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・コモンウェルス星団鎮圧部隊、星の海よりきたる 2/2

 約30時間後、船団は磁気嵐の勢力圏に入る前に惑星ファンタジア軌道上に到着した。降下準備の後に、コルベット船は直ちに最高出力のX線レーザーを発射。成功。


 惑星シールドに穴を開けた彼らは、鮨詰め状態の降下ポットでシールドを抜けると、数分後に地表に着陸した。


「敵襲っ、敵襲っ、魔族が攻めてきたぞぉぉーっっ!!」


 否、着陸ではなく、着弾したとも言える。

 ヨアヒムのいる大陸西部、魔界と呼ばれる土地に降下するはずが、彼らは人と魔の境界線である大長城を降下ポットの雨で破壊していた。


「バカ者ぉぉーっっ、着陸早々に中立勢力にケンカを売るバカ者がどこにいるかーっ!!」


「やむを得ない、この要塞を制圧する!」


 サイボーグ部隊はポットを出るとプラスチール合金製の剣を抜き、要塞の兵士たちを迎え撃った。

 銃、及びレーザーブレードの使用の許可は下りなかった。それが正常な文明の進化を歪めてしまうからだ。


「魔法部隊っ、マジックアロー撃てーいっ!!」


「ぐはぁっっ?! き、貴様らっ、自分たちだけ飛び道具を使うとは卑怯な……っ!!」


 討伐隊は着陸早々にファンタジアの民の戦闘力を再評価することになった。


「ソニックソード部隊、放てぇぇいっっ!!」


 魔法という名の未知の超能力攻撃。さらには剣から真空波を放つ常識の通用しない人間たちの精鋭に、サイボーグ戦士たちはまさかの傷を負わされた。


「そして我こそは黄の英雄!! 我が剛撃を喰らえぃぃっっ!!」


 さらには長城の警備を任されていた【英雄】と呼ばれる超人。その者のハンマーがサイボーグ部隊の一員を天高く吹き飛ばした。

 いかに頑丈な強化外骨格を持っていても、直撃を受けては関節や内部のパーツがもたなかった。


「あーりゃりゃ、正直舐めてたっすわー。うわ、こいつらやっべぇ……っっ!?」


「ふんっ、何が英雄だ、ヒーロー気取りのアホがっ! おい、そこの大男、邪魔だ! さっさとコモンウェルスの科学の力にひれ伏せぇぇっっ!!」


 その時、相談役ゴードンが使ったのはなんの変哲もない、X線レーザーピストルだった。パキュンと撃つと、ほどなくして黄の英雄が前のめりに倒れた。


「ヒャハハハハッッ、ほれ見ろ、原始人ごときがいきがるからだっ!!」


 言うまでもなくその行為は銀河条約違反である。だがその一撃が戦いの風色を変えた。


「え、英雄様が、即、死……?」


「な、なんだあの魔法はっ!? まさかっ、ア、アイツ……アイツがあの魔王バーニィなのかっ!?」


 討伐部隊はその兵士の一声をまるで重く受け止めなかった。ヨアヒム・バーニィ・サンダース。人のミドルネームなんて詳しく覚えていられなかった。


「ヒャハハハハッ、死ね死ね死ねっ、惨めに逃げまどえ、ノミまみれの原始人どもがぁぁーっ!!」


「ゴードン殿っ、過度のレーザー兵器の使用はご自重下さい! 密告されれば銀河条約違反で我々が裁かれますぞ!」


「このバカめっ!! 条約違反だぁ!? バカめバカめバカめっ、白兵戦闘員をのぞく全員がっ、この星に降りた時点で違反しているのだよっ!!」


 鎮圧部隊はヒューマノイド型の種族ヒューマンの長城を瞬く間に制圧した。ゴードンが英雄を一撃で始末をしたのが功を奏し、うろたえた彼らは逃げ惑い撤退していった。


「神様気取りのヨアヒムは西か。よし、貴様ら、ヨアヒムに牽制を入れるぞ」


「今度は何をするつもりだ、ゴードン殿……」


「想定よりこの星の原始人どもは強い。シールドを再度破壊し、ゼノモンスター部隊を降下させろ」


 ゼノモンスター。それは高度な遺伝子技術がもたらした怪物の軍勢だ。圧倒的に凶暴、圧倒的に強力な反面、制御ができないという難点を持つ。


「あのそれ、戦闘員以外に被害が出るやつっすよねぇ……? いいんすか、勝手に使って……?」


「バカめ、我らに帰りの船がないことを忘れたか! 加えてこの星では50倍の速さで時が流れるのだぞ、本国からの救援など端からないと思え!」


「輸送艦の電子機器が壊れれば、ゼノモンスターも培養槽の中で死ぬ。わかった、降下させよう……」


 かくして惑星シールドは再びこじ開けられ、制御不能の生物兵器が惑星ファンタジアに投下された。


 それらは磁気嵐が星に到達し、軌道上の艦船との連絡が途絶える2時間前のことだった。彼らの帰還を阻む惑星シールドは、彼らを磁気嵐から頼もしく守り抜いてくれたのだった。



 ・



・魔王バーニィ


 ドローンカメラから俺は一部始終を目撃していた。敵が正しい座標に降下できないことはわかり切ってはいたが、まさかあの大長城に落ちるとはとんでもないことなった。


 俺の天敵である英雄はレーザービームで撃ち殺せる。そりゃそうだろうよ、としか感想の出てこないない顛末だった。


「あいつら、マジかよ……。しかも俺のコルベットを奪うだと……? バカ言っちゃいけねぇっ、あの船には本国には説明できねぇデータが詰まってんだよっ!!」


 主にかわいい女の子の盗撮動画だが、今日日そういうのは風当たりが非常に悪く、俺にも元英雄としての立場がある。世に知られるわけにはいかねぇ……。もちろん、一度手に入れたお宝映像を消すわけにもいかねぇ……。


 ああちなみに、やつらの降下座標が狂ったのは50倍の速さで回るこの惑星の性質からだ。特徴を把握していなければ、狙った座標に降ろすなんて到底不可能だ。


「おーい、言われた通りみんなを玉座の間に集めたけどー、今度は何するつもりー?」


「はぁ、はぁ……お兄ちゃんがすごく急かすから、大変でした……」


 ステラとパイアには準備を任せた。その二人が俺を呼びにきてくれた。彼女たちが動いている間、俺はずっとやつらをスパイドローンで監視していた。


「ああ、悪ぃな、とんでもねぇ非常事態なんでよ……。うしっ、あっちで説明するっ、ついてきてくれっ!」


「えっ、そ、それっ、その浮いてるのってっ何っ何っ何ぃーっ!?」


「て、鉄が、鉄の塊が浮いています……っ!」


 この後に及んではスパイドローンの存在を明かす他になかった。何か大事なことを忘れているような気もするが、もはやコイツを紹介する他にない。


「コイツはスパイドローン。俺の空飛ぶ目玉だ」


 敵はコモンウェルス星団のサイボーグ部隊と、X線レーザーピストルを持った狂った研究者だ。そいつらを迎え撃つ以上は秘密を隠してなどいられなかった。


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