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Shoooooooot!

作者: 楠 竜児



 ある日の休日のことである。俺は鼻炎ということもあって、年がら年中鼻水に悩まされているので、いつもいつも鼻をかんでいたりする。

 ベットの上に寝転がりながら漫画に目を通しつつ、無意識に片手で近くにあるティッシュ箱からティッシュを2枚取り出す。そして、一時的に漫画を読むのを止め、ちーんと思い切り鼻をかんだ。


「……」

 鼻をかみ終えれば、後はこの使用済みティッシュをゴミ箱にシュートするだけ。そこで俺は余興がてらこんなことを提案してみる。


「このティッシュ、あそこのゴミ箱に一撃で入れば俺は大吉になれる」

 ゴミ箱は、見れば結構遠い。一撃で入るのは至難の技と言えよう。俺は少し集中して、ゴミ箱の方を見る。数秒後、俺は動く。


「シュウウゥゥ―――――――ット!」

 放つ。ティッシュがプロ野球選手もびっくりなスピード(大袈裟)でゴミ箱の方へと飛んでいく。

 


 ――で、ゴミ箱の淵に当たって、ティッシュはインすることなく部屋のカーペットの上に落ちた。


「……チッ」

 なぜか舌打ちとかしちゃう。なんだろう、何か悔しいんだよね、これ。

 自棄になったのか俺はもう一度ティッシュを取り出し、鼻をかむ。そして、


「これを入れたらもう一度大吉になれるチャンスが貰える」

 シュート。


 ――ミス。


「……ファック!」

 なんだこのゴミ箱は。喧嘩売ってんのか。顔文字で表現するなら「凸(゜Д゜#)ヤンノカゴルァ!!」状態である。

 また鼻をちーんとかむ。段々と鼻水がでなくなってきた。それっていいことなんだけどね。


「これが入れば結局大吉」

 ――まぁミスるわけですが。


 ずーん、と気持ちが若干ながら沈む。……が、それはほんの一瞬。

 その悔しさは、やがて怒りへと変換された。


「ざっけんなよぉおおおおおおおお!」

 一人ベットの上で怒り狂う俺。

 ティッシュだ! ティッシュをもっと持ってこい!


 さすがに鼻をかんでももう鼻水は出ないので、ティッシュを数枚とり、部屋中の壁を拭き始める。おお、こんなに汚かったのか。見た目とは違うものだな。よし。


「これが入れば今までの全部チャラで」

 集中。入る。今の俺なら行ける。


 ――はいはいミスミス。


「はぁああああああああ!?」

 何なの! 何なのこの仕打ち! ゴミ箱の周りに落ちている大量のティッシュが俺に才能がないことを語りかけてくるようだった。

 才能が無い。ふふ、そんなの分かってるのだよワトソン君……! ワトソンって誰だ。


「何回も失敗して学習してないわけじゃ……ないんだぜ?」

 俺なりに考えたのだ。このままではいつまでたっても自分は報われないと。何言ってんだ俺。


「――このティッシュが 入 ら な け れ ば 俺は大吉になれる!」

 今まで学んできたことを応用した結果である。


「ざまぁみろ、ティッシュがぁぁああああ!」

 そんな叫び声と一緒に、俺の手からティッシュが飛ぶ。


 ――すこん。そんな音を立てて俺が今投げたティッシュがゴミ箱の中へと吸い込まれた。



「……」

 数秒間、沈黙が辺りを包み込む。

 そして、その沈黙を、俺が叫ぶことでぶち殺す。



「なんでだぁあああああああ――――――!」



 ……これは、ある日の休日のことである。

やらかした。

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