:刀剣と大型武器:槌だった。その内、槌の方は見たことがある。

 アスモデウスを倒した直後、クウガの前に現れた武器だったはずだ。

「ハンマーは<ユンクティオ>のクウガが、剣は<イルミナート>のヴォルフがボス攻略後に入手している。それぞれの戦闘のログを貰って検証した結果、最もダメージを多く与えたプレイヤーが入手できると判明した」

 武器の能力値もまた表示される。入手元から考えれば当然と言えるほど高い値を出していた。

「それでスキルなんだけど――」

 次に画像ではなくてスキル名と思われる文字列が表示される。


 <地王を滅し者>

 <炎王を滅し者>


「称号とスキルは二つセットになっていて、称号も同じ名称だった。こっちはトドメを指したPLが入手できるようだね。それで、スキルの特徴なんだけど」

 それぞれのスキル名の下にまた新しくウィンドウが開かれる。アレスとヴォルフの写真だ。ヴォルフは相変わらずの無表情っぷりだったが、アレスはギルドをまとめるのに苦労しているのか心なしかやつれていた。

 というか、この写真はPL発行の新聞で見たぞ。

「新聞見てもう知っている人もいるだろうけど、念のため」

 続いて動画ムービーが流れる。二分割表示されたウィンドウ内ではアレスとヴォルフがそれぞれ何も無い場所で立っている。

 二人の周囲に光のエフェクトが発生。アレスは下半身に、ヴォルフは背に光が集まり何かを形作る。集まっていた光が弾けるように霧散すると、アレスの下半身が四つ足になってケンタロスみたいな姿に成り、ヴォルフは四本腕に成っていた。変身しやがったよあいつら。

「血脈スキルの獣人化や竜人化と同じように一定時間各種パラメータを上昇させるだけじゃなくて、他にも同属性の攻撃を一定の威力まで無効化するパッシブスキルとかあるらしいよ。熟練度を上げる事で今後新たなスキルも覚えるようだから、破格だね」

 ボスの体力を削れば超レア武器、トドメを刺せば固有スキル。手に入れたいと思う奴は大勢いるだろうが、それをやるには正に命がけだ。俺は御免被る。

 幸いなのが、そういった欲に目が眩んで先走るような奴は少なくともここにいる連中の中にはいないという事か。

「ボスは第二形態まであって、最初は人型。その時点での体力バーがゼロになると第二形態の獣型に変身する。これはアスモデウスとアモン両方がそうだったから間違いない」

 アスモデウスはビルほどにデカかったが、アモンはトレラーほどだったとか。それでもデカい事には変わらないが。

「それで、僕らがこれから倒そうと考えているレヴィヤタンなんだけど、情報が少ない。海でで北方が遮られてたから仕方が無いんだけど」

 基本、船が無いと行けないからな。転送装置はあるが、一度はジブリエル公国の船に乗って向こう渡らないといけない。当然、決して安くない金を取られる。密航しようとした奴もいたらしいが、見つかって牢屋に入れられ、出所と同時に罰金として有り金を取られたらしい。馬鹿だ。

「予想される攻撃手段としては当然水属性の攻撃。あと、金属武具の耐久値を大きく減らす腐食攻撃かな。川を渡った先のモンスターが使ってきたから対策しておいた方がいいだろうね」

 俺は目の前の飯を悔いながら聞き流す。食うと聞くの比率は八対二で、俺以外はだいたいその逆だ。

「それでもう一つ注意したいのが、水の魔王が住む城の周囲は水に囲まれていて、内部にも多くの水場があるんだ。だから動きがかなり制限されてしまう」

 この海鮮スープ、塩味が利いてて美味い。ただ、海老がまるごと殻を剥かず入っているので剥く作業が面倒くさい。それに海老の腹って気持ち悪い。

「それでもう一度聞こうか。水の上走れる人」

「………………クゥ」

「ああ? なんだよ?」

 シュウに肩を叩かれて顔を上げると、何か視線が俺に集まっていた。何事かと、瞬きしているとアールがあからさまに溜息をつきやがった。

「クゥ。レヴィヤタンの城は水場が多くて行動が制限されるんだ。それは分かるね?」

「ああ」

「だから水の上や水中の活動に長けたプレイヤーが必要なんだ。それはいい?」

 その出来の悪い子供にゆっくり諭すような言い方止めろ。

「クゥ」

 静かに、だがそれでもよく通る声がテープルの奥からした。そのエセバリトン利いた声はゴールドからのものだ。

 奴はテーブルに肘を付けた両手を口の前で組むことで口元を隠し、いつの間にか色眼鏡を装備していた。今度は一体何の遊びだろうか。

「君をレヴィヤタン城調査団に任命する!」

「断る」

「君にィ~拒否権はなァい!」

「お前キモいから」

 フォークを奴の頭に投擲する。ゴールドの眉間に当たって色眼鏡が壊れ、跳ね返ったフォークが壁に突き刺さる。街の中なのでダメージは無いが、物は壊れる。

「何でそんなに投擲スキル上がってるのよ」

 タカネからアホだこいつ的な目で見られているが無視してシズネから新しいフォークを受け取る。

「まあ、とにかく城の内部構造を把握しておかないと色々手間だから探索に特化したチームでマッピングするつもりなんだ。水の上走れるし逃げるのは得意だろ」

 なんだか心外な評価を受けてしまっている。

「なんでわざわざそんな面倒な編成する必要がある。前線組が行って帰ってくればいいだろ」

 それが普通だ。地の魔王アスモデウス攻略の時だって、<オリンポス騎士団>やその他のギルドが何度も城に入ってマッピングし(ついでに宝箱も入手し)て、その上でモンスターの種類や強さ、魔王の攻撃方法を調べたのだ。

 探索に向いたチームと言っても、それはそのパーティがそのダンジョンにいるモンスターをある程度余裕で倒せてまともに機能するのだ。魔王の城にいるモンスターは総じて強い。だから多少効率が悪くても地道に虱潰しで探索していくしかない。

「フフフ…………」

 だが、ゴールドが口の端を釣り上げ、何か企んでいますと言いたげに笑い声を上げる。

「万が一という事態もある。アモンのように魔王が直接進撃するという明確な事例があった以上、ボス部屋に近づかなければ大丈夫だという考えは甘い」

 ならばなぜ探索専門のチームを組むと言い出したのか。むしろもっと危ないだろ。

「もし、城の中のモンスターの数が少なかったら?」

 ゴールドはおもむろに立ち上がる。いきなりの事だったので、中空で表示されたままだった動画や画像のウィンドウと被ってしまう。

「もし、NPCを私達の戦いに参加させることが出来るとしたら?」

 ウィンドウから顔だけ出したゴールドは気にせず喋り続けている。というか、自分に酔って気づいていないだけかもしれない。本人が真面目ぶっている中で、それを聞くPL達の間でなんとも言えない空気が漂う。

 アールが、そっとウィンドウを閉じた。もっと早くしろよ。

「アスモデウス戦並びにアモン戦ではボスの強さは勿論の事、周囲のモンスター達に苦戦させられたと聞いた」

 確かに、少なくとも俺も参加したアスモデウス討伐の時はザコモンスターが邪魔だった。<オリンポス騎士団>だって防衛と露払いとして人員を割いたほどだ。

「NPCによる軍隊で魔王攻略に乗り出せるとしたら、どうする?」

「そうだとしたら、私達は横槍を気にせずにボス戦に集中できる。でも、そんな事が可能なのかい?」

 ミノルさんが真っ当な疑問を投げかける。話が飛んだり一人納得して詳しい説明をしたがらないゴールドやレーヴェ、マステマを見ているとミノルさんがよりまともに見える。とても、掲示板で変人の巣窟と言われているギルドのリーダーには見えない。

「少なくとも魔王軍からのカウンター攻撃時は港で防衛に参加させる事は出来た。その後の進軍も追随した」

「だが、NPCじゃ城に出現するモンスターの相手は無理があるだろう?」

「NPCも実は鍛えてステータスを上げる事が出来る。闘技場を使って、こっそり鍛えていたんだ。でも、やはりプレイヤーと比べるとスキルの数が少なく弱いし成長も遅い。足りない部分は装備で補うつもりだ。その準備もしている」

 裏でこそこそやっていると思ったら、そんな事をしていたのか。皆が驚いている中、アールは当然としてもキリタニさんが表情を変えていない事からあの人も一枚噛んでいるのだろう。飯前にも装備がどうの言っていたから間違いない。

「それが成功すれば、魔王攻略でのプレイヤーの被害は減らせるわね」

 タカネが言うように、ゴールドの思惑が上手くいけば犠牲者は減らせる。なにより単純に兵力が増す。そう、使い捨ててもいい兵力がだ。

「それで試験運用の為に何度か魔王の城へ襲撃をかけたいと思う。複数のパーティーが集まっていると、モンスター達も数を揃えてから襲うという報告があるから、おそらく城の中をある程度空にできるだろう。その間、ついでにフットワークの軽いプレイヤーにマップ制作を頼みたいのだ」

 だからって俺を指さすな。

 ゴールドの言い分では、水の上を走れて機動力がある俺が適任(当然、俺以外にもPLが何人か偵察する)らしい。水の上を歩ける魔法はあるが、それだと鈍速な魔術師をつれて行かなければならないし、足が速くて魔法が使えるPLにあまり使い道の無いその魔法を覚えている奴は少ないんだとか。

「えー」

 偵察。スカウト。何だか地味な感じだが、実際はかなり命がけだったりする。開拓隊時、周りと上手く歩調が合わせられず単独行動ばっかしてたからよく分かる。

 何があるか分からない危険なダンジョンで単独行動。しかも場合によっては魔王と遭遇するかもしれない。そんな危険な事やってやれるか。

「よくやってるじゃない」

「クゥ、今までの自分の冒険の仕方振り返った方がいいよ」

 まさかの内輪から突っ込みが来た。

「それに、大鍾乳洞で魔王とエンカウントとして逃げ延びた実績もあるからね。残した結果には期待が来るものさ」

「エリザさんから聞いていますので、言い逃れは出来ませんよ」

 そして駄目出しがアールとヘキサから来た。

 結局、詳細は煮詰める必要はあるものの俺は危険度激高な魔王城を一足早く探検する事になってしまった。まあ、別にいいけど。

 誰よりも早く魔王城を見れると考えれば、悪くないかもしれない。


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