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ダンジョン3層

ギルドで受けた「目覚めのダンジョンの異変」調査依頼。

俺とアリシアは調査任務として、異変が確認された第3層へと再び向かうこととなった。


昨日と同じく、アリシアはしっかりと準備を整えて待っていた。


「今日は……何が出るか、ちょっと怖いですね」


「何が来ても、落ち着いて対処するだけさ」


そう口では言ってみるが、俺も内心は落ち着いていなかった。



ダンジョンの第3層に入った瞬間、空気が違っていた。

圧力のようなものを感じる。以前来たときとは、明らかに異なる。


「……これが“異変”ってやつか」


「なんだか……空気が重いです」


通路は狭まり、壁の紋様が微かに発光している。

奥へ進むと、不意に広間が現れた。ボス部屋だ。


そして、そこに立っていたのは――


銀黒の甲冑に身を包み、異様に長い大剣を持った人型モンスターだった。


《ダンジョン・ソードナイト》


頭から足まで、全てが“鋼”で構成されているような重厚な身体。

目は赤く光り、無言のままこちらを睨んでいる。


「来るぞ!」


俺はスウィフトブレードを構えて前に出た。



「ぐっ……!重いっ!」


1撃目。受けた瞬間、腕が痺れた。

防御を重視した鉄の塊のようなボスが、力任せではなく、確かな技術で斬り込んでくる。


(この動き……こっちがスキル任せだって、見透かされてる!?)


スキル「剣術1」では対応しきれない。

剣筋の重さ、精度、そして容赦のなさ――これが“異変”の正体なのか。


「ユウトさん、後ろに!」


「くっ!」


アリシアの声に反応して後退するが――


「ッ……!」


次の瞬間、俺の剣――スウィフトブレードが、ボスの大剣によってへし折られた。


「マジかよ……!」


弾かれた金属音が、広間に響く。


思考を巡らせ俺は、あの鉱石採取で得た黒い結晶と昨日倒した蛇の皮を荷物の中から取り出す。

そして、折れたスウィフトブレードの残骸も――


(素材は揃ってる。数も……ちょうど5つ!)


俺はボスとの距離を一気にとり、広間の端へと滑り込んだ。


「……オールシンセシス!」


【合成完了:ブラックスネイクブレード】


光と共に現れたのは、黒銀に輝く曲線を持つ片手剣。

折れた剣を再生し、鉱石の強度と蛇皮の柔軟性を取り入れた――新たな武器。


俺はすぐさま剣を握り、ボスに再び向き直る。


「アリシア、回復は頼む!」


「任せてください!」



ここからが、本当の戦いだった。


相変わらずボスの動きは鋭く重いが、新しい剣はそれを受け止められる強度と弾性を持っていた。

しかも、軽い。


(速さは……スウィフトブレード以上!)


回避からの踏み込みがより自然に。

斬撃はしなやかでいて、重さも感じる。


一太刀、また一太刀と、ボスの装甲に亀裂が走り始める。


「せぇいっ!!」


カウンター気味に叩き込んだ斬撃が、ボスの右腕を飛ばした。


それでも止まらない。

剣を逆手に持ち替え、残った左肩へ一閃。


「これで……終わりだッ!!」


胸元を突き破るように突き刺すと、ようやくボスは崩れ落ちた。



「……や、やりました……!」


「ふぅ……強かったな、マジで」


折れた剣と、素材から生まれた新たな一振り。

この世界の誰も知らない武器で、俺は勝った。


ボスの亡骸のそばに、小さな光の結晶が落ちていた。


《スキルクリスタル:剣術1》


(スキルクリスタル……でも、これ……)


俺はすでに【剣術1】を持っている。

スキルクリスタルは重複習得ができない。つまり、これもまた“余り”となる。


(……5個集まったら、試してみるか?)


そんな思考を胸の奥に押し込み、俺はクリスタルをそっとポーチにしまった。



ギルドに戻ると、報告と同時に賞金と素材の査定が行われた。


「お疲れ様でした。お二人とも無事でよかったです」


受付嬢がにこやかに頭を下げる。

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