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幻想世界の放浪者  作者: 紫貴
第五章
53/122

5-8


 夕飯はゴールドの提案で皆で取る事になった。

「それでなんでわざわざ浜辺でバーベキューなんだ?」

 まあ、美味いからいいけど。

「その肉まで焼けてねえよ! あとちゃんと野菜も食えよテメェ!」

 鍋奉行もといバベ奉行のエイトが超仕切ってた。いるよな、ああいう奴。

「ははははっ、いやいや、楽しいバーベキューだね!」

 ジョッキ片手で口周りに白い泡を付けたゴールドが笑っている。こいつは、アレだ。ウザいどころじゃない。現に、なんで俺と同じテーブルにいるんだこいつ。

 浜辺でいくつも用意された簡易テーブルとイスにバーベキューセット。俺達以外のPLもどこから来たのか集まってきて、それぞれ食材を持ち寄って焼いて食べている。

 炭がバチバチ鳴る金網の上にはモンスターの肉とか魚とかが次々と乗せられていって大分カオスな事になっており、その前に陣取るエイトがぎゃあぎゃあ喚きながら手をしっかり動かしている光景は面白い。

「そういや、キリタニ? だっけ。そっちはどうなったんだ」

「戻ってきている。夕食後の夜に面会できるようセッティングした。ミエにも伝えてある」

「あっ、そう」

 一度席を立ち、エイトの隙をついて素早く金網の上の肉を強奪して気づかれないようイスに戻る。

「あっ!? ここに置いた魚がねえ!」

 これ、魚かよ。どう見ても四本足系の肉にしか見えないんだが。あっ、でも、アイテム説明のウィンドウにはちゃんと魚と書いてある。

「クゥ、てめえだろ! 肉以外も食えよコラ! つか何でだれもカボチャ食わねえ。焦げてもったいないだろ!」

「カボチャ嫌い」

「ガキかテメェはッ!」

 あいつ、あんなに怒鳴って疲れないのだろうか。

「そうそう、クゥ」

 ジョッキに新たなビールを注ぎ込んだゴールドが口を開く。さっきから肉や野菜をツマミにハイペースで飲んでいるので顔が赤い。目もどこを向いているのか、宙を彷徨わせている。現実と同じく、エノクオンラインでは酒に酔えるのだから酔っぱらいなんて珍しくもない。

 だが、ゴールドが酔ったとは思えない。

「個人的なお願いなんだが、魔王討伐に協力してやってくれないか?」

「それを言うならアヤネを魔王討伐に参加するようにしてくれ、だろ」

 肉を口の中に放り込みながら視線だけゴールドに向けると、あいつはただ笑みで返してきた。

 アヤネの歌スキルは<ユンクティオ>でやっていたように複数のパーティーで行動する際には大きな力となる。

 当然、固有スキルではないのでアヤネ以外にも敵味方を選別して効果を発揮できるまでに熟練度を上げたPLは他にもいる。

 だが、初期から伸ばし続けている者と後から伸ばし始めた者では熟練度に開きがある。何よりアヤネは歌スキルの『才能』持ちだ。

 『才能』と云うのはゴールドやレーヴェが持つ隠しスキルのカリスマと同じようにログイン前の情報入力を参考に、各PLへ最低一つのスキルに与えられる。

 『才能』がついたスキルは熟練度の伸びが他と明らかに違う上、現状レベルキャップに悩まされるPLが出てる中でもスキルが上昇(あくまでほんの僅かに伸びるだけ)がしやすい。

 この『才能』は隠しスキル同様にステータスには明確に表記されておらず、他のスキルやPLと比べて見ないと判断できない。

 アヤネは確実に歌スキルの『才能』持ちなのは確かで、彼女以上に熟練度が高いPLはいない。

「本人に頼め」

「君がいないと彼女も行かないだろ。拝み倒せば来てくれるだろうが、今度は彼女が君に一緒に来てほしいと頼むだろう。それでは申し訳ない」

 よく分かってんなこいつ。

「懲りないよな」

 アヤネの事だ。未だにあいつは俺への恩返しを諦めていない。タカネ達とも合流してしまった訳だし、これからもっと一人でいる時間が必要になる。

 今は付かず離れず、同じ街の中にいても別行動をとっているしからすぐどうこうなる心配はないんだが。

「シズネを彼女の傍に置いてる時点で過保護だと思えなくもないが?」

 シズネは俺の使い魔のようなものなので、俺が呼べばどこであろうと駆けつけてくる。逆に言えば俺の居場所を常に把握していて、このリンクはフレンドリストの拒否機能と違って遮断できない。つまり、シズネに聞けば俺の居場所なんて丸分かりなのだ。

「君の場合過保護というか…………そう、期待だな」

「期待?」

 なんだか話がズレている上に、俺にとってマズい方向へと行っているような気はするが、魔王討伐なんて最前線へ行けとか説得されるよりはマシだった。

「なんと言ったかな。日本の言葉で…………そう、あれだ。光源氏計画!」

「お前等本当にそのネタ好きだよな!」

 開拓隊の時も言われた筈だ。もしかしてアールが教えたのか?

「可憐な少女を自分好みに育てるとは官能的ながら夢があるだろう。まあ、そんな与太話はともかく、そういう訳だから地の魔王討伐に行ってくれないかな。もちろん、必要なアイテムはこちらで出す」

 チッ、無理矢理話を戻しやがった。何が、そういう訳なのか。

 正直断りたいところだが、こいつにはミエさんの頼みを聞いて貰った事もある。もしかすると、サイン云々はただ適当ホザいただけで、最初からこれが目的だったかもしれない。

「一応、本人に聞いておく」

「ああ、ありがとう。そうそう、ユンクティオも魔王討伐に参加するらしい」

 それ先に言えよ。

「お前、回りくどい」

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、と言うじゃないか」

「この場合、誰が将で誰が馬なんだ?」

「私も含め皆が将で馬だ」

 そう言ってゴールドはジョッキに新たに酒を注ぎ足そうとする。だが、瓶の中身が既に無くなっていた。逆さまにして瓶を振るが、当然出てこない。

「ふむ…………」

 本物の酔っぱらいのように、酒を探して周囲を見回した。丁度その時、酒樽と木箱を抱えたロボ店員が現れてエイトの方へ行くのが見えた。

 ゴールドは――うむ、とか意味不明な事を呟いて立ち上がると花に誘われる虫のようにフラフラとそっちへ移動する。仕方なく俺もお茶の入ったコップと空になった皿を持って後を追う。

「なんかぞろぞろ来やがった……」

 新たな食い物の気配に皆が集まり出す。

 ロボ店員が持ってきたのは酒の他に追加の肉や野菜、そして麺だった。

「腕の見せ所だぞ、屋台番長」

「お前焼きカス喰わすぞ」

 昔、エイトは文化祭の屋台で焼そば、たこ焼き、お好み焼きを一人で切り盛りした事がある。その見事な手際と通をも唸らせた味から屋台番長と言われるようになった。他にも木刀番長とか水泳番長とか破壊魔とか、あだ名に事欠かない。

「いいじゃない。エイトの作る焼そば美味しいし」

「そうね。こういう料理はエイト君のが上手よね。味がしっかりしてるのに後味残さないから私は好きよ」

「…………どうも」

 タカネとミエさんに褒められて、ぶっきらぼうに返しながらも満更ではなさそうに焼そばの準備を始めるエイト。分かりやすいなこいつ。

「ほら、とっとと鉄板に入れ替えろ」

「お前は何で偉そうにしてんだよ! 他見習って少しは手伝え!」

「えー」

 料理とかの家事は無理矢理母親に仕込まれたので、最低限はできる。だからって別にエイトのように上手い訳じゃない。

「お前、料理スキル持ってるだろうが」

 チッ、知ってたか。

 仕方ないのでここからは手伝ってやる事にする。

「お前塩な。俺ソース」

 ヤベが金網から鉄板へと交換したのを見届けてから言う。最悪、ソースぶっかけて焼けば完成してしまう焼そばは楽でいい。

「醤油あるぞ」

「じゃあ、そっち使う。くれ」

 言うや、エイトがアイテムボックスから醤油を取り出して投げ渡してきた。受け取り、試しに指先に一滴垂らして舐めてみると本当に醤油だった。西は東洋系の文化になっていると聞いたことはあったが、本当に醤油があるとは。

「どしゃー」

「かけ過ぎたボケッ! ああ、くそっ、肉か野菜で薄めろ!」

 お前、ガラ悪いのにマメだから変なあだ名つけられるんだよ。

 女衆も手伝えとか言いたくなるが、こういうレジャー系の集まりの場合は何故か男が飯を作ることになっている。大雑把で大人数分だからだろうか。メイド服着てるならシズネも手伝えとか思ったが、あいつはあいつでさりげなく使わなくなった食器とか片づけているので言いにくい。

「鈴蘭の草原は主に西で活動していると聞いていたが、やはりデザインはアジア系が多いみたいですね」

 タカネが着ている着物や頭の簪を見て、ゴールドが口を開く。

「そうね。でも、数は少ないし武器になるともっと少ないわ。日本人なら刀だろ、とか言って探してたPLもいたけど結局見つからなかったようだし」

 タカネはゴールドの世間話に付き合う。

 俺達が調理している間、ゴールドは<鈴蘭の草原>と会話して人間性を見極めるつもりのようだ。こういう胡散臭い人間はただの世間話にも目的があるので面倒だ。

 まあ、うちにはそんなのお構いなしな人間がいるけど。

「――二人とも見目麗しくて華があっていいですな」

 お得意様のご機嫌取りをする商売人みたいな感じでゴールドがタカネとミエさんの容姿を褒める。なんか、わざとやってるとしか思えないキャラだ。

「美人姉妹とは正にお二人のことだ。掲示板や新聞で取り上げられるのも――」

「姉妹じゃなくて母娘おやこな」

「……………………え?」

 ゴールドの言葉を遮って訂正しておく。これから長い付き合いになりそうだったので、誤解は正しておいた方がいいだろう。

 タカネとミエさんは似ているので血の繋がりがある事は誰でも想像つく。しかし、この二十代半ばぐらいにしか見えないこの女性が、背も胸も肝もデカいタカネの実の母親だとは誰も思わない。

「………………」

 そう教えてやったのだが、知ってた連中以外の動きが、周囲にいた他のPL達まで時を止めていた。

 鉄板からの――じゅうじゅう、という焼ける音や俺達がヘラを動かす音がやけに大きく聞こえた。




 ◆


 ラシエムの港町には大通りを歩く限りでは目立たない形で繁華街がある。元々浮浪者NPCが徘徊していたそこを、PLが楽しめる娯楽施設へと変えたのがゴールドだ。

 経営自体はNPCが行っているが、その利益の何割かがゴールドの懐に流れることで彼は全PL内でも多くの資金を持つに至っている。

 脇道へ逸れるだけで行けるそこは細い路地を扉にして広がる別世界だ。

 雑多な大衆食堂が並ぶ通りの裏には高級レストランを始めNPCは当然ながらPLでもなかなか手の出せない商品を置いたショップがあり、身の破滅と一攫千金の夢が詰まったカジノが太陽の代役と言わんばかりに、月光以上に通りを照らしている。

 その通りを進んでいくと、うっすらと香の匂いが漂う店がある。外装からはレストランか何かに見えるが、節々からただの宿じゃないという違和感が生じる。そして甘い匂いや時折開かれる扉から現れる扇情的な格好をした美女を見ればその正体が分かるだろう。

 そんな官能的な店の中を、二人の女が歩いている。

 前を進むのが店主であり、魔族でありながら人間の街に住む変わり者のアマリア。その後ろを<鈴蘭の草原>のミエがついていく。

「ごめんなさいね。こういったお店、本当は女が来たら迷惑でしょう」

「客なら性別なんて関係ないよ。それにゴールドからの頼みだからね。VIP対応さ」

「女の人も来るの? 私、そっちの気はないんだけど」

「どっちもイケそうな顔してるけど。一応、酒目当てで来る女性客もいるよ。うちの一階はただのバーになってるから」

「ちょっと見ただけだけど、品揃え凄かったわ」

「VIPルームにはバーカウンターもあるから、好きなの取っていいよ。下に置いてある以上の物がある」

 赤い縦断が敷かれた廊下を進みながら会話する二人は初対面である筈なのに、気が合ったのかまるで昔から友人のようであった。

「ここだよ」

 アマリアがドアの前で立ち止まり、両開きのそれを開けた。

 ドアの向こうの部屋はアマリアが言ったようにVIPルームなのだろう。派手すぎず、それでいて見窄らしくない調度品が壁際に置かれ、床の絨毯は足が沈むような柔らかさと分厚さだ。壁の一面はガラス張りになっていて、そこから階下にあるバーが見下ろせる。

「何か軽いものは? あるなら後で届けさせるよ?」

「向こうに置いてあるので十分よ。ありがとう」

 部屋の中に足を踏み入れたのはミエだけで、アマリアは中に入らず廊下からドアを閉める。

 ミエが新たにログインしてきた友人に合う為、ゴールドが誰にも話を聞かれない場所を用意すると言った。その結果がアマリアが経営する娼館のVIPルームだった。

「久しぶりね、仁君」

 ドアが閉まりきるのを見届けると、ミエは部屋の奥にあるソファに座る男に向け、気軽に挨拶を投げた。

「お久しぶりです、美恵さん。お元気そうで何よりです」

 対して男の方は立ち上がると恭しく頭を下げた。

「美恵さん、だなんて他人行儀な。お義姉ちゃん、って言ってくれてもいいのよ?」

「貴女が兄からの養育費を受け取ったら義姉と呼ばせていただきます」

「仁君、冷たい……。昔はお姉ちゃん、とか言って私の後ろをヒヨコみたいに付いてきたのに」

「そんな事実ありません。そもそも付き合いは大学からでしょう」

 目の前の泣き真似を流し、ジンはソファに座り直す。ミエもまた通じないと分かると彼の隣に座ってテーブルの上に用意されていた酒やツマミを勝手に食し始める。

「電脳世界で言うのも変だけど、こうして会うのは二十年ぶりかしら。大人っぽくなったわね。それで、どうなの?」

 主語が抜けた問いかけであったが、ジンは理解できたのかすぐに答えを返す。

「外部から脱出させるどころか内部をモニターする事もできませんでした。ダミーを使ってのダイヴも無理。量子サーバー本体はアメリカが押さえましたが、手出しできない有様です」

「あらら、それは困ったわね」

 口ほど困った様子を見せず、ミエは琥珀の色をした酒を一口で喉へと流し込む。

「ゲームクリア以外はログアウトを許すつもりはないって事ね。そのあたり、対サイバーテロ課としてどうするつもり?」

「ログイン時に用意していたプログラムは全て弾かれました。なら、最終手段としてゲームクリアを目指して一般人の代わりに矢面に立つつもりです」

 事務的な口調の中に僅かな決意のような熱があった。

 言うのは簡単であるが、脱出ログアウト不可能なエノクオンラインに進入ログインし何時までかかるか分からないゲームクリアを目指すと云うのは如何に困難か。

 何より後から入ってきたジンを初めとする彼らはここでの死が現実の死であると理解している。

「大変ねえ」

 対して、問題が発覚する依然にログインし死と隣り合わせのプレイングをしているミエは穏やかながらもまるで他人事のように言う。

「仕事ですから」

 だが、そんな彼女の性格を熟知しているのかジンは気にした様子もない。

「表向きは解ったわ。それで、実際の所は?」

 ミエはテーブルに置かれた各種の酒を手元に引き寄せる。

「普通のプレイヤーの中に怖い人達が混ざってるわよね。貴方達が来る前から」

 話しながら空になったグラスの周囲に酒を集め、調理スキルで酒を合成し始める。

「………………」

「どうなの?」

 グラスの真上に表示されて合成の待ち時間を示すウィンドウ。それがタイムリミットだと言うようにミエは微笑みを寄越す。

「………/・一般人を救出する事が我々と彼らの第一目標であり、情報の入手は二の次です。事件に巻き込まれた人達の害になるような事はしません。だいたい、外部から完全に切り離されたこの世界を脱出できなければ意味がありませんから」

「そう。それならいいの」

 合成が完了し、ミエはグラスをジンの前に滑らせる。暗に飲めと言われていると判断したジンはグラスに手を伸ばすが、触れた瞬間に表示された説明ウィンドウの体感できるアルコール度数を見てそっと横に除けた。

「変な事聞いてごめんなさいね。だってほら、仁君まだ自衛軍に籍置いてるでしょ? 対サイバーテロ課も防衛省から派生したものだし、つい心配になって」

「……一応、一般には伏せてある情報なのであまり吹聴しないでください」

 ――わかってるわ、と言ってミエは壁に設置してある棚から新たな酒を取る為に立ち上がる。

「そういえば先生はお元気? 司君の話ならエノクオンラインに閉じ込まれる前は偶に耳にしたけど、先生の噂は聞かないのよね」

「父なら元気過ぎて困るぐらいですよ。エノクオンライン事件で中止にしましたが、アルプスを越える準備をしていました」

「相変わらずねえ。もう七十超えてるでしょうに」

「さすがに自重して欲しいですけどね。もう辞めたといっても政治家だったんですから」

 世間話へと移行しながら、ミエは棚の中から度数の強い酒を選んで手に取る。その際にガラス張りとなった壁の向こう、一階のバーの様子が視界に入った。

 同時に、クゥの姿を発見した。

 彼は一人のサキュバスの頭を鷲掴みにしながら店の奥へと進んでいる。

 ゆっくりとした足取りからしてミエを探しに来た訳ではないようだ。それに、ミエがジンとここで会う事は場をセッティングしたゴールド以外いない。

 なら、何故ここに彼がいるのか。そんなもの決まっていた。男が娼館に来てする事と言えば一つだ。

 店の女達と雑談する様子は、ここに来た事が一度や二度では無い事も教えている。

「あらあら、仕方ないわねえ。仁君、ちょっと急用ができちゃった。こっちから呼んでおいて悪いけど、私もう行くわ」

 急用と言いつつ、ジンへと振り返ったミエの手には酒瓶が一本握られている。

「え、ええ…………あっ、いや、ちょっと待ってください。実は頼みたい事があるんです」

「頼み?」

「人を捜しています」

「人を? このエノクオンラインで?」

 短く肯定し、ジンはアイテムボックスから折り畳まれた一枚の紙を取り出す。

「持ってきたフォトはログイン時に弾かれてしまったので、ここに来てから描いた似顔絵です」

「力になれるとは思えないけど。ゴールドさんにも頼んだんでしょう。それで見つからないなら多分私でも無理よ」

「いや、個人的な事なのでゴールドにはもちろん部下にも話していません」

「恋人?」

 からかうような口調で言いながら、ミエは差し出された紙を受け取る。

「違います。姪ですよ」

「姪? それって――」

 ジンの姪という言葉、そして紙を開いた時に飛び込んできたものにミエは僅かに息を飲んだ。

「生きているのは確かですがこの世界のどこにいるか分からない。立場上、公に探す事もできません」

 ミエの様子に気づいていないのか、ジンは言葉を続ける。

「名前は桐谷彩音。兄、桐谷司の娘です」


 ◆



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