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蟲の王  作者: 海王神
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2話 試練


「こちらでございます。」


地下の洞窟を歩いて着いたのは大きな空間だった。そしてその空間の真ん中にはカブトムシの化け物がいた。

カブトムシの化け物はカブトムシを擬人化したような体型で、二本足に四本の腕を持ち、頭にはカブトムシの角が生えている。更に体は甲殻で被われており、四本の腕にはそれぞれ鈍器、盾、刀、槍が握られている。


「あちらにいる《カブト》と闘って頂きます。」


「自然界って鬼畜なのな。」


勝てないことも無いだろうけど、産まれてきたばかりの子供に闘わせる相手じゃないよ、アレは。

俺の兄弟達はアレを倒してきたのか凄いな、さすがは王子。


「行ってくるわ。」


「御武運を。」


ゆっくりとカブトに近付いていく。近付くとカブトの大きさを身を持って体験できる。俺の身長が子供くらいなのに対してカブトの身長はバスケットリングくらいはある。


「王子よ、その身が王の器となり得るのか我に示したまえ。」


カブトの低い声。それだけで普通の子供なら泣いてしまいそうだ。


「さっさと始めようぜ。」


俺は今後の為にもいろいろと情報を集めなきゃなんだから、こんなところで愚図っている暇はないんだ。



「では、まずは王子から打ち込まれよ。

世界の厳しさ、身を持って教えてしんぜよう。」


「じゃぁ、遠慮なく。」


本気も本気で直立不動のカブトを殴りつける。その際、爺さんに叩き込まれた技術も惜しまず使う。


「くはっ!?」


俺の拳がカブトの腹部に当たる。カブトの巨体が吹っ飛び、洞窟の壁に衝突する。


「すげー力。」


人間の時では考えられない程の力だ。今の俺なら爺さんにも勝てるかもしれないな。

………やっぱり無理かな。

どんなに強くなってもあの糞爺さんには勝てない気がする。


今のでカブトは気を失ってしまった。



「随分と呆気なかったな。」


「お見事でございます。

王子の中でも一番早い試練クリアでございます。

では、ベルゼブル様のお部屋の方に御案内させて頂きます。」


再び洞窟の道を進む俺と蟻さん。


「こちらがベルゼブル様のお部屋にございます。

中にあなた様専用の侍女がおりますので、今後のことなどはそちらにお聞き下さい。では、私はこれで。」


蟻さんはそれだけ言い残して去っていってしまった。

少し寂しい。



「お邪魔します。」


自分の部屋なのにこんなこと言うのはおかしいか?

ましてや俺、王子らしいし。

そんなどうでも良いことを考えながら中に入ると、そこには人間の女性がいた。しかも美人で巨乳のメイドさん。


「ベルゼブル様、今日から私があなた様のお世話をさせていただく、《カリン》と申します。」


「どうも。

一つ気になるんだけど、いいかな?」


「なんなりと申しつけ下さい。」


「カリンは人間か?」


「いいえ違います。証拠にほら。」


そう言って指先から糸を出すカリン。

なるほど、確かに人間ではなさそうだ。しかし、見た目は人間と全く変わらない。


「【蟲】に限らず魔物というのは人に近い形を持つ程、力が強い傾向にあります。

ですので我らが王子ベルゼブル様も人に近しい造形をお持ちなのでございます。」


つまり、この侍女さんはかなり強いという訳か。

多分、さっき一発で伸したカブトよりも余裕で強いのだろう。

強者の覇気とも言えるものがカリンからは伝わる。


「後、もう一つ。」


「なんでございましょう?」


「その敬語を止めてくれ。

話難くてしょうがない。」


俺はそんな敬られるのに慣れていないので、なんか気持ち悪い。


「ですが、ベルゼブル様はいずれか王になられるやもしれない高貴な御方。私が敬うのは当然のことかと存じます。」


「知るか。

とりあえず、敬語禁止な。」


「………分かりました。」


まぁ、丁寧語くらいなら許してやるか。流石に友達同士みたいには喋れないだろうし。


「で、俺はこれからどうすればいい?」


「まずは私達のルールを知って頂き……もらいます。」


お〜、しっかり俺の言葉を守ってくれたぞ。偉い偉い。


「ベルゼブル様は……」


「それも長い。俺のことはベルでいいよ。」


「ベル様。」


「まぁ、妥協かな。」


「ベル様は知能が既に発達していますので、ルールを知ってもらいますのは簡単だと思います。」


ということで、カリンの言う蟲(虫ではないらしい)のルールを纏めると、


・共食い厳禁。

・身分の上のものには絶対服従。

・身分は具体的に、女王を頂点とし以下、王子、将軍、隊長、兵士、非戦闘員の順となる。


と、こんな感じだ。他にも細かいルールはあるようだが、王子である俺が気にするようなことは特にないらしい。


「次に進化について知ってもらいます。」


カリンの言う進化とは、簡単に言うと虫の変態と同じようなものだった。つまり、幼虫から蛹、そして成虫になるということ。

ちなみに、俺が倒したカブトは成虫らしい。


「カブト殿は一応、将軍ですよ。」


「あれでか?」


だとすると、蟲というのも大したことないな。


「王子とそれ以外では能力に天と地ほどの差がありますから。といっても、他の王子は辛勝だったそうですよ。」


「そういうものか。」



その後も、今後の予定などを聞いて過ぎていった。


明日は俺の近衛兵とやらの顔合わせ後、外に狩りに出掛けるそうだ。そして自分の力を上げていき、7日後には王になるための最後の試練があるらしい。














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