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アリシャシリーズ(転生したら周囲がヤンデレ・死亡フラグまみれ)

乙女ゲームの世界に転生したら我が家に人間不信の攻略対象がやってきた

作者: リィズ・ブランディシュカ



 乙女ゲームの世界に転生した少女は、アリシャ・ウナトゥーラとして第二の人生を送る事になった。


「私、別の世界に生まれ変わってたのね」


 前世の記憶を思い出したのは、乙女ゲームの原作が始まるだいぶ前、五歳ごろの事だ。


 最初は前世との違いに戸惑っていたが、貴族令嬢としての身分があったので、生活に困らない事が幸いだった。


「路頭に迷わないという事はすごくいい事だわ。主人公じゃないのは残念だけど、かえり恵まれてるわね」


 立場はモブ。


 しかし恵まれている境遇だった。


 だから、アリシャはその身分のおかげで、穏やかな日常を送る事ができた。


「貴族じゃないならまだしも、もしも人間でなかったら」


 人間以外の種族。


 例えば、この世界では立場が低い獣人族であったとしたら、生まれる国が違うと悲惨な目にあっていたかもしれなかった。


 そんなアリシャは五歳であっても、自分がいる国の事を知っていた。

 その国は獣人と共存する国だった。

 人間と獣人が仲良く暮らす平和な国なのだが、他の多くの国ではそうでなかった。


 事実、獣人を排斥しようとする隣国などは、あれこれ難癖をつけて獣人を投獄したり殺してしまう事があるようだった。


「見た目が違うから、排斥するなんておかしな話だわ。前世の世界じゃダメって皆行ってた事が、この国以外では当たり前なのね」


 獣人と共存している国にいると忘れそうになるが、この世界の多数の国ではそれが常識だった。


 自分とは違うものに厳しい世界は、アリシャの心を痛めた。


 アリシャは全てを知っているわけではないが、前世の世界ではそれはとても良くない行いだとされていたから、激しく違和感を持っていたのだ。


 そんな中、隣国からやってきた獣人の男の子と出会う。


 その男の子はその日から、アリシャの家に住むらしかった。


 父と母がその男の子を連れて「家族がいなくなって、住むところがなくなってしまったみたいなんだ」「だから今日からうちの家族が一人増えるのよ」と言ったのだ。


 アリシャは驚いた。


 家族が増える事は別にいいが、相手が相手だったからだ


 獣人だからら、ではない。


 その男の子の名前はアリオ。


 乙女ゲームの攻略対象だったからだ。


 アリオは、隣国でひどい目にあって来たらしく、心を閉ざしていた。


「私はアリシャ。あなたの名前は?」


 それは、初対面の時に自己紹介しても、まったく何も言わないほどだった。


 暗く淀んだ瞳には、希望というものがまるで映っていなくて、痩せ細った体が痛々しかった。


 そして体の各所には、治りかけの傷があって、日常的に暴行を受けていた事が推測できた。


「アリオ、あなたの好きなものはなに?」


「一緒に遊ばない?」


「本を読んでみたら面白いわよ」


 アリオの事を可哀そうに思ったアリシャは、その日から色々と話しかける事にした。


 だが、「下心がある」とアリオに言われてしまう。


 アリオはアリシャを拒絶するように冷たい瞳で眺めていた。


 感情の宿った瞳だったが、それはアリシャが望んだ瞳ではなかった。


「えっ、そんな事はないわよ」

「そんな事あるよ、ぼく感じるもん」


 淡々とした口調で無表情にそう言われたアリシャはうろたえるしかなかった。


 責めているわけでも、怒っているわけでもない顔を見て、アリシャはどう言っていいのか分からなくなった。


 アリシャがアリオを色々とかまうその行為は親切心からだったが、乙女ゲームの攻略対象と近づけるという下心も確かにあった。


 だから、その思いに気が付いた時、否定できなくなったのだ。


 その事実が忘れられなかったアリシャは、どうすればいいのか精一杯考えて、とある方法にたどり着いた。


 それは、乙女ゲームの記憶を封じる事にした。


 そうすれば、アリオの事をきちんと見てあげられると思ったからだ。


「お母様、お父様、ごめんなさい。少しの間留守にします」


 置手紙を残して、アリシャは小さな冒険へ出かける。


 目的地は魔女の家だった。


 アリシャの頭の中にある乙女ゲームにも出てくる魔女だ。


 前世の知識では、その魔女は良い魔女として描かれていた。


 間違っても子供をとって食べたりはしないので、安心して向かう事ができる。


 しかし、他の人間にとっては違う。


 魔女はあやしいもの、という認識があった。


 この世界に生きる魔女の数は、人間と比べると、とても少なく、人里離れた所で暮らしている事が多い。

 それに加えて、何をやっているのか分からないので、不気味なイメージがついていたのだ。


 よく知らないから、魔女という存在を人は恐れていたのだ。


 だから、最初に置手紙を見たアリオはアリシャの後を追いかけていくことになったのだった。






「魔女さん、こんにちは」

「あんれ、まあまあ。こんな無邪気なお客さんが訪ねてくるなんて久しぶりだねぇ、何か用かい?」


 魔女の家に向かったアリシャは、お茶とお菓子をもらってもてなされる。


 アリシャはもぐもぐ口を動かしながらも、その家を訪ねた事情を話した。


 最初は難しい顔をしていた魔女だったが、アリシャの固い決意をみて、頼みを引き受ける事にした。


「仕方がないねぇ。でもなくした記憶はいつでも取り戻せるようにしてあげるからね」


 魔女は前世の記憶をなくす薬を調合して、アリシャへ差し出した。


 それを受け取ったアリシャは一思いにのみ込もうとしたが。


 それを、魔女の家の窓から見ていた存在がいた。


 アリオだ。


 アリシャが薬をのむと言った時に、家の中に飛び込んできて、やめるように言ってきた。


「そんな事しちゃだめだ!」


 アリオはアリシャにあやまる。


「ごめんねアリシャちゃん」


 乙女ゲームなるものは分からないが、大事な記憶をなくしてはだめだとアリオは続ける。


 つらい思いもしたけれど、アリオは前世のものであっても、両親や友達の過ごした記憶は大事だと言った。


「だから、記憶をなくすなんてそんな事しないで」

「でも、それでアリオと仲良くできるなら、私は後悔しないわ」

「僕が後悔しちゃうよ! それに完全に下心のない人間なんて、この世にいるわけがない。ただ僕は人を仲良くなるのが怖かっただけで、それでイジワルを言っちゃっただけなんだ」


 アリオが謝ったので、アリシャはそれを行け入れ事にした。


 二人はそれを機にして少しだけ仲良くなった。


 その様子を見守っていた魔女はにっこりと笑って、二人を家まで送っていった。


 その日以来、アリオはよく笑うようになり、二人は仲のよい兄弟になる事ができた。


 けれど、アリシャとアリオが仲良くなりすぎて他の攻略対象との別の問題が生じるのは、まだ知らない別の話だった。



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