3-8
「おい、ゴールド!」
ようやく見つけた馬鹿の後ろ姿に向かって俺は怒鳴る。
宝物庫にいるかと思ったら、奴はさっそくNPCの衛兵達をコキ使って保管されていた財宝の大半を正面の門に集めて馬車に積んでいた。何をするつもりなのか知らないが、そんな事よりこっちだ。
積み込みの指揮をしていたゴールドがこちらを振り返った。そして、俺が脇抱えている物体を見て驚いたように目を浅く見開く。
「こいつァ、なんだ!?」
脇に抱えた、手足を動かして暴れまくる猛獣を指さす。その指に猛獣が無言で噛みつこうとしたので慌てて手を引っ込める。
そいつは軽装装備に身を包んだ餓鬼だ。餓鬼だが、獣耳と尻尾が生えており、鋭い牙と爪がある。人間の骨格を残しながら体毛をも生やして、唸り声もやや大人し目だが獣のそれだ。
獣要素と俺に攻撃しかけてくる点を除けばどこにでもいる少女だ。だが凶暴。
「モモじゃないか、どうしたんだ? ――おおっ、獣化じゃないか。いつの間に覚えたんだい?」
獣化はキャラクター作成時に決めるステータス、先祖の設定で獣人の血を選んだ奴が一定の条件の満たすと修得できるスキルだ。名前の通り外見が獣っぽくなるだけでなく、身体系のステータスが一時的に上昇する。
「やっぱお前の知り合いか!」
そういえば、最初に連れてかれた宿屋で馬鹿がモモという名前を口にした。こいつの事か。
「いきなり襲いかかってきたぞこいつ」
「モモが? モモ、一体どうしてそんな事をしたんだ?」
「ヘンタイ」
ゴールドの問いかけに、餓鬼はただ一言そう言った。省略し過ぎの上に顔はゴールドを見上げているので馬鹿に向かって言っているように見える。
「駄目だぞ、モモ。変態にだって人権はある。いきなり攻撃したら可哀想だろ。ここは一つそっと放置してあげるのが――」
「変態という前提で進めんな。領主の部屋にいた所を見られたんだ」
よくよく考えれば、カオスなあの部屋であんな両腕を取り外された人形が裸で寝ていれば勘違いされてもおかしくはない。ないが、子供相手に優しく説明して容赦する程俺は出来た人間ではない。
ゴールドはあの部屋の様相を思い出したのだろう。芝居がかった様子で頷きを返すとモモに目線を合わせた。
「モモ、世の中は色々な趣味を持っている人で溢れている。同様に愛を向ける対象が普通と違っている」
だーかーらァ!
「愛を注いでいる事に変わりないのだから、そう軽蔑するものじゃない」
お前ワザとやってるだろう。
「チッ、もうどうでもいい」
モモとやらを放す。少女はいきなり解放されたというのに四肢で着地し、すぐに立ち上がった。
反撃か逃走でもされるかと思ったが、少女はその場に動かずにゴールドを見上げる。まさか、あの話を真に受けた訳じゃないだろうな?
「約束。獣化覚えた」
「ああ、そうだね。約束どおりダンジョンに行っていいよ。ただし……」
「ちゃんと報告する」
「よろしい。それじゃあ今日はもう休みなさい。ダンジョンへは明日準備してから行くといい」
モモは一つ頷くと、散々暴れて被害にあった俺の事などもう眼中にないらしく、駆けだして正門から去っていった。
「…………いいのか?」
色々と、だ。親子や兄妹には見えない二人の関係や、十少しの少女がダンジョンに行こうとする事、その他色々と一般的に思われる事全部含めての――いいのか、だ。
「いいんだ。あの子の意志だ。尊重したいし、無理に抑えてもためにならない。それに彼女は賢い。大丈夫さ」
まあ、所詮他人事なのでどうでもいい。
その時、正門の方から新たな気配がして振り向くと、モモと入れ違いになる形で街道の向こうから三人組の男達が門から入ってきた。
三人とも同じ甲冑を付けているが、前を歩く男は一際大柄で、青いマントを鎧の上から羽織っていた。
「あれは…………」
マントの留め具となっている飾り付け。あれは確か、この国の、ジブリエル公国の国旗にも描かれているシーライオンを象った紋章だ。
という事は公国の関係者、格好からして軍人だ。それもヴェチュスター商会のロボ店員がフードを深く被ってさりげなく侍女ロボの背中に隠れたことからそうとう上の地位にいるNPCなのかもしれない。
「短い付き合いだったな」
ゴールドの肩を叩く。
「いやいや、私の出世街道はまだ始まったばかりだよ」
ニヒルだと信じているのか間抜けな笑みを作り、ゴールドは大柄な男の元へと歩いていく。
「彼はカウェル将軍。開拓隊時代の時、人間側の防衛線となってるあの港見ただろ? あそこの防衛を任されてる偉い人だよ」
「……お前、どこにでも現れるよな」
書庫にいる筈のアールがいつの間にかこっちに降りてきていた。
「見物は見逃さないようにしてるからね」
言いながら、アールはいくつかのウィンドウを空中に開き、ゴールドとカウェル将軍の二人の様子をじっと観察する。一体何をするつもりなのか。
俺もその場に止まってPLとNPCの様子を見学する。
「まさか、本当にやってしまうとはな」
「これも将軍様のご助言があったこそです」
ゴールドはそう言って恭しく頭を下げた。なんだろうか。ピエロが格好だけつけているように見える。その空気をNPCが読みとったのかは分からないが、将軍は浅く溜息を吐いた。
「……まあいい。今回の件、不当な振る舞いを行った領主に代わり、私が一時この街を預かる事となった。だが、私は多忙だ。故に、正式に新たな領主が任命されるまでの間、ここにいるゴールド・マニーを私の代理として立てる」
ああ、これって………。
一瞬の間の後、今回の一揆に参加していた市民達が歓声を上げる。歓声と言っても、お偉いさんを前にしているからか、息を大きく吐くような感嘆の声だった。逆に兵士達からは困惑気味などよめきが生じる。
だが、周りのそんな騒がしさよりも気になる物が視界に入った。それは、将軍が宣言した瞬間にゴールドの前に突如現れたウィンドウだ。それが現れたと同時に、アールの前に大量に広げられていたウィンドウの画面から大量の文字が流れ始めた。アールは何かするでもなく、二人の様子とウィンドウを交互に眺めている。
「これでいいな?」
「はい。ありがとうございます。それでは」
将軍が一つ頷き、後ろで銅像のように不動で立っていた騎士が動き出した。二人の横を通り過ぎ、ゴールドの後方にある馬車へと近づく。そして、馬車を引く馬の手綱を握って前進させる。
「中身の確認の方は?」
「ここで偽物を掴ませる程馬鹿ではないだろう」
たんまりと金銀財宝を積んだ馬車はそのまま門の方へ向かっていく。将軍もまた踵を返して馬車と共に城館から出ようとするが、足を止めて首だけ動かしてゴールドを振り返る。
「私は貴様でいいと思っているが、他は納得しないだろう。もう一押し、手柄が必要だ」
「心得ております」
そう答えたゴールドに将軍は無言で見つめると、首を元の向きに戻し、そのまま馬車と一緒に門向こうの暗闇の中へと姿を消した。
…………なにこの茶番。
「とりあえず一区切りついた」
「お前、なにゲーするつもりだ?」
色々突っ込みどころは多いが、何よりも突っ込むべきところはそこだろう。
どんだけNPCとのコネクションを開拓してんだよ。こいつ本当に都市経営系のゲームをやるつもりなんじゃないだろうな。
別にこいつが何やろうと俺の知った事じゃないし、好きにやればいいんだが、どうしてもそんな疑問が沸いてくる。
「魔王を倒すゲームだろ? 別に剣を振り回すだけが戦じゃないさ。なに、損はさせないとも!」
「………………」
こいつの胡散臭さは一体何なのだろう。
「そういや、あの財宝は良かったのか? 税金だろ」
「あれは領主の私財だ。必要な分は確保してあるし……すぐに倍に増やすとも」
すっげぇ楽しそうな顔をしつつ、ゴールドは一枚のウィンドウを見下ろす。
「それ、何だよ?」
「この港街を管理する為のものだね」
「はあ?」
ゴールドの横に移動して、ウィンドウを見下ろす。文字と数字が並ぶ簡素過ぎて逆に見辛い、何かしらの管理画面のようだった。
そのウィンドウの内容を見て思い浮かんだのは、都市運営シミュレーションゲームのゲーム画面だった。おい、なんでRPGと銘打ったゲームにそんな物がある。
「今、作られたみたいだね」
俺の疑問に答えるようにして、さっきから自分のウィンドウを真剣な表情で見ていたアールが口を開いた。
「プレイヤーのショップ管理ウィンドウに手を加えたんだろうね。店から街の管理と規模が増えた感じだね」
エノクオンラインでは、PLがショップをやるには露天でやるか店舗を持つかだ。マイホームにもなる店を買った際は倉庫が手に入り、商品の管理がしやすいようにする為か店の管理ウィンドウが店主であるPLのメニューに追加されるらしい。
ゴールドの目の前にあるウィンドウはエノクオンラインのシステムが、NPCとまんまと入れ替わって領主となったPLの為に即席で作ったものという事になる。
システムの融通とアドリブ力の高さも凄いが、何より頭おかしいのが目の前にいる二人のPLだ。
「お前ら、こうなると分かってて計画してたのか?」
普通、できると思うだろうか。そして実際にやろうとするだろうか。
「エノクオンラインのメインシステムの有能さと柔軟な思考は今まで集めた情報からして明白だからね。今回の事が他にどういう影響を与えるかは分からないけど、直接アタックを仕掛けない限りシステムはプレイヤーに寛容だ」
「複数の商会があり、市場の流通や物価の変動がある。そして場合によってはNPCがPLに介入してくる。なら逆にPL側からNPCに対して通常のゲームよりも深く関わる事ができるかもしれない」
「NPCのAIもシステム同様に信じられないくらい高度だからね。交渉は可能だ。例えば、誰かさんが魔族から依頼を受けたりとか」
「………………」
うっぜぇ。ドヤ顔で話すこいつらうっぜぇ。
細かい理屈は分からないが、このゲームとは思えない電脳世界だからこそ出来るプレイングらしい。
「これぞ夢見た大出世! 下克上! 万歳戦争ッ!」
いきなりテンション上げるな。それに最後の方でなに言ってんだ。
「ところで、そろそろ俺への報酬寄越せ」
貰うもの貰ったらとっととこんな所からおさらばしよう。
「ああ、それなんだが…………」
「ああ?」
言い淀んだゴールドを見て俺は、アイテムボックスからゲロ不味の料理失敗作を取り出す。
「いやいや、そう慌てるものじゃない。ちゃんと報酬はある。だからそれは仕舞ってくれ」
「チッ……これ片づけとけ」
八つ当たりで、さっきからボケっとこっちを眺めていたロボ二人に失敗作を投げつける。
店員ロボはさりげなく侍女ロボを盾にしていた。それでぎゃあぎゃあ騒ぎ始めた二人を無視して、ゴールドが顎に手を添えてわざとらしく考え込み始めた。
「報酬は今すぐ払おう。それとは別に、また君の手をすぐにでも借りたい事が――あるかもしれない」
「意味が分からん。いいから払うもん払え」
「まるで借金の取り立て屋みたいですねぇ」
ウルサい黙れ守銭奴ロボ。もう一度生ゴミぶつけんぞ。
「いやなに、正式な領主になるためにはもう一手柄欲しいところなのだ」
聞けよ。
「当てはあるのだが、きっかけというか踏み出すには証拠が足りない。今回の事もあって準備も足りない」
「………………」
俺のガン付けが利いたのか、ゴールドは話しながら金の入った袋を投げてきた。ついで、新しい袋を出す。
「次の依頼だ。ちょっと工作してきてほしい。あっ、これは前金とその準備金」
まるでおつかいでも頼むような感じに笑顔で言われた。
「……自給自足できる程度には生産スキルは高いが、何を作ればいいんだ」
「そっちの工作じゃないでしょうに。馬鹿なんですか? 馬鹿なんですね」
守銭奴ロボに向けてゴミを投げつける。
「何処の何に対してどんな工作をしろってんだ。そもそも俺はスパイなんてできねえよ!」
喚く魔導人形の声もかき消すような声で怒鳴る。馬鹿が何が言いたいのか分かる。だが、内容以前に工作しろとかどういう了見だろうか。
「そうだな。その男は細々とした事は不得手だ」
俺が叫んだ直後、後ろからよく通る声が後ろから聞こえた。
「――――ッ!?」
聞き覚えのある声とその後ろから感じるただならぬ気配に、反射的に振り返る。
「本当に城を取るとは、面白い。ゴールドといったか。手柄が欲しいならくれてやろう」
そこには、レーヴェとユリアの兄妹とそれに従う配下の連中がいた。
◆
ある街に狩りを終えて帰還したギルドの姿があった。彼らは遅い昼食を取るために大勢でレストランへと移動している途中だ。後ろでは同様に狩りを切り上げた他のPL達の姿もある。
そしてギルドメンバーが歩く中、そこにアヤネの姿もあった。
彼女はクゥから置いていかれてからはミノルとミサトが作ったギルド、<ユンクティオ>に身を寄せていた。ギルドには所属していないが、彼らと行動を共にしてフィールドボスや素材集めをして熟練度や装備のグレードを上げていた。
「アーヤーネーちゃん!」
歩いていたアヤネの後ろから、金髪の女が後ろから諸手を上げて抱きつこうとする。だが、アヤネは素早い動きで横移動して避けた。
「…………おりゃ!」
「………………」
再び女が抱きつこうとし、アヤネがそれを避け、何度かそれを繰り返す。
「つ、つれねェーッ! アヤネちゃんマジつれねえ!」
「いや、いきなり抱きつこうとしないで下さい」
「つまりゆっくりならいいんだな。ほうら」
「あの、だから…………」
大きく翼のように腕を広げた女からアヤネは距離を取る。その二人の様子を見ていた棍使いの少女が溜息を付きながら金髪の女を注意する。
「ミーシャさん、アヤネさん嫌がってるんだから止めましょうよ」
「日本じゃ嫌よ嫌よも好きのうち、と言うらしいじゃないか。つうわけでオレの胸の中にカモーン! ついでにお前も仲間に入れてやるぜ!」
「うわっ、こっちにも矛先が向いた!?」
豊満な胸を敢えて揺らし、ミーシャが二人に飛びかかる。
二人は慌てて逃げようとするが今度は本気になったのか女の速度の方が上回り、補食獣の動きで二人同時に捕らえられてしまう。
「ハハハッ、極楽極楽~」
身長差があるせいか、二人の少女はまるで人形のようにされるがままだ。その様子は他のギルドメンバーは巻き添えを受けたくないが故に、同情の視線を向けつつも助けようとしない。むしろ、ミーシャというPLがギルドに入ってからはよくある光景の一つになっている。
《掲示板》
『羨ましい…………』
『あの巨乳を味わえる二人がか? それとも二人に抱きついてる事がか?』
『二人の方。ミーシャは金髪巨乳だけど色々と残念なのが……』
『天は二物を与えずと言うけれど、スタイルの良さと引き替えに人格がアレなのがなぁ』
『残念でもいい。あの胸があれば』
『誰か警察。それか病院』
『ねえよ。警邏隊でも回復魔法でも無理だ。あいつ超つえーもん』
騒がしい少女達の様子を、街にいたPL達が無責任に掲示板に書き込んでいく。
「そこー。あんまり掲示板にピンク色の話題提供してるとスライムを投入しますよー」
そこに、三角帽子を被ったヘキサが瓶を掲げて進み出る。彼女の持つ瓶の中には、不自然な揺れを常に起こしている半液体状の物体があった。
「異種間は趣味じゃねえ。いや、アヤネちゃん達となら有り、か……?」
蠢く緑色の物体とミーシャの発言に、捕らえられている二人の少女が僅かに青ざめた。
「チッ――このレズビアンまったく動じないですね」
「レズじゃねえ。私はどっちもイケる! ただ、下腹部のセンサーが反応するのは女の子が多いってだけだ!」
「………………」
周囲にいた、NPC含む全員が得体の知れない物を発見したような唖然とした表情をし、関わらない方がいい、或いは傍観者に徹しようと視線を逸らす。
「本当に動じないですねえ、この変態」
「ミーシャ、そろそろ――」
さすがに見かねたギルドのリーダー、ミノルがミーシャを注意しようと彼女らの前に出る。
その時、アヤネの目の前に一つの小さなウィンドウが表示された。メール着信を知らせるものだ。
「あっ、メールが」
ミーシャの腕を押さえているせいで両手の使えないアヤネの意志に反応し、小さなウィンドウが閉じて入れ替わりにメールウィンドウが開いて新着メールを見せる。
プライバシー保護の為の機能なのか、本人が表示機能を操作しなければ他人から見えないようになっている。
「…………っ」
他人から見れば真っ白なその画面を見て、一瞬アヤネは息を詰まらせる。すぐさまミーシャの腕の中から下へ潜るようにして抜け、ミノルの前に小走りで駆け寄る。
「すいません、ミノルさん! あの――」
「もしかして、見つかったのか?」
真剣な顔、そして何やら急いた様子にミノルは言われる前に察する。
「はい。それで、急に申し訳ないんですけども…………」
「いいさ。元からそういう約束だ。皆には私から話しておこう。それよりも急いだ方がいいんじゃないか?」
「――ありがとうございます!」
アヤネはミノルに深々と頭を下げ、そして体の向きを変えて他のギルドメンバー達に対しても頭を下げて踵を返すと駆けだした。
「え? なになに? どういうこと?」
結成初期のメンバーは事情を察したが、アヤネがギルドと行動を共にするようになったミーシャをはじめとした後からのメンバーは何がなんだか分からず、フィールドに出る門に向かって走り去っていく少女の背中を見送るしかなかった。
「………………」
だが、その中で一人だけ動く者がいた。棍を持ち、先ほどのアヤネ同様ミーシャに抱き上げられている少女だ。
「よっ――と」
少女はするりとミーシャの腕の中から抜け出る。
「ミノルさん、心配なんでアヤネさんについて行こうと思います。ほら、ファンの一部(変態)がつけて来たりとか」
「え? あ、ああ……まあ、いいんじゃないかな?」
「では、行ってきます!」
敬礼の真似をし、少女はアヤネの後を追った。
「一体何事?」
二人の少女に逃げられたミーシャは呆然とする。
「フラれましたね。ぷくくー」
「棒読みウゼェぞ腹黒魔女っ子。にしても、何のメールか知らないけど、イイ顔してたな。口で言えないところがヤバイ」
「………………」
ヘキサがミーシャから距離を取りつつ、ウィンドウを開く。
「あー、やっぱり。ミサトさーん」
「はいはい」
ヘキサの声に、ミサトが数人のギルドメンバーを呼び集める。
「姐さん、オレも一緒に行くわ。何だかよく分からんが、アヤネちゃんの手助けはしてェし」
「それはいいけど…………ミーシャまで姐さん言うの止めてくれる? 同い年でしょうに」
《掲示板》
『なんか歌姫とミニ騎士ちゃんが突然フィールドに出てったんだが? ヴェチュスター商会の看板ロボも何か非常食セット投げ渡してたし。何かのクエか?』
『とりあえず隠密で追跡するでござるよ、ニンニン。転送装置に向かっているようでござる』
『おまわりさんこっちです』
『フフフ、NPCでは拙者の隠密は――って、二人とも足速えーーーっ!?』
『歌姫も結構スタミナあるから』
『隠密だと移動速度も落ちるしな』
『つうかアマゾネスが出動したぞ。ミーシャもいるし』
『ストーカーオワタ』
『死んだな……。イイ奴だった。ネタを提供してくれて』
『お前等ひでぇ』
『だ、誰かt』
『あっ、捕まった』
◆